制作お役立ち便利帳
タグ:カラーマネジメント
商品を動画に撮ると冴えない
カタログなどに使う静止画の写真の場合は、撮影後でもphotoshopなどのソフトウェアでレタッチを行って、見栄えを良くすることが行われています。これは商品撮影の際のライティングの不足や、写り込みなどの欠陥を補ったり、商品コンセプトをより明確にするためで、画像の部分的な発色を調整しています。しかし、動画撮影では撮影後にソフトウェアで修正できる範囲が非常に限られていて、部分レタッチは事実上不可能です。
むしろ動画では鮮明な商品映像を作るには3DCGが使われていて、この3DCGは通常は商品開発よりも先に制作されます。つまり3DCGに合わせて商品が生産されるほど完成度が高い映像が先にあり、しかもCGは視点や照明効果も自由にコントロールできるので、メーカーは製品の商品撮影を省く場合もあります。ところが卸など流通業などにとっては販促用の動画撮影が必要な場合があり、その場合の撮影では静止画に比べて異なるライティングのテクニックが必要です。
静止画の商品撮影では照明を最適化した撮影ボックスが使われますが、動画となるとこのボックスには納まらないので、撮影ボックスのような多方向から光が当たって商品の影が出ないような照明を設定する必要があります。特に飲料のような液体をそのまま撮影すると濁った色になりがちなので、透明感を出すために商品の背面からも照明したり、ガラスなど透過する商品の場合には商品の下に乳白アクリルを置いて下から照明するなど、照明の工夫で完成した品質の映像ができるように工夫します。
撮影には従来から白熱灯、蛍光灯、メタルハライド灯や、フラッシュやストロボが使われますが、このうちフラッシュやストロボは静止画の写真用の「瞬間光」で、動画の照明には録画をしている間は安定した光を発する「定常光」が必要です。近年は発熱がなく、寿命が極端に長く、電気代も安いLED照明の品質が向上し、圧倒的に明るい光を簡単に扱えるようになりました。LED照明は簡易なものではYoutuberなどで有名なリングライトが、またスタジオでは光量や色味の調整も可能なビデオライトが使われます。
参考:ビールの琥珀色を綺麗に出すプロの撮影テクニック
https://www.youtube.com/watch?v=HrVxWp4TL0A
スマホで商品撮影はできるか
スマホのカメラ性能は向上したので、撮影条件さえよければきれいな写真になり、記事「スマートフォンで撮った写真がきれいに印刷できるか」ではライティングが適切にされていれば印刷用にも使えることを書きました。その後にスマホのカメラアプリも新しくなったために、さらに活用できる範囲が印刷以外にも広がっています。例えば飲食店なら本日のオススメ料理を、美容院ならお客様の姿を撮ってSNSにアップすることが行われていて、それらの蓄積の中から後日に印刷物が作成される場合があります。
従来は印刷するために製版用のソフトウェアを使ってレタッチで画像を整えていましたが、そういう外注をすると時間がかかるので、ネットショップなどスマホで商品を撮影して即WebやSNSで配信する場合が増えています。そのためにレタッチのソフトウェア(Photoshopなど)を使わずに、最初からレタッチしたような綺麗に写真を撮りたいというニーズが高まりました。
従来のスマホは被写体の焦点をあてた場所で測光して撮影するオートモードであったために、求める明るさの写真が撮れない場合がありました。iOS8以降からはフォーカスポイントを決定した後にフォーカスロックをかけ、露出補正を自由に行うことで明るさのコントロールができるようになっていますし、スマホアプリとして『Camera+』のようなものも使われています。
しかし、画面内の明暗差が大きいシーン、例えば黒い被写体と白い被写体が並んでいる場合には、白い被写体に露出を合わせると全体が暗くなり、黒い被写体に露出を合わせると全体が明るくなって、明るいところ/暗いところにある小さな文字が見えにくくなります。その場合はスマホにも搭載されている「HDR」機能をオンにして、写真の明暗部を自動調整(合成)させることができます。HDRとは、High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略で、こういう機能を活用すると撮影後のレタッチを減らすことができます。
さらにスマホの大画面化とともにデジカメよりも大きいビューワを活かして、ライティングを工夫しながら撮れば、被写体の必要なところにきっちりキャッチライトを入れたり、
商品の刻印や文字をシャープになるよう明暗を加減したり、
ハイライトの調子が大きすぎず小さすぎず、崩さないように適切に撮る、
などの試みを簡単にできるようになります。
また色の再現性を高めるために、自然光に近い高演色性LED照明(参考例)を使えば、レタッチの必要性も少なくなり、スマホを商品撮影に活用できます。
ただし画像の加工とか合成などをするには、まだスマホ・タブレットアプリには制約が多いので、専用ソフトによるレタッチが必要になります。
見る場所によって印刷物の色味の印象が変わるのはなぜか?
