校正も校閲も文章などの誤りを発見して正す作業ですが、校正は著者の原稿に対して、入力・編集された紙面が正確に対応しているかどうかを見比べて、主として著者の原稿に沿って正しく作業されているかどうかを見るものです。ところが校閲はむしろ著者が書いた原稿・文章そのものの内容が正しいかを確認して、誤りがあれば指摘するとか正す作業ですので、著者の表現よりも内容の正確さを追求することにポイントがあります。
校閲を大きな辞書で調べると次のようになっています。
大辞泉:文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりすること。
大辞林:印刷物や原稿を読み、内容の誤りを正し、不足な点を補ったりすること。
広辞苑:しらべ見ること。他の人の文章・原稿などに目をとおして正誤・適否を確かめること。
実際には校正作業の中に校閲の要素も含まれており、素読(すよみ)校正では用字用語の使い方が社会の常識に対して文章が適切であるかどうかもチェックしています。文科省の常用漢字や送り仮名つかい、また新聞社の用字用語などが参考にされることが多いですが、著者が意図的にそれらに沿わない表現を使いたがることもあるので、一般的には校正者は指摘をするに留まります。
以前は紙の原稿を元に入力作業をしていたので、入力ミスが避けられず、単純な校正作業が多く必要でしたが、今日では著者が自分でテキストデータなどを作成する場合が多いので、単純校正よりは校閲的な作業に比重が移っています。例えば「文字の謝りを正す」など著者が仮名漢字変換でミスをしていたものを発見して「文字の誤りを正す」に直すとか、「商号、称号/照合、承合」など同音異字の使い分けが間違っていないかなどを見る必要があります。これらは現在では校正の範囲に入るでしょう。
本格的な校閲はさらに原稿の書かれた内容が事実と合っているかのチェックになります。いいかえると、裏どりとか、データ確認、出典探し、などで、非常に専門能力が問われることになります。特に、歴史的な事項、作品名、人名、化学・科学などの数値・単位などを確認するために、辞典類を備えて作業します。
今日ではインターネットで検索も行いますが、人名の「斉藤」の「斉」と「斎」などインターネットではちゃんと区別していないこともよくあるので、別に証拠となる情報源(紙媒体の画像など)を探します。とりわけネットのブログなど個人サイトの場合は情報源が信頼できるのかどうかに気を配らなければなりません。一方、統計などの数値のデータは、最新のデータのほうが良いので、紙媒体よりもインターネット上に更新されたデータがある場合が多く、ネットの活用が必要になります。
このほか、広告などの表現の規制や、用語など業界ルールなどと照らし合わせて原稿の妥当性をチェックする作業があります。これらについては一般常識で判断することは難しく、それぞれの分野でガイドラインが用意されている場合があり、そういった資料に基づいて作業します。書かれている内容が事実と異なる点は、資料をゲラに添付します。
原稿作成に多くの著者が関っていて、しかも校了までの日程が無い場合に、原稿の入稿はネットでも行えますが、校正出しと赤入れのやりとりに十分な時間がとれないために、編集が不完全になったり、ミスが発生しやすくなります。そこで制作お役立ち便利帳「オンライン入稿とはどんな方法ですか?」にある、「投稿型」のように、ブラウザで扱えるWebの簡易編集システムを使って、そこに著者や編集者がログインして入稿から編集・校閲・校正といった全編集作業を複数の人が協同作業する制作ワークフローがとられます。これらの印刷状態の確認にはPDFファイルを作ることで制作時間も短縮できます。
具体的な利用例は、「学術大会ソリューション」や、「WordPressを使った冊子制作」をお読みください。こういったシステム化を簡単に行うには、WebのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が使われます。CMSは高価で構築が難しいシステムもありますが、オープンソースの無料で自分のサーバにインストールできたり、今はブログのようにクラウド型でインストールも不要な安価なCMSサービスも増えて、かならずしもWebの情報発信だけでなくても使われるようになりました。
