制作お役立ち便利帳
タグ:デジタル印刷
文字デザインを浮彫にしたグッズを作りたい。
ストラップなどノベルティの開発にあたって試作するのに3Dプリンタが使われていますが、数万円クラスの安価なものは解像度が粗くギザギザ感があって、プリント後に表面を溶かすとか削る必要がありました。
樹脂フィラメントを使って積み重ねて作る特性上、どうしても積層痕が出るからです。その積層ピッチを細かくするとそれだけプリント時間がかかってしまいます。しかし液状のUV硬化樹脂使い、紫外線を当てて造形する光造形3Dプリンタを使うとピッチが細かくできて積層痕が出ないばかりか、xy方向に動かす必要はなくz軸だけの移動なので、高速なプリンタが安価に提供できます。
もともと3D CAD用に以前からあった技術ですが、特許が切れて3万円以下の低価格の光造形3Dプリンターが登場するようになりました。その特色は、造形スピードが速い、なめらかな面が造形でき透明な材料が使える、などですが、強度面では材料(レジン)面でまだ開発途上ともいわれています。液体のUV硬化樹脂を扱うので槽が必要で、そのサイズで仕上がりサイズが制約され、安価なプリンタは大きなものは作れません。
露光は槽の底面から行い、硬化した層が上に、新しい層が下になるように積層されます。
露光の方法はパソコンのプロジェクターやディスプレイと似ていて、レザー(SLA)方式、DLP方式、液晶方式があります。SLA方式はレーザープリンタのように単一のレーザーをミラーで反射させ走査します。この方式は主に業務用で、小さくて細かいパーツを精度よくたくさん作ることに向いています。
DLPはプロジェクターがスクリーンに映像を映すのと同じく、紫外線を何万もマイクロミラーで反射させることで面的に映像を一度に映し出すので、広い範囲の投影では解像度が落ち、狭くすると解像度が高まり、解像度を低くすれば大きい部品や複数の部品が一気に作れ、逆に狭めれば精細な部品が作れます。
LCD方式は液晶パネルのバックライトを紫外LEDにして映像を面的にに映し出すので、構造がもっとも簡単で安価なプリンタになります。ただまだ発展途上で、紫外線が液晶パネルの寿命を縮めるために、200時間ほど使用しているとパネルの交換する必要が起こり、大量生産に向きません。
絵画を画像データにしたい
絵画の状態やデジタル画像の利用目的によって、デジタルカメラで撮影するかスキャニングするか、どこで行うかなどを決めて、デジタル化の方法を考えなければなりません。また絵画の種類によって、それぞれにふさわしいライティングのテクニックが必要です。利用目的が複製画の製造である場合には、絵の具の凹凸が大きい場合などで立体的な再現をするための特殊な計測が行われます。このようなことから作業実績のある業者を選ぶことになります。
一般には図録用の写真原稿である場合が多く、デジタルカメラで撮影ができますが、ライティングに注意が必要です。美術館など展示場所では、入館者が見た印象のように撮影することになるでしょう。展示場所の室内が暗めだからストロボや直接のライトをあてると不自然になります。画家のアトリエは北向きの窓の光が常識なので、そのつもりでライティングします。
展示物ではなく、所蔵品のアーカイブとか、持ち出せない作品の調査目的の場合は、見た目のきれいさよりは現状を正確に撮影することが求められるでしょう。そのために精密な計測が必要で、特殊なスキャナが使われることがあります。描かれた当時の復元や色材の判別の目的の場合もあります。
個人コレクションの場合はどこで撮影するかも問題でしょう。ライティングの設置が困難な場合は撮影スタジオへのもちこみになりますが、運送・梱包などの取り扱い上のリスク問題があるので責任を分担し、保険付の専門運送業者に依頼するか、直接持ち込んでもらい、撮影に立ち会ってもらって、持ち帰りいただくことになります。
図録用であっても、油絵、アクリル絵具、水彩画、デッサン、版画、など描かれる材質がキャンバス、紙、板など多様ですので、それら材質感どの程度表現するのかも確認してライティングする必要があります。例えば油絵には油膜があるので、その透明感が必要なのかどうかは作品によって異なります。また紙が変色している場合に、そのままの状態を撮るのか、紙色は修正するのかという判断もあります。
撮影機材は一般のデジタルカメラ以外にアート専用カメラもあります。GoogleのArt Cameraではロボット制御で絵画を至近距離から何百枚も撮影し、それをつなぎ合わせることでギガ画素の高精細な画像を作成しています。同時にレーザーやソナーシステムによって正確なフォーカスでの画像撮影をしています。
特殊なスキャナを使う場合は専門業者(例:株式会社誠勝)に依頼することになります。例えばドイツのImage Access社の WideTek36Art は、対応サイズは914×1,524mm、厚さ最大100mmまで取り扱え、キャンバスやパネルのような厚みのある作品とか、A0、F50サイズの大判作品のほか、書画や掛け軸など長尺の作品、のスキャニングが行えます。
