制作お役立ち便利帳
データに関するご質問

Q 原稿や校正のファイル転送の安全な方法は?

A

メールにファイルを添付して相手に送る方法が一番安直ですが、メールの利用には潜在的にセキュリティ上の問題がいくつかあります。
1.メールは悪意のある者が侵入しやすい
2.ファイルのウイルスチェックが弱い
そのためにメール上でいくらセキュリティの工夫を凝らしても、操作が面倒になるだけで、セキュリティ上のリスクを減らすことにはなりません。

例えば、送信するファイルを「パスワード付きzip」にしてメール添付し、別のメールで「パスワード」を送信する「PPAP」という方法がありましたが、メールに侵入されてしまうとパスワードも知られてしまいます。


またメールは、相手からのメールにCCアドレスが付いていて関係ない相手にもファイルを送ってしまうとか、宛名を間違えてしまうリスクもあります。
PPAPの場合は、パスワード付zipでは受信者のパソコンでのウイルスチェックができない可能性があります。一方でハッカーにとってはzipパスワードを解くことはそれほど難しくありません。zipはオフラインで扱えるので何度でも試行錯誤できるからです。

しかも取扱い上はzip化とか2回のメールなどの余計な手間がかかってしまいます。メールには添付ファイルの容量制限があり、これはそれぞれのメールシステム・サービスによって異なり、相手が受け取れない可能性もあります。例えばgmail 添付ファイル容量は最大25MBしかありません。それ以上の場合に自動的にGoogle ドライブのリンクがメール内に追加されますが、相手がGoogleアカウントをもっていないと不都合です。

日本政府も2020年からPPAP廃止に動き、ファイル授受は容量制限が少なく高速なクラウドの活用をすすめています。クラウドというのはサーバーと同義で、もともとセキュリティ上の仕掛けが何重にもあり、ハッキングされにくい環境といえます。
クラウド型のファイル転送サービスでは、ファイルストレージのURLや暗号を双方で共有し、法人向けではダウンロードの回数制限、期間制限、アクセス制限など権限・承認・誤送信防止・暗号化・ログ管理などいろいろな工夫がされてセキュリティを保つようにしています。

また個人でも利用できる簡易版の無料のファイル転送サービスもあり、送信(転送)できるファイルサイズに上限があります。
例:Dropbox:2GB、Googleドライブ:15GB、GigaFile便:1ファイル75GB
しかし簡易転送サービスにはデータの暗号化やウイルスチェックが甘い場合もありますので、あらかじめ会社のポリシーとして、安全に使えるサービス利用をルール化しておくのがよいでしょう。

Q 印刷会社へのPDF入稿を確実にするには?

A

完成した紙面を社外の印刷にまわす際に、文字化けや画像のリンク切れなどの事故が起こらないように、PDFで入稿することが増えています。PDFでは表現されるものの位置や大きさなどが保障されるはずですが、送受双方でのPDFの取り扱い方が確認されている必要があります。これは双方にアプリやPDFに関する相当の知識が必要とされる専門度合いの高い仕事です。

PDF(Portable Document Format)はアドビシステムズ社(アドビ)が開発し、1993年にバージョン1.0がリリースされました。後に国際標準規格(ISO32000)となり、OSや環境に関わらず汎用性の高い紙面データのやりとりのためのファイル形式として、事務用も含めて多くのアプリに採用されて、いろいろな種類があります。

その中で印刷物製作目的ではPDF/Xがありますが、その中にも以下のような違いがあります。
PDF/X-1a:日本の印刷業界で主流で、以前のEPSファイルでの入稿を引き継いだCMYKモデル。
PDF/X-3:RGBカラーに対応する以外はPDF/X-1aと同じで、事前にCMYK分解が不要。
PDF/X-4:さらに出力装置に依存しない特徴をもち、透明効果も有効。

これらは出力処理側(RIP)の機能向上にも関係していて、新しいRIPで処理できることが増えるに従って、データを作る側で事前に処理しておくべきことが減るという関係にあります。
つまり以前は出力側の能力や癖(どんなバグが起こるか、など)を想定してデータの作りこみをしなければならないことがいろいろありましたが、出力装置は設置した会社によってさまざまなものがあり、どの装置でどのような結果が出るかを見極めるのが大変でした。つまり過去に出力経験のあるところにしか依頼できない傾向がありました。