CMSができるまではWebサイトの構築にはHTMLやCSSなどの専門知識が求められたり、あるいはWebオーサリングツールを導入して、システムとデザインとコンテンツの3点から作業する必要がありましたが、CMSではシステムは既製品として用意され、デザインは簡単にできるので、利用者(Webの運営者)は文章や写真などコンテンツを作ることに専念できるようになりました。つまりブログのようにコンテンツを入れるだけなので、最初の設定さえされれば専門家が不要で運営ができます。そこでCMSで簡素なWebサイトを作って、そこで編集校正を協同で行い、そのデータを取りだして印刷冊子などにも利用する「原稿管理」ができるのです。
CMSがブログと異なるのは、SNSのように時系列に原稿が並ぶだけではなく、記事分類を作ったり記事ごとに作業者を設定して、またその利用権限をコントロールできることで混乱なく運用でき、責任者が記事をロックして編集終了をさせられるなど管理機能が高いことです。またサーバが存在する限り利用済みの原稿も残り、過去に遡って検索もできるために、定期刊行物などで継続的に利用すると便利になります。当然CMSにあるデジタルデータを他のデジタルメディアにも使えますので、文字通りコンテンツ・マネジメントが行えます。

DTPで制作された紙面は、校正刷りによってチェックして完成させていましたが、DTPの制作ワークフローがデジタル化・ネット化するとともに、校正紙の行き来や、前工程にたびたび戻っての修正作業ではデジタル化のメリットが帳消しになるため、制作後に校正・刷版(CTP)・印刷をなるべく一直線にできるように、制作時点で事前にデータのチェックをするようにしたものがプリフライト・チェックです。
制作に関連したDTPソフトや、PDFを作成するAcrobatなどにもプリフライト・チェックの機能はあり、アプリケーションレベルでのフォントの使用状況やカラー設定などを簡易に行えます。フォントが使用に耐えるか、あるいはアウトライン化されているか、画像フォーマットが適切か、画像のリンク切れがないか、解像度は適切か、カラーの分解、罫線(ヘアライン)の太さが適切か、インキ濃度に無理はないか、RIPでエラーが出ないかなど、画面上の作業だけではわからない点をチェックし、DTP側で出力に問題がないファイルが作れるようになります。
Acrobatのプリフライト例

このようにプリフライトチェックは校正とは違って,制作側が最初に行うチェックで、「後戻り」しないワークフローを目指しているので、アプリケーションのチェックとは別にPDFワークフローシステムに組み込む専用のプレフライトチェックのシステムが現場では使われます。有名なものにEnfocus PitSpotがあり、チェックをするだけではなく、そこで不具合の修正ができるようになっています。
どのようなチェックが必要であるのかは、制作しているものの複雑さや、刷版・印刷機器といった出力環境など、業務ごとに異なるので、あらかじめ必要なチェック項目をプロファイルとして作って置くと、誰でも、どこでも同じプリフライトチェックができるようになり、各分野ごとのルールとして役立てられます。
例えば、雑誌広告送稿では、PDFの制作ルールといったルールの中にプリフライトプロファイルも指定されています。ただし、すべての広告が一つのルールなのではなく、媒体によってプリフライトのやり方を決めている場合もあります。
必要とされる紙面が大サイズでも、デザイン制作するのは画面上で行うわけですが、実際に掲載される大きさが半裁・全判・倍判など大きくなる場合は、その実寸の出力見本で表現力や効果を確認されることをお勧めします。
その理由は空間バランスを見る必要があるからで、余白、間隙、見出しや画像の大きさ・強さなどは、使われる大きさによって、適切な値が異なるからです。
例えば紙面レイアウトにおいて、使用する文字フォントの大きさの使い分けは、単純比例的(等差的)に大きくするのではなく、大きく使う場合はより大きく(等比的に)した方が、見る人の感覚としては自然にバランスがとれたように見えるからで、どの程度の大きさがよいのかは縮小サイズでは解り難くなります。