参考として、複製画を作る場合は、凹凸の情報が必要ですので、レーザー計測による3Dスキャンを行います。
参考サイト リコーの2.5D写真印刷技術(立体複製画制作技術の応用)
PODで出版するには
印刷製本部分は全国のオンデマンド印刷業者で可能ですが販売(書籍流通)は行いませんので、ネットでの出版販売をしていることろに依頼することになります。またPOD出版をするには内容がすべて完成したデータになっている必要がありますから、 電子書籍の制作や販売と兼ねてPOD出版のサービスをするところが増えています。アマゾンPODが有名ですが、アマゾンでしか販売できないという制約があり、他の業者と組み合わせて出版する方法もとられています。
アマゾンは書籍の販売とKindleという電子書籍サービスを行ってきましたが、それに加えてプリントオンデマンド(オンデマ ンド印刷)で書籍の印刷・製本による出版販売を導入することで、出版流通の仕入れを無くし、在庫切れ対策にもなるよ うなサービスをしています。
既存の書籍流通では4割ほどの返品がありコストアップになっています。また部数が見込めないコンテンツは出版されることが ありませんでした。しかし在庫を持つ必要がないPODでは出版したい書籍が出版できるので、自費出版などを容易にしたのがアマゾンPODです。
このサービスは2005年にアメリカで始まり、日本では2010年から始まっていて。2018年の記事では「まずは、洋書のサービス からスタートし、その後、日本で出版している書籍へと幅を広げ、2016年からはカラー印刷に対応している。現在、日本では 、300万点以上のコンテンツがあり、そのうち9割が洋書になっている。」とのことです。
購入者は、Amazon.co.jpのPODのサイトから本を選び決済を行なうと、出版社から提供されたデジタルファイルをもとに、アマ ゾンのフルフィルメントセンターの中で本文の印刷や表紙のカラー印刷を行い、表紙にラミネート加工・丁合・三方断裁などの製本工程が自動で行われて書籍になり、他の書籍同様に配送されます。
アマゾンPODへの出版依頼は、アマゾン直接ではなく下記の正規取次店に登録し手続きをします(2019年9月現在Amazonサイト の説明)。
・株式会社 学研プラス
・株式会社 モバイルブック・ジェーピー
・株式会社 メディアドゥ
・株式会社 インプレスR&D
・ゴマブックス株式会社
・株式会社クリーク・アンド・リバー社
・一般社団法人日本図書館事業協会
おそらく印刷以降の自動化・ロボット化できるところはアマゾンのコンピュータシステムで直接管理できるが、どのような様式の書籍にするかというところは専門家の介在が必要なので、外部の取次店に任せていると思われます。また取次店も電子書籍を扱う会社なので、電子書籍を紙の書籍にするサービスという意味も含まれているでしょう。
現状のPODによる出版物製作の制約として、オフセット印刷に比べると色が安定しないとか、印刷ムラが出るとか、用紙が限定されることがあります。また1冊当たりの単価が割高であり、部数が増えてもあまり下がりません。それにより書籍の販売価格は低く設定できません。製本仕様に関してもペーパーバック(並製本)が一般的です。帯もつけることはできません。
さらにアマゾンPODでは一般書店に流通させるためのISBNコードの取得は行なわず、アマゾン以外のネット書店で販売することができませんが、正規取扱店によってはISBNコードを取得や他のPOD取り扱い書店でも販売できるサービスをするところもあります。またアマゾンPODで製本された書籍には価格が表示されません。
絶版した書籍や貴重な書籍でもスキャンしてPDFデータにすれば出版用のデータになります。ただしネット経由で配信するにはデータ量が大きくなり過ぎて不都合な場合は、POD出版にするという方法もとれます。下の例はカラーのバックナンバーをPOD出版した例です。
https://www.hamlife.jp/2017/07/26/amazon-pod/
オンデマンド印刷とは何か
オンデマンド印刷とはデジタルプリントによる印刷物製作のことです。プリントならページごとに内容を変えられるので、印刷後の帳合が必要なくなり、製本など印刷後処理が楽で早くできるようになります。文書がデータとして保管してあれば、いつでも必要な部数の印刷物ができることになります。デジタル印刷、POD(Print On Demand)とも呼ばれています。
従来のオフセット印刷などとの違いは、印刷機ではセッティングのような前作業がかかるけれども、大量に製作するほど割安になるのに比べて、オンデマンド印刷は1部から必要部数が作れるわけですが、基本的には単価は一定で、大量にプリントしても割安になりにくいでしょう。
