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(162) 豊国印刷株式会社

MIS「ミライズ」を構築し、社員にコストや利益に対する意識が芽生える

取締役
岡田 秀樹

MIS(Management Information System=経営情報システム)は印刷経営を「見える化」する重要なシステムである。だが、既製品では自社の経営に合わない、使いづらいなどが生じて、コスト削減や収益アップにつなげるために導入したのに、利用されないケースが少なくない。豊国印刷(株)では、自社に適した独自のMIS「ミライズ」を開発し構築している。運用して1年、社員がコスト意識や粗利益を考えるようになってきたという。岡田秀樹取締役に「ミライズ」について取材した。

豊国印刷株式会社
本社:東京都文京区目白台3-29-18
http://www.toyokuni-insatsu.co.jp

売上と原価を「見える化」し、粗利益を出していくことを追求

豊国印刷(株)はコミック、書籍、雑誌の出版印刷を中心に、業務展開している講談社グループの印刷会社である。同社が「ミライズ」を構築するに至ったのは、「売上の数字にこだわるのではなく、いかに適正な粗利益を確保するのか。そのためには何をすれば良いのかを明確にしたかった」と岡田取締役は言う。

仕事に掛かるコストや1つ1つの仕事の利益はどうなっているのか。どうすれば改善できるのか。また、自社の強み・弱みは何であるのか。これらを解決するために、MIS「ミライズ」による仕事の「見える化」に取り組むことになったという。

同社では「見える化」の目指すゴールとして、受発注情報の一元管理で、1受注別・工程別損益を出せるシステムにして、社員が売上と原価を把握し、粗利益をいかに出していくかをわかりやすくすることを掲げた。根底には「社員にコスト意識や業務改善意識を持ってもらい、今以上に利益を身近に感じるための組織にしていきたかったわけです」。

そこで、①アワーコストの算出。②集計分析マトリクスの設定。③標準化した受注・発注単価表の作成。④受注担当者・発注担当者の役割分担の整理。⑤データ・システムの統廃合。⑥MIS開発をプロジェクト化し、開発概要の決定。以上のことを推進していった。

とくにポイントになるのが、どのようなマトリクスで集計分析すれば良いのかという点。「書籍、コミック雑誌、コミック単行本、その他雑誌、その他の5つのジャンルに分けて、それぞれの工程ごとに集計分析することにしました」。

つまり1受注別・工程別損益をもとに、セグメント別に集計・分析を行うわけである。その算出方法は『売上-原価(外注費+社内原価)=粗利益』となる。これを算出するためには、社内原価のアワーコストを明確にすることが不可欠になる。

そこで、基本構造では、受注と発注の単位が異なることから、1受注内に複数の発注を持てる構造にした。受注伝票や発注指示書を作成するにあたり、各自の役割分担・責任範囲を決めて、それに沿って作業を進行させることになる。それぞれにチェック項目を設けて、担当者が仕事を完了したらチェックを行い、次の工程に仕事を回すというものである。

「大事なことは、ミライズの運用を社員に徹底することでした。採算性を上げることの大切さ、「見える化」による稼働率の改善・コスト削減などの業務改善を、訴えていきました」と、その真意が次第に理解されるようになったという。

「項目を入力することを習慣化することです。入力すればそれで完了というのではなく、業務改善に繋げていくことが大事なわけですから、そこをきっちりと社員全員に理解させることが求められます」と、入力の必然性を明確にし、目的意識を持たせることが重要だと説く。

指示書・伝票類は、通常の印刷会社では紙に書いて(出力して)手渡すケースが多いが、それでは仕事の中身が当人同士しか分らず、進行が分断されやすくなる。また、文書は重複しやすくなり、非効率的である点を指摘する。「とにかく入力は1回で済ませて、全員で情報共有して、指示書や納品管理伝票類は全て一元化することが大事です」とのことだ。

運用して約1年。社員の間にコストや利益への関心が生まれてきたとのこと。稼働率改善による内製化、外注費の適正化、利益率の低いジャンル分析など、制作工程の見直しが進められている。「対前年同月比の数字が出てくるようになったので、月次業績の検討会を開催し、システムのさらなる利便性の向上にも努めていきたい」とのことだ。

項目の入力は1回で済ませて、一元管理の運用を習慣化すること


集計分析マトリクスのイメージ図


1受注内に複数の発注を持てる構造にした受注伝票

掲載号(2014年10月号)を見る