文字と同様に画像の扱いにも同じようなことが当てはまって、商品写真が複数並ぶ場合には商品の優先度にしたがってどの程度の大きさのメリハリをつけるとよいのかは、仕上がり原寸で確認した方が無難です。写真のメリハリは大きさだけではなく、シャープネスやコントラストも見る必要があり、実際に人が見る距離において確認をしないと、表現の意図が伝わらないおそれがあります。
今日では簡易校正などに使われる大判プロッタ(大判プリンタ)で1枚からでも容易に出力してもらえますので、原寸で校正を依頼されることをお勧めします。また10-20部のポスターを大判プロッタで出力してもらって、本番印刷よりも前に先行して要所要所に掲示することもできます。
印刷仕上がりを予測するための色校正は、プリンタによるものから多色印刷機を使う方法まで、要求される厳密さに従って使い分けられています。一般的には印刷の際の面付けと、写真の色バランスを確認するだけなら、カラーマネジメントがされた大判インクジェットプリンタによるカラープルーフが多く用いられます。
しかし、予定している印刷用紙においてどんな発色になるかを確認したいとか、CTP出力後の網点の掛合せが画質にどう影響するか(モワレやロゼットのチェック)知りたいとか、標準プロセスインキではない特色や金・銀・パール・蛍光など特殊インキを使う場合には、インクジェットプリンタでは色校正ができません。完全に印刷機と同じ条件での再現を求める場合は、「本機校正」と呼ばれる多色印刷機による校正が行われ、紙質も紙サイズもインキも同じものが使えますが、時間や費用はかなりかかります。
そこで、その間を埋める方法として、いろいろな色校正があります。「平台校正」は校正専用の平台印刷機でインキを刷り重ねる方法で、用紙もインキも本機と同じものが使えますが、本機校正と同じく刷版は用意しなければならず、ある程度の時間と費用がかかります。特殊紙・特殊インキを使うとかモワレ・ロゼットをチェックするには必要な方法です。ただしカラーマネジメントの仕組みはありませんので、スキルのあるオペレータによって作業がされます。また管理用色パッチをつけるスペースが紙面に必要になり、本紙よりは少し大きいサイズで印刷されます。
DDCPはダイレクト・デジタル・カラー・プルーファの頭文字で、刷版を作ることなく、CTPデータから直接大判のプリントをする専用装置による方法で、モワレ・ロゼットのチェックもできます。機種によっては任意の印刷用紙に画像を転写して本紙校正にも使えます。またDDCPは本機での印刷に対応したカラーマネジメントがあるため色は安定していて、標準化されたプロセスカラーを短納期で色校正できます。特殊インキは使えませんが、機種によっては特色のシミュレーション機能で対応することがあります。
DDCPは短納期でもコストは平台校正と似たものになりますので、もっと安くしたい場合には、インクジェットプリンタによる簡易DDCPが使われます。この場合はDDCPよりも用紙の制約や特色の制約がありますので、標準的プロセスカラー印刷のための色校正が対象になります。
先に印刷物を作ってそのデータからWebにする場合と、先にWebを作ってWebのデータから印刷物を作る場合、さらにどちらにも行ける中間のデータを編集して、双方に変換する場合があります。
どちらかの制作が時間的に先行する場合は、後で内容を更新とか校正することで、両者が異なる内容になることをどう避けるかを考えて、制作の流れを設計する必要があります。
印刷物で校正済のデータからWebを作る場合が多いですが、印刷の最終段階での校正がWebには反映されない事故が起こることがあり、手作業のDTPによる印刷版制作ではなく、DTPを自動組版のようなやり方にして、最終データを取り出してWebの原稿にすることがあります。
Webに先に情報を公開したものを印刷原稿にする方法は、もっとも負担もなく自然で楽に行えるのですが、Webでは校正漏れが多いので、印刷版の作成過程で校正や修正が起こってしまいがちで、印刷の結果をWebに戻すことがやり難くなってしまいます。
Webでの作業と印刷版の作業をなるべく同一にして、印刷版の修正済のものをそのままWebに上書きできる方法も考えられています。これはHTMLで印刷に必要な指示まで行う方法で、欧文では書籍にも使われています。日本ではまだ制約が多くて取り組まれていません。
一般に印刷に下版するリミットが決まっているのに、原稿が集まってくるのが遅く集中するので、校正作業が工程のボトルネックになりがちです。これらに対する取り組みとして、いくつかの例を紹介します。
