プロのものづくり集
フォトレタッチ(画像処理)

高品質なデータ作成だけでなく、印刷物に付加価値を与える

フォトレタッチとは、写真 (イラストも含む) をパソコンに取り込み、Photoshop等の画像処理ソフトを使ってデータを加工・修整し、適正な印刷用の画像データにすることを言います。

印刷業界では画像処理として一括りにすることが多いですが、画像処理となりますと、手描きのイラストなどのアナログ媒体をスキャニングし、デジタル化する作業全般を指すことになります。フォトレタッチはデジタル写真の画像処理・加工になりますから、画像処理の狭義ということになります。

写真は、商品価値を一目で伝える力を持っており、印刷物の中で重要な役割を担っています。写真の完成度の高さが商品の完成度を表すことにもなりますから、フォトレタッチによる写真の加工・修整は、不可欠であり大切な作業となります。

今日では、画像処理ソフトを購入すれば誰でも写真を加工・修整できる時代になりました。しかし、モニター上で高品質な画像を作り上げただけでは商品として成り立ちません。印刷物になって初めてその価値が表に現れます。また、Webサイト制作においてもフォトレタッチの技術が求められています。ですから、フォトレタッチでは製版・印刷の後工程のことを考えて、クライアントのニーズに応えていくことが求められます。つまり、印刷物に付加価値を与える印刷用データを作成するノウハウが必要になります。それが行えて初めてプロのレタッチャーと言えるでしょう。

例えば、若者とお年寄りの顔では、その表情を修整するにしても年齢に合わせてレタッチ作業しなければなりません。また、ルポルタージュの写真であれば、誌面のムードを反映した修整が求められます。つまり、雑誌のイメージに合ったものが要求されるため、レタッチャーはそれを汲み取るスキルが求められるわけです。

DTPで印刷物のデータを制作するのであれば、入稿されたRGBデータを、必ずCMYKデータに変換しなければなりません。しかも、印刷データにするために適切な変換が求められますから、製版・印刷工程を熟知していることがポイントになってきます。

主なレタッチ内容

レタッチャーと呼ばれる人は、ポスター、広告、ファッション誌、カタログなどの写真を扱いますが、単なる修正に留まらず、不都合なモノが写っていれば取り除く、あるいは別の画像を合成することもしますから、クリエイティブな作業と言えるでしょう。
「トーン調整」「修整」「合成」の3つが主な仕事になります。

【トーン調整】

  1. 写真全体の色、明るさ、コントラスト
  2. 肌の色合い調整、背景の色などの調整
  3. 製品の色など見本に近づける調整
  4. 部分的な焼き込みや覆い焼き作業

【修整】

  1. 周囲や写真の中の不要物の削除
  2. 肌や製品の質感修整
  3. キズやダメージの修整

【合成】

  1. 撮影が難しいもの同士の合成
  2. 特定の箇所のみを別のカットから合成
  3. 写真同士をつなぎ合わせる合成
  4. 写真とイラストの合成

重要なのは入稿される元画像

フォトレタッチのスキルがいくら高くても、元原稿である写真の品質が悪ければ、画像修整には限界があります。
いまや商業印刷の写真のほぼ100%がデジタルカメラで撮影され、デジタル写真として入稿されてきます。デジタル写真のクオリティーはデジタル化した瞬間に決まると言って過言ではないでしょう。広告や雑誌全面を飾るような写真の場合は、高解像度で撮影され、より高精細なデータとなります。
高解像度データをレタッチする場合は、データ容量が大きくなりますから、パソコンのスペックはそれ相当のものを使う必要があります。製版会社のレタッチの現場では、高解像度データに対応したワークフローを構築していますから、安心して任せられるわけです。

