プロのものづくり集
高精細印刷

鮮やかな色でディテール表現にこだわりたい

「鮮やかな色でディテール表現にこだわった印刷物を作成したい」「コスメ関係の印刷物なので細部の色表現にこだわりたい」「美術本を作りたいので色味を実物にできるだけ近づけたい」「商品の貴金属や時計をできるだけイメージアップしたカタログを作りたい」といったような印刷ニーズ場合は、スクリーン線数が175線の通常のオフセット印刷では、満足できる印刷物はなかなか作れません。少なくとも300線を超える高いスクリーン線数で印刷する必要があります。

CTP化によって、小網点の配置を変えて濃淡を出すFMスクリーニングが容易になり、アナログ網点の欠点であった印刷時に発生するモアレ(※1)やロゼット(※2)を無くすことができました。またFMスクリーンは小網点であるため、インキの盛りが抑えられて色が重なるところが、鮮やかになるというメリットもありました。このように、FMスクリーンは基本的にはモアレが発生せず、しかも微細部分の再現性にも優れていますが、未だに主流ではありません。

それは、アナログ網点では規則的に網点が配置されていて地が平滑に見えたのに、FMスクリーンでは、モアレやロゼットが発生しない小網点の部分がランダムに配置されるために、地がザラついて見えてしまうからです。

また、印刷中にブランケットやローラー上にインキが残ってしまうパイリングといった、FMスクリーン特有の問題も残っているために、広くオフセット印刷に採用されるには至っていません。FMスクリーンでは場所による色調の変動が起こり、印刷管理が難しくなるからです。

FMスクリーンの欠陥を補い、アナログ網点を越える「The Favorite」

そこで新しいスクリーン(網点)として考え出されたのが、円形のAMドットを細かい同心円状のリング(二重まる)に分割した「The Favorite」という手法です。これはAMの持つハイライト部の滑らかさとFMの利点を併せ持つスクリーニング技術で、より鮮やかで高品位な印刷ソリューションを実現しています。

FMスクリーンのようにインキの付着部分が小さくてドットゲインが少なく、彩度も高くでき、しかも規則的に並んでいます。モアレ・ロゼットもほとんど目につかない手法です。(下記の図参照)

ノーマルなドット(左)とFavoriteのドット(右)

ノーマルなドット(左)とFavoriteのドット(右)

例えばアナログの50%の網点の場合には、画線部は上図左のように一つの塊になり、インキが盛りあげられるのに対し、同心円網点では細線で構成されるのでインキの盛りも少なくなり、FMスクリーンと同様にインキの使用量が減らせられます。

この特殊網点は、レタッチ後の画像を専用のRIP装置で処理して、CTPで刷版に描画することで作られ、普通のオフセット印刷で刷ることができます。それにワークフローもオフセット印刷と同じですから、コストも従来通りで変わりません。

「The Favorite」の主な特徴は、「印刷機上の安定性が高い」「高濃度印刷が可能で彩度が高い」「滑らかなハイライトの階調が可能」「ロゼッタやモアレを低減し、高いディテール表現が可能」「インキの使用量が少なく、乾燥時間が速い」と、いったことが挙げられます。

彩度を向上させるインキ付着の仕組み

また色が重なる場合には、アナログ網点では、さらにインキが盛られますから(左図)、合わさった色の明度は下がってしまいます。しかし、同心円網点Favorite(右図)では、重なってもインキの盛りが少ないので鮮やかさが保たれると同時に、同心円の抜けている白地部分では色が重ならずに色が並置になるので、明度が下がらずに混色ができます。

テストでは、通常175線のアナログ網点と比較してFavoriteスクリーニングは、シアンで11%、マゼンタで14%、イエローで9%程度彩度が向上したという結果が出ています。

画線部は下記の写真のように同心円の細線になることで、印刷のベタ濃度が変動しても網点部分のドットゲインは変動が少なく、必要なベタ濃度を出しながら印刷機上の画像の安定性が高く、管理のやりやすい網点になります。そのために後日、印刷を増し刷りしても品質がばらつくことを抑えられます。

プリプレスから印刷まで一元管理することが重要

Favoriteスクリーニングの印刷条件は、アナログ網点である通常のオフセット印刷と同じで構いません。しかもクライアントにとっては、同じ印刷料金で高精細印刷ができるのがメリットです。しかし、ドットゲインの管理の仕方が異なるために、プリプレスから印刷までのトータルなマネジメントができていて、印刷機も常に同じ状態を維持するようにメンテナンスがされている必要があります。ですから、プリプレスから印刷まで一元管理できる印刷会社に、Favoriteスクリーンによる印刷を依頼することがポイントになってきます。

応用分野

階調が滑らかで彩度の高い高精細印刷が安定した状態で行えるので、画像再現にこだわりのあるデザイナーやカメラマンなどクリエイティブの仕事をしている方がFavoriteスクリーニングを指定されることが多いといわれています。

写真集や美術本の制作に適していますが、50%以上の色が重なるところでも階調が安定して出せて、ディテールの再現が良いので、とくに古美術を扱った印刷物で威力を発揮します。またアナログ網点では悩みが多かった繊維の質感が重要なアパレル関係では、モアレ・ロゼッタが8割は削減され、薄地部分も滑らかに表現されます。人の肌を美しく表現し、ビンの透明感を求める化粧品関係でも評判を得ています。

デジタルカメラの高精細化とともに、さらなる高画質の印刷が要求されていて、この新しい網点構造の出番も多くなるでしょう。

(※1)モアレは規則的なパターンが2つ以上重なった時に発生する第3の模様のことで、網点印刷では色ごとに角度が異なるために重なったところが目立つとか、繊維のような規則性のある絵柄に色が滲んだようなところができてしまうなど、アナログ網点では避けようがない問題でした。

(※2)ロゼットとは、色の異なる網点が円環状につながって花のような模様が出てしまうことをいい、本来は絵柄が滑らかであるはずの場所にもムラが感じられるようになるものです。モアレとロゼットは画質を落とす大きな要素でした。

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