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(219) 倉敷印刷株式会社

中国語DTPを中心に高品質な多言語組版で顧客のニーズに応える

制作課係長
平田 信一

今日の印刷会社は、独自の強みを持ち、差別化を図っていかないと経営を維持していくのが困難になっている。倉敷印刷株式会社は中国語・韓国語など外国語組版を得意とし、文字中心の単色刷り書籍からフルカラーの印刷物まで、組版から製本までのワンストップサービスを展開している総合印刷会社である。同社はDTP において独自のノウハウを築き、外国語の書籍関連の印刷物に注力してきた。特に中国語の書籍印刷・データ処理を得意にしており、確固たる顧客を獲得し高い信頼を得ている。今日、外国語印刷が訪日外国人の増加によって注目される中で、高い品質を信条とする倉敷印刷のDTP ワークフロー並びに制作状況はどうなっているのか。営業部3課課長の武井利之氏と制作課係長の平田信一氏に取材した。

倉敷印刷株式会社
本社 : 東京都墨田区錦糸4-16-17
TEL:03-6658-0031
http://www.kp-print.co.jp

中国語のパイオニアとしてWindowsの四声付きピンインフォントを開発

倉敷印刷株式会社は、独自のDTPワークフローを構築しているのが特徴である。データの入稿から編集・校正・組版までの統合出版環境を提供する「InPeria」を開発し、ブラウザを通じて編集作業を行うことができるようになっている。

「ある程度組版のフォーマットが決まっている辞書などに関しては、お客様と事前にテキストデータの作り方で打ち合わせをして、送っていただいたテキストデータを、当社でレイアウト見本を作って提示します。レイアウトが決まれば、Webページを作るのと同じ感覚でスタイルを決めて、テキストを自動的に流し込んで制作していきます。校正はPDFデータを顧客に送り、校正してもらいます」(武井氏)と、校正も紙ではなくデータで行うワークフローを構築している。

同システムでは、入力されたデータは全てXML形式で保存し、リアルタイムでデータベース化され、データの2次利用ができるようになっている。「InDesignで組んでいるデータもXMLデータに変換してデータべース化しています」(武井氏)とのことだ。ePubやPDFで出力したファイルを電子書籍端末で閲覧したり、eラーニングシステムと連携して問題集の書籍と学習ソフトのテキストデータを同時に作成したりすることも可能である。

同社は、30年以上にわたって中国語DTPに携わってきた経験を活かして、Windowsでの中国語や韓国語のDTPに関して確固たる組版品質と、高い満足度を顧客に提供するための研究を続けている。

「中国語の組版ではネイティブオペレータとして中国の方を雇っています。また大学で中国語を専攻していた社員が中国語を組んでいます。ですから、大学の先生が書かれた著書の内容を理解して編集作業ができますから、どのような組版にすれば読みやすくなり、先生など著者の要望に応えられるかを知っている点が当社の強みです」(平田氏)と、顧客から確かな信頼を得ていると言う。

また、同社は中国語DTPのために中国語のフォントを他社より早くから導入した経緯がある。今でこそモリサワパスポートに一部収録されているが、「漢儀(ハンイ)」という中国の標準フォントを中国からいち早く購入し使ってきた。

さらに、中国語の発音記号は「ピンイン」というアルファベットを使った記号で表現するが、「当社では独自にWindowsの四声付きピンイン書体を独自にデザインして作成し、当社のDTPワークフローに搭載し、『PINYIN Kurashiki』として3種類のフォントを提供しています」(平田氏)とのこと。実際に日本の大学から、このフォントを使って組版することを指示されることがあるという。このように中国語DTPのパイオニアとして高品質な組版を進めているのが、同社の最大の特長である。

中国語DTPに関しては実に多彩で、各種テキストブック、辞書、学会誌、研究論文、報告書、漢方研究書などの学術・教育関連の書籍から、取扱説明書、仕様書、会社案内、製品カタログ、解説書などの産業・貿易用のページ物印刷まで受注している。また、医師国家試験対策用学習参考書をはじめ、医学書などの書籍も多く扱っている。

「最近はベトナム語であるとか、東南アジア諸国の言語での印刷物が仕事として入ってくるようになりました。しかし、東南アジア諸国の言語になりますと、コンピュータシステム自体が変わってきて、日本語のコンピュータシステムでは仕事ができないことがありますから、当社としても対応できるものとできないものがあります」(平田氏)と、多言語組版の実情を語る。

「最近は出版社が書籍の付録にDVDを付けていても、DVDプレーヤーでわざわざ観る人は少なくなり、皆さんスマホで観るようになりました。ですから、映像制作でも書籍にQRコードを付けて、QRコードをスマホでかざすと、動画が再生されるという方向になりつつあります」(武井氏)と、映像コンテンツの制作もスマホに対応した制作へと変わりつつあるという。

「当社ではお客様の書籍データを提供いただき、低コストで電子書籍アプリを制作し、アプリ販売サイトへの配信まで請け負うサービスを進めています」(武井氏)と、電子書籍アプリ制作から配信までトータルにサポートしているとのこと。

同社では今後も、高品質で読みやすい外国語組版に注力し、顧客に付加価値の高いサービスを提供することで、一層他社と差別化を図っていく考えである。

「KURASHIKI FONT SAMPLE」を制作し、ピンイン書体を独自に提供
「KURASHIKI FONT SAMPLE」を制作し、ピンイン書体を独自に提供

電子書籍アプリ制作・配信サービスにも対応し顧客に付加価値を提供

同社が制作した中国語に関する書籍
同社が制作した中国語に関する書籍