印刷物の色校正や本刷りの色管理は、D65などの『標準光源』という決められた照明環境のもとで行われ、色のマッチングなどの評価を行っています。しかしオフィスや家庭や屋外ではそれぞれ異なる性質の照明が使われていますので、それぞれ色味が微妙に異なることは起こります。今日私たちの生活環境にある光源は、大まかに3種類に分けられます。それぞれの特徴を知っておれば、色味のズレの理解になりますので、発色の気になる部分は、より正確に色が把握できる場所で再度チェックするのがよいでしょう。
もっとも自然な発色となるのが太陽光ですが、天候などにより変化しますので、写真撮影などにはハロゲンランプが使われます。白熱電球も似た性質があり、可視光域の短波長(紫)から長波長(赤)まで連続した光(連続した波長の電磁波)で構成されていて、赤の側のエネルギーが強くなっています。
しかし照明器具としての白熱電球は減り、蛍光灯やLED光源が多く使われるようになりました。これらは連続した波長の光を出すのではなく、特定の波長の強い発光を、蛍光物質を使って他の色にも変換して、全体としては白さや明るさを出すようにした光源です。グラフでは青のところに尖ったピークがあるのがそれで、黄橙赤の部分は蛍光物質が補っています。そのため白熱電球下と比べると物体の青や緑が鮮やかに、逆に赤がくすんで見える傾向があります。
蛍光灯にも多くの種類があり、蛍光物質を工夫することで、例えば精肉売り場用などのほか、色評価用としても使える自然な(演色性のよい)光源も作れらています。LEDでも同様の工夫が可能ですが、まだ歴史が浅いので演色性のよいものは普及してはいません。つまり現在は蛍光灯やLED光源など多種多様な光源が使われるようになったので、表題のような色の見え方の違いが起こることも増えていると思われます。
テレビやスマホなどで多く使われる白色LEDは、蛍光灯が紫外線のような可視光外の発光を使ってるのとは異なって、青色光を使って黄橙赤の蛍光物質を光らせているので、どうしても青みが蛍光灯よりも強くなります。グラフで見ると白色電球、蛍光灯、白色LEDの分光強度分布は大きく異なりますが、人の目が光に感じる度合いは560nmを中心に限られた範囲ですので、光源の藍色や赤色の成分に大きな違いがあっても影響は少ないはずですが、色味に影響することはあるでしょう。
白色LEDでも、高価になりますが青色光ではなく紫外光によりRGB蛍光物質を発光させる方式のものは、蛍光灯の高演色性のものと同様で、また疑似太陽光源として撮影用にも使われています。一方で家庭用などの安い白色LEDにはひどく演色性の低いものもあり、LED照明は蛍光灯以上に品質がばらついているのも、色の見え方の違いが広がる要因でしょう。
参考 疑似太陽光照明
https://youtu.be/ysP6Kvid2eY
画像の色あわせはどのように処理されているのか?