しかし現在では印刷は多様化し、従来のオフセット印刷だけでなくデジタル印刷(POD)の利用も増えています。そのために事前にデータの作りこみをしないでも再現性の良いPDFと、その処理エンジンが作られるようになってきました。これらを使えば個別の専門知識に頼らなくてもPDF入稿を確実にできるようになりつつあります。

アドビ製品のように制作アプリがクラウド型になることによって、送受双方でのアプリのバージョンの違いによる表現のズレのようなトラブルが防げるようになり、今までの多くのPDFトラブルが回避できると考えられます。2022年に発表されたAdobe PDF Print Engine 6 はアドビのアプリ側の機能拡張に対応した出力エンジンで、どこにデータをもっていっても今までのようなデータ送受の際の負担がなくなります。こういった環境が普及するまでは、プリフライトチェックでデータの完成度を高めながら作業する必要があるでしょう。

参考:

adobe PDF書き出しプリセットの使い方

Q:印刷の際にPDFで入稿すると、何がいいのか?

Q:入稿する際の完全データとはどうなっていればいいのか?

 

 

 

Q ネット利用において不正アクセスに気を付けるべきこと

A

日本ではコンピュータ・ウイルスと総称されますが、ITの専門雑誌では悪意を持ったソフトウェアはマルウェアと総称します。つまりマルウェアの中に、ウイルス、ワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェアなどがあります。一般のウイルス対策ソフトで対応できるのはウイルス、ワーム、トロイの木馬、などで、ランサムウェアはシステム担当が組織的な対応をすべきものです。

ウイルス(Virus)
通常使用されている他のプログラムファイルに自分自身を勝手にコピーする事により感染を広げるもので、発病するための特定時刻、一定時間、処理回数等が設定されていて、それまで潜伏して、コンピュータ内のデータ破壊や異常動作をさせるもので、発見が遅れれば他のコンピュータにウイルスを拡散してしまいます。

ワーム(Worm)
ワームがウイルスと違うのは、単独のプログラムとして活動することで、高い感染力と感染速度が特徴です。瞬く間に拡散していくと、ネットワーク内が高負荷で動作できなくなるなどで、被害に気付きやすく、被害を受ける期間も短いものです。ワームもメールデータを使って一斉送信したり、パスワードを盗んで勝手にログインしたり、SNSに勝手に投稿を行うなどの被害を与えます。他のコンピュータへの侵入など2次被害、3次被害に繋がります。

トロイの木馬(Trojan horse)
自己増殖はしませんが、フリーの便利なアプリやスクリーンセーバー、画像や文書ファイル、USB機器など、害のないように見えて、何かの情報を盗み取るとか、別のマルウェア侵入させたり、攻撃の踏み台になるものです。トロイの木馬はネット接続のために裏口を作り、外部からコンピュータに不正にアクセスし、情報の盗聴や他のデバイスへの不正を試みます。有益なアプリと思って使うと、ネットバンキングにアクセスしたIDやパスワード、口座情報を盗みとられるということがあります。

スパイウェア(Spyware)
ユーザが正常なソフトウェアだと思って自らインストールとか、何かをインストールした際に一緒に入ってしまって、個人情報やID・パスワード等の情報収集をして外部へ送信するのが目的で使われます。本来のプログラムは正常に動作しているので見つけるのが困難な場合があります。スパイウェアの名のとおり、CIAなどの諜報機関も情報収集に使うものです。

ランサムウェア(Ransomware)
ランサムとは身代金を意味し、コンピュータ内のファイルを勝手に暗号化したり消去して、そのファイルを元に戻すには金を払えと要求するものです。あるいは機密情報を闇市場に流すような被害が出ています。
ランサムウェアは、企業などのネットワーク機器の脆弱性に付け込んで侵入し、その中にあるコンピュータを攻撃するもので、広く社会にばら撒かれて流行するものではなく、特定の組織が狙われる場合が多いです。つまり一般のウイルス対策の情報やワクチンソフトとは異なる、ネットの脆弱性からバックアップまでの総合的な対策が必要になるものです。
金銭を要求するランサムウェアは刑事犯罪ですので、警視庁への届け出をすることになります。警視庁はサイバー犯罪として取り扱っています。警視庁サイバー犯罪対策プロジェクト