作業で自由度が高いRAWデータ

レタッチャーにデジタル画像を渡すときの画像形式は、出版社や印刷会社などの独自のルールに則った画像形式で、データを入稿します。独自と言っても、画像形式はRAWデータかJPEGデータ、あるいはTIFFデータの3つに集約されます。RAWデータとJPEGデータの最大の違いは生データの色数になります。RAWデータの6870万色に対してJPEGデータは1670万色ですから、その差は歴然です。JPEGデータは、非可逆圧縮方式と言って画像の圧縮効率を高めますが、保存すればするほど画像が劣化する特徴があります。
ただし、RAWデータに関しては、カメラメーカーが違いますと、データは別仕様となり、現在のところメーカー間の互換性はありません。カメラごとの専用の画像処理ソフトを使わないと、写真を見ることも画像処理を行うこともできません。
ですから、RAWデータを読み込むためには専用ソフトが必要になりますが、メーカー以外からRAWデータに特化したソフト「Adobe Lightroom」や「SILKYPIX」といったソフトが発売されていますから、それらのソフトをインストールすれば、RAWデータを読み込み、JEPGデータと同様に画像処理を行うことができます。
RAWデータを扱うのは、フォトグラファーや画像のプロの方だと思いますので、アプリケーションに大きく左右されてしまう部分を人任せにするのは危険です。そうせざるを得ない場合は、打ち合わせやテストをしてからにしましょう。
では、JPEGデータでの入稿は控えるべきかと言いますと、そうではありません。JPEGデータは軽くて簡単に扱える利便性があります。高画質を要求しない印刷物や、写真の掲載サイズが小さくて写真点数が多いカタログ類には適していると言えるでしょう。

レタッチャーのスキルを活用する

レタッチャーの立場としては、デジタル一眼レフカメラで撮影した場合の画像形式は、元データの状態であるRAWデータを受け取り、現像時にPSD (Photoshop) 形式に変換してレタッチを行うのが理想と言えるでしょう。それは一般的なJPEGデータからでは難しい画像修整が行え、自由度の高いレタッチが可能となり、レタッチャーとしてのスキルが最大限に発揮できるからです。
RAWデータは重いという理由で敬遠されがちですが、最近は16GBや32GBといった大容量のカードの登場や、パソコンのハードディスクが1TBや2TBと、大容量のデータを処理する環境が整ってきましたので、以前のように大容量データだから扱えないという問題は皆無と言えるでしょう。

レタッチの現場ではPC環境が大事

画像の色調補正が満足できる仕上がりになっていても、いざ、別のモニターで見たクライアントが「色がおかしい」と言ってきたらどうでしょうか?
レタッチのスキルがいくら高くても、正しくないモニターのままでは全く意味をなしません。ですから、制作からクライアントまでモニターの基準を作って、その基準に揃える「モニターキャリブレーション」が求められます。カラーマネージメントを構築しておくことが何より重要になってきます。
しかし、パソコンのOSの調整機能などを使って目視でキャリブレーションすることは避けてください。というのは、人の目は直前に見ていた色や周囲の色に影響しやすく、正確に色の絶対評価を行うのはほとんど不可能だからです。キャリブレーションセンサーやキャリブレーションソフトを使って、数値的に正確にキャリブレーションを行うことがポイントになります。レタッチの現場では、そんなPC環境もしっかりと整えていますので、安心して仕事を依頼することができます。

後工程の印刷のことを考えて製版・印刷会社にご相談を

レタッチのみの仕事を依頼される場合でも、例えば、製版・印刷工程を経て作成するフォトブックとなると、レタッチを専門にしている制作事務所よりも、製版会社にまずは相談されるのが良いでしょう。印刷・製本までのワークフローを構築していることが多く、さまざまな面からアドバイスを受けることが可能だからです。
いまやフォトレタッチの仕事は、ポスター、広告、ファッション誌だけではなく、雑誌・書籍、カタログ、パンフレットなどさまざまな印刷物で不可欠になっています。小規模の出版社や雑誌社では低コスト化を考え、社内でレタッチを済ませたり、場合によってはカメラマンの入稿データをそのままリサイズし、レイアウトしただけで印刷されるケースもありますが、より高品質な印刷・出版物を制作するためには、写真を印刷用データとして適切にレタッチする必要があります。是非とも製版・印刷会社にご相談ください。

お問い合わせ先:城北製版株式会社株式会社ミカド

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