一方オフセット印刷などでは、あとから100部追加でほしい場合にも、最初のセッティングをやりなおさなければならず、その場合に時間もコストもかかります。そのためにオフセット印刷では必要見込み数よりも多めに印刷し、ある程度の使い残しも出てしまいがちです。
ある文書の必要数が毎週200部とか500部の場合に、1年分の万という部数をいったん発注してしまうと、印刷物の保管や在庫管理をしなければなりません。そこで毎週なり毎月の必要数だけをオンデマンド印刷すると管理が非常に楽になり、また不足する事態も避けられます。
印刷物の内容はしばしば変更が起こり、残っている在庫を処分し、新しいものに差し替えことになりますが、例えば新版を「メーカー→代理店→営業部」というように順次送付する場合には、差し替えの作業も時間や手間がかかり煩雑で、管理コストが高くなってしまいます。オンデマンド印刷で小ロットづつ供給していれば、随時更新が容易になり、情報更新のタイムラグを最小にできます。
オンデマンド印刷は、最初はコピー機による文書作成と、本格的な印刷の中間的な部数を処理するのに使われていましたが、プリンタの性能向上とともに利用範囲を広げています。従来はビジネスフォームをあらかじめ印刷しておいて、それに後からプリンタでデータを打ち込んでいた帳票分野から、比較的部数の少ない出版物までオンデマンド印刷で行われるようになっています。
オンデマンド印刷の応用
オフィスにあるプリンタの機能に『簡易製本』がありますが、帳合や製本機能をもっと高度化し、高速化・大型化したものをオンデマンド印刷機とかデジタル印刷機と一般に呼びます。これらの先駆けとなったのが米国ゼロックス社が開発したDocuTech(冒頭写真)で、その後日本の複写機メーカーも開発競争に加わり、カラーの品質向上、製本システムとの連携などによって、印刷分野でも使われるようになっています。
ただしオンデマンド印刷がボタン一つで即時にできるようにするには、印刷物1点ごとにサイズや製本仕様が異なるとか、使用する用紙が特殊であるとか、カラーの校正が必要などの、従来の印刷では毎回検討して決めていた物理的要件を、書籍でいえば新書版・文庫本のようにあらかじめ類型化・標準化して絞り込んでおく必要があります。
過去に作成されたさまざまな形態の文書も、ページをスキャンしてデータ化しておけば、類型化・標準化したスタイルにあわせてオンデマンド印刷できるので、全文書のペーパーレス化を進めつつ、どうしても紙で必要なものはオンデマンド印刷するという利用方法もあります。
カーラッピングはどうやって印刷するのか?
昔は車体に塗装してましたが、ボディを傷つけやすいので、その後マーキングフィルムをで切り文字を作って車体に貼っていました。今では主として塩化ビニールシートにインクジェットプリンターで印刷してから貼るので、フルカラーの画像でも安価に装飾できるようになりました。飛行機から、電車、バス、果ては痛車まで盛んに用いられています。
また営業車の外側を媒体に変えることがことができるので、自社のマーケティングや広告としても使われています。日本でも21世紀に入って広告媒体としてのバスラッピングが増えましたが、まだ欧米のようなこなれたデザインになっていないので、まだまだ伸びシロはあるとみられています。
印刷は、インクジェットインクの種類で溶剤系とラテックス系の2通りありますが、いずれも1.3メートルほどの裏に粘着剤のついたロール状の塩ビシートを使いますので、それ以上の幅が必要な場合は、あらかじめ絵柄がシートをまたがらないとか貼り合わせがやり易いようにパーツ化して、分けて印刷します。
溶剤系インクは塩ビの表面を少し溶かすようにして固着するので耐水性耐光性に優れますが、インクが下地に溶け込むことで少し彩度が下がる傾向にあります。また長く使われてきたので、メタリックとか特殊なインクも豊富にあります。難点は印刷後に溶剤が揮発するまでに時間がかかるので、すぐにラミネート加工ができないとか、どうしても溶剤の臭いがとれないことです。
近年主流となってきたのがラテックス系の水性インクジェットによるプリントで、臭いや有害成分がないために飲食店内、教育機関、医療関係などでも使えます。このインクには水性顔料の他にラテックス(ポリマー)、抗スクラッチ剤などが溶け込んでおり、熱処理で速乾性と耐久性をもたせるような特殊なプリンターを使います。
まず塩ビ素材の表面温度を上げておいてインクジェットプリントし、ラテックスの薄膜を作りながら水分を蒸発させます。そうするとその表面に抗スクラッチ剤の膜が形成され、すぐに次のラミネート加工に入れます。ラミネート無しで3年、有りで5年の耐性があるといわれています。プリンターには複数のヒーターがあるので、かなり熱をもちます。