他の見ておくべきサイト

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)

東京都産業労働局(セキュリティの部屋)

総務省(国民のためのサイバーセキュリティサイト)

経済産業省(中小企業のサイバーセキュリティ対策)

IPA(情報処理推進機構)

Q 広告動画をYouTubeやSNSに投稿する場合の注意とは

A

動画撮影時の映り込みに注意すべきこと全般については、 https://gc-tobira.jp/wp/useful/動画撮影時の映り込みに注意すべきこと/ にあります。個人の趣味程度の動画ならそれほどは見られないということと、問題になりそうな時にいつでも取り下げることはできますが、広告としてSNSに投稿など一定期間公開する際には、営利目的であるとか、広く見られているメディアと認識されてクレームが発生し、差し止め請求とか損害賠償がおこらないように注意深く取り組む必要があります。

通行人などの肖像権は、遠景や一瞬写った程度であれば肖像権侵害とはならないのですが、動画を止めて静止画として見られることもあることを考えると、背景の人々にはぼかしを入れるとか、近くの人はモザイクを入れるなどの処理をしておいた方がいいでしょう。

もっともそれ以前に絵コンテを考える際に、背景の人々は後ろ姿になるようなアングルとか、商品やパネルを画面に出して出演者以外の近くの人の映りそうなエリアをふさぐなど、余計な人が画面に入らないレイアウトや企画をするべきです。これは撮影後でも映像の編集の段階で、通行人の顔のあたりにテロップを入れるとか、商品・ロゴを配置するなどの加工できます。広告動画制作後にチェックして校正していくようなやり方です。

ロケ撮影で町の人を撮る場合は、撮影についての承諾をとることになりますが、撮影の承諾と公開の承諾とは別のものですので、公開後に肖像権侵害を問われないようにきちんと説明しておかなければなりません。
肖像権はプライバシーとかかわっており、「発表会」など人前で公然と何かを披露している場合は「撮影されることが予測できる」わけで、撮影の不法性は低いです。またテーマパークや昼間の繁華街など公共の場ではプライバシー性は低いでしょう。
しかし「その人がその時そこにいた」という情報によって本人が何らかの不都合が予測される場合はプライバシー侵害が認められる場合もありますので、デリケートな雰囲気の場所は特に気を付ける必要があります。

ドライブレコーダーでの録画なども撮影⾏為⾃体が違法とされることは考えにくいですが、自動車のナンバーが写っている動画を使うと、プライバシー権の侵害が問題となりますので、モザイク処理が必要となります。

 

 

参考:ダンス動画のバックに音楽が流れているものは公開できるか?

    動画撮影時の映り込みに注意すべきこと

参考:文化庁 平成24年 著作権法の一部を改正 付随対象著作物について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html

Q ダンス動画のバックに音楽が流れているものは公開できるか?

A

通常の動画のBGMには、著作権フリーで無料で使える音源などを使いますが、ダンスのように音楽と映像が関係づけられている場合には、著作権フリー音源などに置き換えるのが不自然であり、困難になります。動画撮影の際の映り込みに関しては「動画撮影時の映り込みに注意すべきこと」を参考にしてください。ダンスの場合は映り込みではなく、基本的には演者の許諾を得て撮影・公開をするものでしょうから、音楽については別に著作権者がいるはずなので、原則的には別途許諾を得なければなりません。

しかしYouTubeなどに投稿する場合は、YouTube自身がJASRACと包括的な利用許諾契約を締結していますので、個別の許諾を得ることなくJASRAC管理楽曲を含む動画をYouTubeにアップロード・公開することができる場合があります。他の動画投稿サービスについても同様のJASRACとの包括的な利用許諾契約があるかどうか調べてください。

これには制約があって、
・動画で使用する音源が、自ら演奏または製作したものであること。
・広告や宣伝を目的とする動画ではないこと。
・JASRACが管理する「国内作品」であること。
などの条件があります。

