制作お役立ち便利帳
製本に関するご質問

Q 表紙や掲示物の傷みを防ぎたい

A

紙の物理的な弱さをカバーするために、印刷物の表面に加工をする方法はいろいろあります。また印刷後にする加工と、 印刷と同時にする加工があります。いずれも求められる耐久性・耐水性とか、求められる光沢(グロス=つや)、またかかる費用によって、いくつかの選択肢があります。下図は表面の強弱と光沢の関係をあらわし、同時に強弱は費用の高低 に関係しています。

ラミネートはパウチフィルムのようなものを印刷物の表面に熱シリンダで圧着させ貼り付けるものですが、パウチフィルムが100ミクロン以上あるのに対して、一般に印刷では15ミクロンほどのフィルムを使います。主材料はポリプロピレンですのでPPフィルムと呼ばれています。光沢があると邪魔な場合、またフィルムの表面に箔押をする場合には、マット状 のPPフィルムが用いられます。
PPフィルムよりもさらに薄くて強靭・高透明性なものにPETフィルムがあります。これらフィルムの厚みのために光学的に印刷の赤みが強く見える傾向があります。

図の中段のコーティングをする方法は比較的安価なので、主に書籍や雑誌・カタログなどに多く使われています。印刷物の表面にフィルムではなく塩化ビニール系の合成樹脂をローラー塗装することで、光沢出しや印刷インキのブロッキングを防止し、また汚れ防止にもなります。ただしフィルムほどの光沢は出ません。さらに光沢を減らしたマットビニール引きも可能です。
UVニスは紫外線硬化樹脂をコーティングして数秒のうちに固化させるもので、熱エネルギーが不要です。ビニールに比べて強靱な皮膜ができるので、パッケージのような輸送中の摩擦による劣化を防止します。透明性に優れ光沢も出ます。
プレスコートも印刷面にビニール引きをするものですが、100℃~120℃のロールで加熱加圧し冷却することで強い平滑性と光沢を出す方法です。雑誌の表紙・薬品箱・ポスター・カレンダーなど、またカタログの表紙やパッケージに多く使われています。光沢では一番の方法ですが、耐摩擦性や耐水性は他の表面加工に劣る場合があります。

OPニス(Over Print ニス)も塩化ビニール系の樹脂ですが、印刷と同様の方法でインキの代わりにニスを使うものなので、フィルムやビニール引きほどの光沢も耐摩性もありませんが、安価に仕上げたいという要望には応えられます。また印刷物の用途によっては厚い皮膜を作ると不都合になる場合もあり、広く使われています。OPニスも光沢を出すグロスタイプと光沢を消すマットタイプがあります。

水性ニスは、油性OPニス印刷よりは光沢感がありますが、UVニス印刷ほどの光沢感はありません。しかし、印刷物にしっとりとした上品な質感を出す事ができます。水性ニスを乾燥しにくい用紙に塗布すれば、コスレを防止や納期の短縮にもなります。ビニールではなくアクリル樹脂エマルジョンなどを使う水性ニス引きは、印刷機の最終ユニットで塗布できるので、赤外線などの熱で乾燥させて、印刷時にスプレーパウダーをほとんど使わなくてもよくなります。そのため印刷表面のざらつきがなく、OPニスに比べて平滑で、しかも用紙の風合いも残り上品な質感の仕上がりになり、写真集の本文ページにも利用できます。また印刷物の特定部分だけに水性ニスをひくことができます。