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(226) 昌栄印刷株式会社

「Yoctrace®」技術の活用・デジタル細紋による高度なセキュリティ印刷を実現

営業本部 営業企画部長 クリエイティブセンター長
田渕 健一

商品券等の各種金券の偽造対策が求められている中で、このほど、昌栄印刷株式会社(山口正明社長)では富士ゼロックス株式会社が保有する一意識別技術「Yoctrace®」及びデジタル細紋を用いた複数要素認証を印刷物に付加することで高度なセキュリティ印刷を実現した。同社は1907年に有価証券印刷に特化した会社として創業し、民間初の紙幣を印刷したこともある精密 印刷のトップランナーである。このデジタルにおける偽造防止印刷技術によって、個々の各種金券、チケット、抽選券、宝くじ、各種通知物などにセキュリティ性を付加することができ、偽造品・模倣品の防止・流出を防ぐことが可能になった。営業本部営業企画部長・クリエイティブセンター長の田渕健一氏と同営業企画部営業企画課係長の青砥一博氏に、「Yoctrace®」技術とデ ジタル細紋を主としたセキュリティプリントについて取材した。

昌栄印刷株式会社
本社 : 大阪市生野区桃谷1-3-23
TEL:06-6717-1181(代)
https:www.shoei-printing.com

富士ゼロックス(株)のオンデマンドプリンターにて ビジネスローンチを目指す

昌栄印刷㈱が以前から考えていたことは、デジタル印刷が拡大している中で、何とかしてデジタル印刷にセキュリティを付加することができないかということだった。「それを実現する上で富士ゼロックスさんが開発した『Yoctrace®』技術を使えば、お客様の個々の商品に高度なセキュリティ性で偽造防止が実現できることになったわけです」と、田渕センター長は今回のデジタルセキュリティプリントサービスを確立したことを説く。

今後は、現時点で「Yoctrace®」技術の適用検証が完了している、富士ゼロックス(株)の『Iridesse™ Production Press』を活用した印刷物を用いて、これに偽造防止というセキュリティ性を付加したサービスを提供すべく営業活動を行っていく。同技術の仕組みは、対象となる金券等において、あらかじめ設定したエリアの表面を専用機器で読み込み、その画像情報をサーバーに登録。照合したい物体の同じ個所を撮影し、登録した画像情報と照合させることで、その物体を一意識別し、真贋判定を行うというものである。

今回の取り組みは、「プリンターでの出力物は本来デジタルデータの複版物であり、偽造防止に相反するものではありますが、そこにセキュリティ要素の付加を実現することができました。デジタル印刷機によって可変印刷が可能となり、しかも小ロットから印刷できるという特長を備えていて時代のニーズにもマッチしています。また当社が特許出願中のデジタル細紋はバーコードやQRコードのような自動認証ツールの一つとして位置付けられ、画像解析による高度な判断でセキュリティ性の向上に寄与しています。市場でのターゲットは高精度・難加工を施した製品を扱う各種メーカーや部品メーカー、また同製品を取り扱う販売店及び販売代理店、輸出入業者になります」と、青砥係長は話す。

特に「Yoctrace®」技術は、物体の表面に形成されたランダムパターンを画像処理技術で識別することで、物体固有のIDとして使用でき、意図して偽造することが物理的に不可能な点がメリットである。「従前、弊社が行ってきた印刷を、何か特別な印刷に変えたわけではありません。印刷物の表面に形成されるパターンを『Yoctrace®』技術を用いて判別することで、従来と同じ製品でありながら、一意識別の機能を付加することが可能になりました」(青砥係長)と言う。

デジタル細紋の仕組みは、細い線の集合体である細紋を印刷する際に、太い線と細い線を組み合わせて唯一無二の細紋を作るというもの。つまり、「数字の羅列を細紋に置き換えて印刷することができるわけですが、当然、可変印刷によって数字から細紋を形成してプリント用のPDFを書き出して、それを印刷することになります。ただし、複数を並べて見比べると構成のルールが分かってしまうため、いったん暗号化してランダムに出てきた数字を細紋の形状に落とし込むことになります」(青砥係長)。これによって、従来の偽造防止印刷とは異なる仕掛けを用いてセキュリティを担保することが可能になった。

細紋は、同社が創業以来培ってきた有価証券デザインの核となる技術で、これを応用したデジタル細紋は目視では同じデザインに見える精妙なデザインを施せる上に、円・楕円・多角形・棒状・コーナーなどの多彩な形状の組み合わせが可能になっている。用途は、金券やカード以外にも、商品のパッケージ本体や貼付するラベルやタグ、ギャランティーカードなど、偽造品・模倣品の流出を防ぐニーズの商品全てが考えられるとのこと。

同社では、セキュリティ印刷における仕組みの一つとして市場に提供していくとのことで、自社でデジタル細紋印刷を受注・製造していくだけでなく、オンデマンドプリンターを導入している印刷会社に同システムを提案していくとしている。

また、「Yoctrace®」を含め、データ解析における基本使用料などの費用が発生するものの、商品(印刷物)自体には特殊な印刷を施さないため、高額な費用が発生することがなく、導入のハードルが低いことも特徴として挙げている。

「海外では偽造品・模倣品が日本以上に横行しています。これは社会悪ですから、根源を断たなければなりません。その点からも弊社が取り扱う『Yoctrace®』およびデジタル細紋を活用した印刷物は有益性が高いですし、市場としても可能性があると考えています。最終的にはデジタルにおける偽造防止印刷の3段階要素として、金・銀・メタリックを用いて単純にコピーすることが不可能な目視での判断、デジタル細紋のような自動認証による判断、そして『Yoctrace®』のような解析による判断、これらのレベルが異なる要素を併用することでより安全性の高い印刷物を提供することが可能になります」(田渕センター長)と期待を寄せている。

同社のさまざまな偽造防止技術が施されたサンプル品
同社のさまざまな偽造防止技術が施されたサンプル品

金券以外にもさまざまな商品の偽造・模倣防止が可能なため、市場性がある

「Yoctrace®」技術で対象の表面を専用機で取り込む青砥係長
「Yoctrace®」技術で対象の表面を専用機で取り込む青砥係長