ですので外国曲を動画配信に利用する場合は別の手続きが必要となります。ライブ配信のみの場合は不要ですが、保存して見られるようにする場合は、音楽出版社が指定した金額(指し値)を請求される場合があります。
市販CDやダウンロードした音源などを利用するにはレコード会社・実演家などの許諾が必要です(著作隣接権)。つまり外国曲の方が利用が厳しいことになります。このことはFaceBookやTwitterなどの他の動画配信できるサービスも同様です。

ただし映り込みの場合は、音源についてもYouTube投稿は可能のようで、経験的にいうと数秒間であればアップロードに何の警告も出ませんが、30秒以上あると「著作権の申し立て 著作権で保護されているコンテンツが見つかりました。」というメッセージが出る場合があります。それでも「著作権者は YouTube でのコンテンツの使用を許可しています。」というメッセージが出れば事実上そのまま放置して公開しても問題ないようです。

こういう状況は変更される場合があるので、その時々にチェックをしてみる必要があります。海外では著作権はとっくの昔に切れているはずの伝統的な音楽でも権利主張される方がいますが、係争を経て変化する場合が多く、「著作権の申し立て」がいつの間にか消えてしまうこともあります。なるべくなら「著作権の申し立て」がない範囲で動画制作するのが無難です。

参考:JASRAC https://www.jasrac.or.jp/news/20/interactive.html

Q 動画をいろいろなSNSで使いまわしたい

A

SNSの動画マーケティングは急速に増えていますが、複数のメディアがありますので、対応はややこしくなり、正直使いまわしは難しいです。一方で今日一般的なデジタルビデオやスマホで撮る動画は、アスペクト比が16:9と共通で、解像度は5段階に標準化されていて、撮影時に選択します。
・4K(2160p) 解像度:3840×2160。NetflixやYouTubeなどが対応。
・2K(1440p) 解像度:2560×1440。タブレット端末、オンラインシネマなどが対応。
・フルHD (1080p) 解像度:1920×1080。主流でBlu-rayもこの規格。
・HD(720p) 解像度:1280×720。ハイビジョン画質で、YouTubeの主流の画質。
・SD(480p) 解像度:854×480。標準画質でDVDなどに残っている。
これらの撮影画像はカメラ側で可能な最高品質で記録されていて、動画編集後に表示・放映・配信の目的ごとに品質を設定してデータの書き出しなければなりません。つまりSNSごとに扱えるサイズやクオリティは異なっているので、SNSの投稿規約をみて以下のような項目をチェックする必要があります。

・アスペクト比:動画広告では表示スペースが16:9の比率でないものがある。
・画像サイズ:1920×1080が無難だが、広告では別途決まりがある場合もある。
・エンコード:入れ物の規格でMP4の「H.264」など。また1 秒あたりのフレーム数をあらわすフレームレート(24、25、30、48、50、60 fpsなど)、インターレースの有無、など。
・ビットレート:1秒あたりの情報伝達量。これが低いと動きの激しいものは劣化する。

SNSの投稿規約と関係なく撮影時のフォーマットでアップロードすると、容量が大きすぎてアップロードがエラーになるとか、アップロードができても動画配信サービスをする側が自動で各社の標準フォーマットに変換する場合があります。勝手にフォーマットを変えられると、配信される動画の質が低く見えます。なので最初から規約どおりのフォーマットで品質チェックした方がよいでしょう。
動画の質は配信される時の通信状況によっても変化します。見た目だけで判断するのではなく、再生時に画面のどこかに数値で表示されるところがあるので、そこで通信環境が大丈夫かどうか確認する必要があります。