ラミネートされた後の車体へのラッピングの施工は職人による手作業になり、車体には曲面も多くあるので、塩ビシートをヒートガン(強いドライヤーのようなもの)で部分的に熱して伸ばしながら曲面にあわせていきます。曲面がきつい場合には、こういう加工がしやすいキャスト製法の塩ビシートを選ぶ必要があります。
通常インクジェットプリントをする対象はインク受理層のコーティングが必要ですが、ラテックス系ではそういった処理は不要であるところも普及の理由になっているようです。当然車体だけでなく屋外看板一般にも使えるプリント方法です。
バーコード、QRコードの校正はどうする
バーコードやQRコードのイメージは専用アプリを使って生成されるため、それ自体に間違いはないはずですが、印刷やプリント出力の品質、およびそこに入っているはずのデータが正しいものだったかどうかについては、何らかのチェックが必要になります。つまり印刷面と機能面の2つのチェックをすることになります。機能面については、実際に印刷されたコードを読みとって想定どうりの動作をするか確認します。まずは簡易的にはスマホで動作確認をしますが、申し込みなど複雑なフローが先にある場合は、最初から検査用のダミーのデータとそのコードを作っておき、システム的にチェックできるようにしておくとよいでしょう。
印刷については、特殊紙や一般的ではない素材にコードを印刷するとか、貼り付けるところが少し曲がっているなどの場合は、印刷物の目視検査ではなく、ちゃんとした検査器具をつかって適合性を判断することになります。特に最近はインクジェットプリンタでコードをプリントするケースが増えて、プリンタの状態とかインクが純正品ではない場合に、用紙上のイメージの滲みやカスレによるエラーが問題視される場合があります。
例えば、発送物に切手を貼らず、宛名も印字して投函し、ネットで郵便料金を決済するオンラインシッピングの場合にもバーコード、QRコードが使われます。これは発送者が自分でプリントして貼り付けるので、バリアブルプリントなどで用紙とインクの関係が不安な場合は、事前に検査しておいたほうがいいでしょう。
それに使う検査器は、主にハンディ型のものがいろいろあり、対象となるバーコード・2次元コードの種類によって相応しいものを選びます。印字品質評価に関してはISO/IEC15415規格のほか、いくつもの規格があり、それらに準じた検査を行います。こういった機器はパソコンとつないで、検査結果のレポートを作るアプリがあって、その結果を証明としてプリントアウトできます。
下に結果のレポートの例を示します。検査結果で不合格となった場合は、原因を考えて対策をします。ありがちな不合格は、コードの周りの余白不足とか不要な枠、汚れや地色、黒以外でのプリント、などではデザイン面から再検討が必要です。また利用環境の問題もあり、読み取る場所の環境光の影響や、貼り付けるところの曲がりなどの要因もあります。
オフセット印刷した上にプリンタで刷りこみたい
オフセット印刷上の注意点と、プリンタ側の注意点がいくつかあります。カレンダーの下部空白に社名などを刷り込むような、いわゆる「名入れ」の場合は、白紙の上にプリントするので、問題は起こりにくいですが、オフセットインキに覆われたところは樹脂膜が形成されているので、プリント時の不都合は起こりやすくなります。
またオフセット印刷でも枚葉印刷機を使う場合は、印刷面の上に乾燥促進や紙のくっつき防止のために微粉末であるスプレーパウダーを散布するため、これが後でのプリント品質に悪影響を与える場合がありますので、極力散布量を控えるとか、パウダーの種類に気を付けることが必要です。
あまり印刷された文字や絵柄の上にプリントを重ねることはないとは思いますが、オフセットの色べたの上にプリントする場合は、前述の樹脂膜の上でもプリントが可能であるかテストするべきでしょう。一般にトナーを熱融着する電子写真方式のプリンタの場合には、オフセットインキの上にもトナーがつくものと考えられますが、インクジェットプリンタの場合には、溶剤インクやUVインクを使う特殊な機械でないとオフセットインキの樹脂層の上にすぐにはプリントできないはずです。
一般にインクジェットでは、インクをキャッチし、にじみを防止する受容層のコーティング加工を非印刷物の表面にしています。オフセット印刷のされていない白紙部分に水性インクジェットでプリントする場合にも、シャープで綺麗な画質を得るにはこのコーティングが必要になるでしょう。
溶剤インクやUVインクを使う場合も、それぞれ非印刷物には前処理が必要になる場合があります。
そのために絵柄など画質が問題になる部分は、極力オフセット印刷で済ませておいて、プリントする部分はオフセット印刷では空白部分にしておいて、名入れのような画質がさほど問題ないところをプリンタで追い刷りするのが簡易で安全な方法になります。
もし写真部分もバリアブルプリントにする必要があるなら、オフセット印刷物は無くして、すべてをデジタル印刷にすることも考えてみたらいかがでしょうか。