学会や学術会議などに配布する印刷物で多くの発表者・著者の原稿が一気に集まってくる場合に、事務局の人員能力ではイベントに向けての準備も同時にあって、原稿の受け渡しから印刷所とのやり取りも対応できなくなるので、著者自身に入力してもらって、Web画面で原稿入稿や修正をして、自動組版の結果を画面を確認してもらい、冊子のPDFを作って印刷にまわすシステムが使われます。
基本的にはすべてがオンラインの作業となり、複数の人が同時並行的に入稿や校正をすることが可能になります。また著者が校正漏れを後で発見した際にも、オンラインで自分で校正の直しを行うことができるので、時間の許す限り編集が可能となります。
カタログなどDTPの冊子中にある値段や消費税などを新しいものに一斉に変更する場合も、自動組版では一斉変更すべきところにあらかじめタグを入れておいて、別途変更内容のファイルだけを用意して、一挙に全ページにその変更データを差し替えることが可能です。校正は変更内容のファイルで終了させておけば、個別ページは自動処理だけで作業は終わります。
同様に紙面とデータ部分を区別しておいて、紙面にデータベースの更新された二様を反映させるような、原稿の自動更新をする例があります。
カタログに原稿を提供する会社が複数あって、校正紙を複数配布すると、それぞれに赤が入っても戻ってくるので、校正作業が入り乱れてしまうことがあります。この場合もWebで入稿するオンラインの修正が可能な自動組版なら、同時期に校正が重なっても統合的に作業が進められるようになります。
文字校正と組版のチェックの他に電子書籍端末などの操作が正しくできるかということも校正の中に含まれます。
現在は電子書籍のフォーマットはEPUB3が標準ですが、以前にドットブックやXMDFなど他のフォーマットで作成されていた原稿を変換した場合が多く、不適切なタグが文字化けや組版上の不具合になるで、紙の書籍の校正とは異なって、ツールを使って必要な仕様に合致しているかの検証を行います。
またEPUBで入稿しても Amazon Kindle のように製品になった場合は独自形式に変換されている場合があり、EPUB段階でのチェックだけでなく、最終製品におけるチェックも必要になります。
電子書籍端末やタブレットで使うリーダーソフトごとにEPUBのレンダリングエンジンが異なるので、同じソースコードでも表示の差も起こります。これらのリーダーの固有の特徴は一覧化しておいて、許容範囲の中での相違かどうかを確認します。
元原稿や操作面は目視と同じく人が行いますが、EPUBソースコードにどのようにタグが入っているのかをチェックするのは従来の校正作業とは別に、製作段階で検証しておく必要があります。
画面はRGBの発光の組合せにより、紙面ではCMYインキの組合せにより、いろいろな色を出しているという原理的な違いはありますが、さまざまな色の対応を自動的にとるためにカラーマネジメントのシステムが使われています。パソコンのプリンタでは紙の質を指定することで、紙による発色範囲が異なってもだいたい相似的なカラーバランスになるように設定されています。
しかしオフセット印刷のようにパソコンと直結していないところでは、このカラーマネジメントは無効で、むしろオフセット印刷用のカラーマネジメントにパソコンを合わせるような使い方が必要になります。
カラー製版用のDTPでは、一般のパソコンの画面とは別に、印刷用途にカラーマネジメントされた画面で作業するようになっていて、そこではオフセット印刷と相似的なカラーバランスになるようにできます。そこから色校正用にプリンタしたものによって印刷仕上がりを予測することになります。
印刷用のカラーマネジメントでは、あらかじめ印刷インキの発色範囲に合わせた画面で画像を確認することと、画像出力時には印刷用紙の特性に合わせた処理をして、色校正と本刷りを近づけます。
パソコンのプリンタと同様に、とりわけ紙の種類・特性による発色の違いが大きいので、以前印刷したデータで異なる紙に印刷すれば発色が異なってしまいます。特に光沢のあるアートコート紙に比べてマット系の用紙は色が沈む傾向にありますので、標準的な用紙を使わない場合には、実際に使用する用紙で色校正してもらって確認する必要があるでしょう。