主なSNSの設定

動画の投稿・配信ができる主なSNSは、Youtube、Facebook、Instagram、Twitter、LINE、TikTokなどですが、同じSNSでも動画が投稿なのか広告なのか、広告の種類はどれか、によって規約が異なります。広告はスペースごとにアスペクト比が異なっていることが多いので、どうしても作り分けや作り直しが必要になります。
つまり載せようとするSNSの規約をそれぞれ見るしかないのですが、大きな特徴のあるメディアだけ見てみます。
・TikTok
若者がショート動画としてよく見るTikTokだけが、基本スマホで撮影しスマホで見るものなので、あまり考慮する点はありません。主に投稿されているのは15秒の動画です。制約はiPhoneで最大287MBまで、Androidで最大72MBまでです。
・LINE
スマホ動画が基本で、トーク上の動画の長さは5分まで200MBまでです。広告は10分までで、クリックした先の表示は、正方形(1080)、16:9で縦と横があります。
・Instagram
アスペクト比が、正方形、横(1.91:1)、縦(4:5)の3種あり、長辺で600画素以上必要です。
24時間で投稿が消えてしまうストーリーズは縦横比が9:16縦長の画像(1080x1920)が基本です。いずれも最長120秒となっています。
・twitter
アスペクト比が、正方形か16:9で縦横どちらも可です。最大容量が512MBで最長140秒です。
・YouTubeFacebookはいろいろなフォーマットに対応し、時間の制約も実質上心配いりません。
これらもまたすぐに変わってしまうかもしれませんので、取り扱おうとする各SNSについて、「規約 フォーマット」などで検索して事前に確認しておきましょう。

こうしてみると新しいメディアほど制約も特徴もはっきりしてるといえるでしょう。しかし新しいメディアほど若者受けをしています。動画の長さの点では短い方に合わせて編集しておけば、使いまわしはやり易くなるでしょう。

Q 改正個人情報保護法でCookieの取扱いはどうなる?

A

2022年4月施行の改正個人情報保護法は、個人データの不適正な利用に厳しくなるとともに、マーケティングへの活用の道も開かれるというバランスをとったものです。まず厳しくなる点では、①罰則 ②義務の拡大 ③請求権の拡大 などがあります。

罰金は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」から「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に、報告義務違反に対しては「30万円以下の罰金」から「50万円以下の罰金」に強化されます。法人に対する罰金刑は措置命令違反と不正流用については「1億円以下」に引き上げられます。また諸規定は外国の事業者にも適用されます。

個人情報取扱事業者の義務は、個人データの不適正な利用の禁止義務が明文化され、漏えい等が発生した場合の報告義務及び本人に対する通知義務が新設されます。一方で民間団体の「認定個人情報保護団体」がある程度ルールを決められて事業者の自主的な個人情報保護への取り組みを推進しています。

個人データの利用停止や消去を請求できるのは、旧法では目的外利用された時と不正の手段で取得された時に限られ、また第三者提供の停止を請求できるのは、本人の同意なく第三者提供がなされたときに限られていましたが、改正法では上記に加え、不適正な利用がなされたときも利用停止等が請求できます。また、個人データの取扱いにより本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがあるときにも、利用停止等又は第三者提供の停止の請求ができるようになります。

一方でデータ利活用の促進として、個人を特定できないように個人情報を加工した「個人関連情報」は、旧法では加工前の情報と同等に厳格な規制の対象となっていましたが、改正法では氏名等を削除して、他の情報と照合しない限り個人を特定できないように個人情報を加工した場合は(仮名加工情報)、仮名加工情報取扱事業者の内部分析目的の利用に限定する等を条件に、開示・利用停止請求への対応等の義務を緩和しました。

これはCookieなどのような識別子情報とそれに紐づく閲覧履歴や購入履歴などの個人情報ではない情報のことで、改正法では個人関連情報を第三者提供する場合、提供元が提供先に対して本人の同意を得ていること等を確認する義務を新設しています。例えばホームページを開くと、『弊社のウェブサイトでは、サービスの向上、またユーザーにより適したサービスを提供するため、クッキーを使用しています。また、ユーザーに合ったコンテンツや広告を表示させることを目的としてクッキーを使用する場合があります。』として同意を求めるケースなどです。

そもそもCookie自体には個人情報を抜き出したり、特定したりするような機能や仕組みは無く、Webサイトへのアクセス履歴やログインIDなど、Webサイトの閲覧にかかわるデータのみとなっていますが、Cookieとその他の情報を照合することによって個人を識別することは可能です。Cookieに関するトラブルを防ぐために使用同意を求めるポップアップがありますが、その内容はEUで2018年5月にできた法律GDPRの項目が参考にされています。