美術室などにマンセルの色立体があったのを覚えておられる方もいるでしょう。あれは絵の具の色を、色相・彩度・明度で分類して、同じ様な色の差で立体的に並べたものですが、実際の光の色はそれよりももっと広い範囲の発色があります。それでも色は色相・彩度・明度の3軸(3つの値)で数値化して表現できることをあらわしています。
こういったさまざまな色を系統的に表現するシステムを表色系と呼び、『CMYKではどうしても再現できない色とは?』にあるCIE色度図が有名です。いわゆるsRGBとかAdobeRGBというのもこれをベースに色の範囲を決めたものです。マンセルの色立体もこの中で定義することができ、この場合は絵具の色材というデバイスカラーの色域をあらわします。同様に液晶色材の色域とか、印刷インキの色域などをあらわすことができます。
つまりCIEなどの表色系で3つの値で示す色情報は、入出力装置(デバイス)からは独立したものなので、画像データも各画素をこの3つの値を使って記録すれば、異なる装置間での受け渡しや画像再現がやりやすくなります。色の発色範囲はそれぞれの装置で異なっても、例えば彩度の高い装置で作ったデータを低い装置で再現するとすると、色立体であれば外輪郭の彩度最大のところが合うように、途中の色データも相似的に低減していけば、画像全体の色のバランスは崩れません。
CIE色度図でも軸の取り方の違いで、XYZ、Lab、Luv、など異なる表示のされ方がありますが、これらは相互に式で変換可能で、どれでも画像に差はありません。異なる色域間の色データの変換で画像に影響が出るのは、高彩度に寄った変換か、平均的なリニア変換かなど、人の意図するところによるものです。
『写真中の製品(プラスチック)の色を正確に指定するにはどうすればよいか?』では、色の値を色度図上の座標値で絶対値として扱うこと説明していますが、こういった方法をデバイスインディペンデントカラーと言い、今日のデジタル機器で行われている方法です。
一方印刷のインキのCMYKが何パーセントという値は、オフセット印刷のグラビア印刷あるいはインクジェットなど異なる装置では各色100%の色に違いがあって、とりわけ複数の色の掛け合わせの色の再現は非常に難しくなります。そこで画像の取り込みとかレタッチはRGBやCIElabで行って、最後の出力時だけデバイスカラーのCMYKに変換することが行われます。
逆にレタッチ段階で印刷のCMYKの色を想定しなければならない場合は、特定のCMYK環境(JapanColorなど)にあわせてキャリブレーションされたカラーモニターを使って作業します。この場合の画面はキャリブレーションをしていない時よりもくすんだ色合いになりますが、前述の例の反対で、彩度の低いCMYKデータをモニターにそのままもっていけば、色相・彩度・明度は中心寄りに縮小させることになるからです。つまり画面でインキの狭い色空間をシミュレーションしているのです。
厳密に言えばどんな『色合わせ』も部分部分の色が合っているのではなく、全体のカラーバランスを可能な限り合わせているにすぎません。
どうして用紙によって発色が変わるのですか?
印刷インキでもインクジェットインクでも、染料や顔料といった発色にかかわる微粒子を運ぶ液体が何らかあり、紙にはそれらを受け止めて固定させる仕組みというのがあります。水彩絵具で考えると、水が紙に浸み込んだり蒸発して紙の表面に顔料が残りますが、紙が異なると水の浸み込みやすさによっては色が滲んだり、浸み込みにくい紙では顔料が多く表面に残ります。このように紙の表面の状態や、紙自身の構造によって、どのように染料・顔料が付着するかが変わるので、見え方も変わってきます。
まず紙の表面の平滑さが画質にもっとも影響します。表面の凹凸は乱反射になるので、平滑なほど明瞭な画像ができます。そこで印刷用紙の表面には画質を上げるためのいろいろな加工がされ、それが用紙の呼び名になっています。通常のカタログなどに使われるコート紙は平滑にするために白いクレイとか炭酸カルシウムを塗工しているので塗工紙と呼ばれますが、塗工の程度によって多い方から、アート紙・コート紙・軽量コート紙・微塗工紙があります。塗工が少ないほど発色はくすむ傾向にあります。
コピー用紙や書籍。新聞などはこの塗工がなく、非塗工紙と呼ばれます。塗工があった方がインキの発色がよく光沢もあり、カラー印刷に適します。しかし紙自身の光沢があると小さな文字を読む場合は邪魔になることがあり、印刷の用途によって塗工の程度が選択されます。塗工紙であっても光沢を抑えるためにマット仕上げをしたマット紙では色はくすむので、一般的な用紙を使うのでなければ、色校正段階から用紙の特性を踏まえたカラーマネジメントが必要になります。
非塗工紙は表面に凹凸が大きいこととインキがいろんな方向に浸み込むことの2つの理由で鮮やかな発色は難しく、コントラストも弱い画像になります。
オフセット印刷よりも紙に浸み込みやすいインクを使うインクジェット印刷では、上記の差は顕著になり、インクジェット用にさらに表面処理をした用紙が必要になります。例えばインクの水分は紙内部に吸い取られていっても、染料や顔料はなるべく表面に残るように工夫がされています。そのような処理が無いと、インクが紙に吸い取られる時に色が滲んでしまい、画像がくすむと同時にボヤけてしまうからです。
また紙表面の染料・顔料を通過した光が紙の中に入って、それが像の周囲から出てくる光学的な色のにじみも非塗工紙では多くなります。カラーマネジメントでは非塗工紙による色のくすみやコントラストの低下をあらかじめ補正するために、非塗工紙用カラープロファイルを使って色変換を行っていますが、塗工紙と同様の結果にはなりません。
紙の中にインクが入りこまない、トナーという微小樹脂粉による画像形成をする電子写真方式のプリンタでは、紙の性質による影響は比較的少なくなります。