現時点ではポップアップを表示することは義務付けられてはいませんが、今後施行される法改正を考慮して、マーケティングに関連したWebサイトではCookie使用の同意を得る仕組みの準備を行っておくとよいでしょう。一方で2020年10月に公開されたGoogle Analytics 4はプライバシー保護に重点を置いて開発され、Cookieを使用することなくアクセス解析が行えますので、マーケティングに関係の薄いWebサイトでは、ユーザーにCookieの使用を拒否されてもサイト運営に直接影響はないともいえます。

参考:個人情報保護委員会ウェブサイト https://www.ppc.go.jp/

Q zipファイルをWindowsとMac間でやりとりする方法

A

デザイナなどからMacのデータをzipファイルで受け取ってWindowsで開こうとすると、ファイル名が文字化けしていて上手く解凍できないことをよく聞きます。またDropboxやGoogle Driveで複数ファイルをダウンロードする場合は圧縮されてダウンロードされますが、この時も解凍すると文字化けしてしまう現象も同じ原理です。


これらの対策として、送る側で対処してもらう方法と、受けた側でツールを使って対応する場合があります。後者で有名なのはCubeICE(https://www.cube-soft.jp/cubeice/)というツールで、Windowsで作られたzipファイルをMacで解凍する場合の定番です。

Windowsで作られたzipファイルをMacで解凍する場合は、The Unarchiver(https://www.benricho.org/Tips/unarchiver/)があります。

しかしそもそもなぜこのようなMacとWindowsの違いがあるのでしょうか?それは日本語をコンピュータで扱う際の文字コードはJISで決まっているにもかかわらず、両OSとも当初はシフトJISを採用し、その後OSの改定の際にバラバラに「UTF-8」でエンコードに対応させてきたからです。つまりOSのバージョンによってそれぞれいろいろなやり方をとってきました。Windows10になって両OSとも「UTF-8」に揃いつつありますので、変換ツールなしでも文字化けなくやり取りする方法も生まれました。

Windowsでは2019年のアップデート(Version 1903)で、「メモ帳」アプリの文字コードでも既定でUTF-8が使われるようになりましたが、それ以前のメモ帳では「Shift-JIS」がデフォルトの文字コードでした。Windows10ではシステムに使われている文字コード(システムロケール)を、Shift-JISからUTF-8に変更することができ、そうすると今のMacOSと同じ土俵になり、文字化けは起こりません。しかし古いWindowsアプリでShift-JISでしか動かない場合は不具合が起こることがあります。

古いソフトウェア/アプリを使用しない場合は、コンピュータ環境が今後Webをベースとするクラウドへの移行しつつあり、UTF-8が主流になりますので、Shift-JISを使う環境を極力減らし、Windows10の設定をUTF-8にしていくことをおすすめします。

Q 令和4年から電子帳簿保存法がどうかわるか?

A

令和4年1月から電子取引については関係書類を紙保存ではなく電子保存するために電子帳簿保存法が決められようとしていましたが、2年間は紙の帳簿でも保存が認めらる猶予期間となりました。いずれにせよ電子取引の加速に伴い、従来さまざまな制約があった電子帳簿保存法は抜本的に緩和されました。

最近は、見積書、注文書、請求書、領収書のような取引書類をPDFとして作成し、電子メールの添付ファイルとして送受信するのが一般化しました。また、オンラインで購入する際も領収書や請求書をPDFファイルとしてダウンロードします。これらの書類はその後に監査・決算処理や税務などに必要な重要な証憑書類であり、法人税・所得税などの国税の徴収を行う立場から、国税庁は国税関係書類として指定し、取引に際して相手方から受け取った国税関係書類と相手方に渡した国税関係書類の写しの保存を法人税法で納税者に義務付けています。

国税関係書類のデジタル保存については、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法)、また財務省令「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」で定められています。
電子帳簿保存法は第4条1項は、会計システムなどを使って自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成している「帳簿」について、第4条3項で書面をスキャンして電子化PDFファイルとしたときのデジタル保存と原本廃棄を認める(スキャナ保存といいます)条件について定めています。

電子帳簿保存法第10条では、取引用PDFファイルを書面にプリントアウトして保存するか、デジタル保存する際の条件を定めていて、以下1~4のいずれかの措置を行えば良いとされています。


1.デジタルファイルの受け渡し後、時間をおかずに記録事項にタイムスタンプを押し、さらに保存担当者またはその監督者の情報を確認できるようにする。
2.正当な理由なく訂正及び削除を防止する事務処理規定を設けて備え付け、規定に沿った運用を行う。
3.デジタルファイルの記録事項にタイムスタンプを付してから、取引情報の授受を行う。
4.デジタルファイルの記録事項について、訂正または削除を行ったばあいにこれらの事実及び内容を確認することができるコンピュータシステムまたは訂正もしくは削除を行うことができないコンピュータシステムを使用して、その取引情報の授受及びそのデジタルファイルの保存を行うこと。

改正前から緩和された点は、

1.タイムスタンプ付与期間(現行:3日以内)が、記録事項の入力期間(最長約2月以内)と同様になった。
2.データ検索要件が、取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定するとともに、国税庁等の質問検査権に基づく情報開示に応じるなら複合検索機能がなくてもよいとなった。
3.売上高1000万円以下で、国税庁等の質問検査権に基づく求めに応じるなら検索要件は不要とする。

つまり、PDFなどでの保存に関して、データ管理さえちゃんとしていれば、特別なシステムがなくても、紙の書類を不要とできるといえるでしょう。これらに関した法令は今後も変更されることにご注意ください。

参考資料
電子帳簿保存法関係法令集
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/03.htm open_in_new

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/index.htm open_in_new

Q ネット上著作物の保存・利用の適法な範囲について

A

文化庁は当初ネット上著作物のダウンロードは全面的に違法とする方針でしたが、2019年1月1日に施行された著作権法の改正で、著作権者の利益を不当に害しない範囲で、著作物の部分的な表示等ができるようになりました。これは余りにも形式的な著作物の保護をすることがIT利用促進の障害にならないように配慮したためです。

例えば従来の法律では、コンピュータ画面上に表示された他人の著作物の全部または一部を画像にして保存するスクリーンショットいわゆるスクショをする場合には、その著作物の著作権者の許可をもらうのが原則でした。情報検索のためや論文剽窃検証サービス等でネット上の画像を取り込むとか、AI開発のための画像の数理的的な解析のためなども、形式的な著作権侵害となる可能性があったからです。

またオンデマンド授業での講義映像・資料の送信、対面授業の予習復習用の資料のメールでの送信、スタジオ型のリアルタイム配信授業の際に、使用する著作物の許諾を受けることができない、権利者が見つけられない、手続きが煩雑で授業に間に合わないという問題がありました。そこで補償金の支払いのみで別に許諾を受けることなく使用できるようになりました。

全体としてダウンロード全面違法ではなく、著作権者の利益を不当に害しない範囲で、著作物の部分的な表示等ができるようになりました。そこで、著作権に触れるイラストなどが一部に写り込んだスクリーンショット(スクショ)についても、一律違法ではなく、私的使用の目的でのスクショであれば著作権の制限規定の対象であり、原則違法とはなりません。

規制の対象になるのは、権利者の許可無くネットに上げられた漫画や写真、論文などを、著作権侵害物だと知りながらダウンロードする行為です。また他人の著作物の一部を切り取ってスクショするような場合は、スクショの仕方によっては、著作者が著作物を勝手に変更・切除等されないという権利である同一性保持権の侵害になる可能性はあります。
ただし違法アップロードでも、その著作物の全体のうちスクショされるのがほんの一部分で軽微なものの場合には違法になりません。例えば漫画の紙面全体ではなく一コマの一部などの場合は著作権者の利益を不当に害しないと判断されるからです。

ちなみに、私的使用の目的であっても、正規版が有償で公衆に提供・提示されている著作物を、それが違法にアップロードされた著作物(国外も含めて)であることを知りながら、継続・反復的に受信してスクショする場合は、刑事罰として2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれらの両方を問われる可能性もあります。

参考資料:令和2年通常国会 著作権法改正について(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/

参考資料:著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に 関する法律の一部を改正する法律 御説明資料(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_02.pdf

参考資料:侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_06.pdf