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(144) 田村 雅樹

世界一結果に責任をもつ通販コンサルティング集団を目指す

通販ビジネスの市場は拡大する一方であるが、そんな状況下、EC/通販企業に特化した事業支援を行っているのが株式会社ダイレクトマーケティングゼロ(東京都渋谷区)だ。同社は「全日本DM大賞」で金賞を含む通算19冠、「DMA国際エコー賞」を2年連続・通算3冠受賞するなど、ダイレクトマーケティングにおける戦略性と卓越したクリエイティビティが国内外に認められる企業である。代表取締役社長の田村雅樹さんは、通販企業大手のベネッセコーポレーションに10年勤務し、ダイレクトマーケティング専門部署でナンバーワンのレスポンス実績を上げたビジネスパーソン。そこで培ったノウハウを基に構築した独自の理論で、全100社以上のクライアントの通販ビジネスを成功に導いている。「印刷物でもダイレクトマーケティングの“方程式”に則って提案すれば、クライアント企業の売上増に貢献できる」と語る田村社長。ダイレクトマーケティングの特性、ノウハウ、そして印刷会社の目指す方向について話を伺った。

田村 雅樹 TAMURA MASAKI

PROFILE

1972年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、通販大手のベネッセコーポレーションに入社。同社でダイレクトマーケティング業務に従事し、ナンバーワンのレスポンス率記録を持つ。退職後、大手通販化粧品「エクスボーテ」のCRM事業部部長に就任し、2年で300%以上成長させる。2009年株式会社ダイレクトマーケティングゼロを設立。通販専門のコンサルティング会社として多くの企業の立ち上げ、立て直し、売上増に貢献。DMA国際エコー賞を2年連続・通算3冠受賞。全日本DM大賞では金賞受賞はじめ通算19部門受賞。著書「ゼロからはじめる通販アカデミー」(ダイヤモンド社)。 好評発売中の著書「ゼロからはじめる通販アカデミー」(ダイヤモンド社)。同書には通販ビジネスを成功に導くノウハウが詰まっており、本邦初公開となる門外不出の「数値指標」をはじめ、田村社長が20年間の通販人生を費やして会得した通販ビジネスに関わる「勝利の方程式」が網羅されている。通販ビジネスを成功させたい企業・個人は必読の1冊である。

EC/通販企業の専門医としてクライアントを改善に導く

——事業内容について教えてください。

田村大きく分けて2つです。1つが通販会社やネットショップに対しての事業コンサルティング。通販の立ち上げから新規顧客獲得の戦略設計、既存顧客の維持のCRM施策設計まで、総合的に支援しています。もう1つがそれに伴うコンテンツ制作。Webサイト、LP、販促メール、DM、会報誌などの紙媒体の企画・制作を請け負っています。

——御社のコンサルティングの特長について説明していただけますか?

田村簡単に言うと企業の「お医者さん」のような役割になります。最初にお客様の経営状態を把握する必要がありますから、顧客状況、商品、サービスなどのデータを入手してKPI(重要業績評価指標)を表してチェックし、それぞれの企業の健康状態を確認します。次に問題点を改善するための治療計画を立てます。つまり、事業計画です。悪い点を直すことがポイントになってきます。健康診断では当社が独自に項目を設定したフォーマットがありますから、それに記入しチェックを行うことになります。

——具体的にはどんなデータをチェックされるのでしょうか?

田村売上データ、顧客データ、商品出荷データなど、基本的なデータになります。そこからLTV(顧客生涯価値)であるとか、アクセス数に対して商品の購買率に当たる転換率や、継続率といった細かい数値を見ていきます。そして、同じ業界の経営がうまくいっている企業と比較して、数値がよくない項目を、ピンポイントで改善していくわけです。当社が他のコンサルティング会社と違っているところは、事例を沢山診ることができて、それらのデータを社内にストックしている点です。つまり、多くの“カルテ”を保有していることで、より的確なアドバイスを提示することができるわけです。

——では、改善はどのようにされるのでしょうか?

田村それがもう1つの事業である企画・制作になります。広告、Webサイト、各種販促媒体などが、購買数値を悪くしている原因になっているケースがほとんどですから、それらを数値が上がるコンテンツに改良していきます。事業計画や事業戦略へのコンサルティングから、そのアウトプットである企画・制作まで、一気通貫で請け負えるのが弊社の最大の強みであり、クライアント企業の結果に貢献できる理由ですね。

顧客のROIを最大化し費用対効果で応える

——ダイレクトマーケティングに特化している理由は何でしょうか?

田村マスメディアも結局は個の集まりですから、より精緻化して突き詰めていけば、マスメディアもダイレクトマーケティングになっていくという見方で捉えています。つまり、全てのマーケティングはダイレクトマーケティングであるということですね。ダイレクトマーケティングは数値化を原則としていて、企画を考えて、仕掛けた時にどんなレスポンスがあるのかがポイントになります。また、数値として現れることで、良くも悪くも結果に結びつきますから、悪いときは次の展開をどうすれば良いのか手を打ちやすいわけですね。しかも結果が一目瞭然ですので、言い訳がしにくいシビアな面もあるわけですが、その分、成果を出せば見返りも多くなります。私自身が、そんなダイレクトマーケティングの性質が好きなために、このビジネスに特化していると言えるでしょうか。

——企業として、一番大切にしていることは何ですか。

田村クライアント企業のROIを最大化させることが一番のテーマです。たとえば、広告会社だと広告を出稿したら、責任は果たしたことになります。それが宣伝効果に結びつかず、売上に貢献しなかったとしても、痛みを伴うことがないわけです。私は事業会社時代、それに対して歯がゆい気持ちでいっぱいでした。

だから、自分が会社を設立する時には、クライアントとなる企業と、成果や責任を共有し、親身になって支援する会社でありたいと考えたのです。

「ダイレクトマーケティングゼロ」という社名の「ゼロ」は、「コンサルティングをして成果がでなければ、料金はいただきません」という、設立当時のスタンスからきています。実際、そのほうが何倍も仕事が楽しいですし、私の性格にも合っているんですよね。クライアント企業と、目標を達成する喜びも、結果が出ない痛みも共有する、「世界一結果に責任を持てる通販コンサルティング集団」でありたいのです。

印刷会社はクリエイティブ分野で付加価値の高い仕事を

——印刷会社は顧客にどのような方針で臨むのが良いでしょうか?

田村印刷会社については、事業領域を広げていくことが生き残る道だと思っています。当社では、地方の印刷会社さんをコンサルティングしています。「印刷で儲けようとする姿勢を一旦止めて、前工程のクリエイティブな分野で上手く行って成果が出れば、代金をください」という営業展開を勧めているのですが、「所詮、印刷会社なので無理です」という答えが返ってきます。特別難しいことを言っているわけではないのに、新規事業に踏み込まないわけです。クライアントとしては、印刷会社がそこまで言うのであれば、一度任せてみようという考えになるはずです。印刷会社は価格競争に終始する印刷から、クリエイティブのような付加価値で勝負する経営体制を目指すべきだと思っています。

印刷会社の強みは、印刷機という機械設備を持っているという点で、マーケティング会社やコンサルティング会社、広告代理店よりも圧倒的に有利です。印刷から納品までワンストップで請け負えるのですから。既に設備コスト面で異業種に勝っていて、それだけでメリットがあるわけですから、印刷会社はマーケティングや制作のクリエイティブ分野に、もっと注力すべきではないでしょうか。大手印刷通販に印刷で相手をするのは難しくても、自社でできる範囲のクリエイティブな仕事で、クライアントさんの集客や販促、売上を伸ばすことに、主軸を置いた経営をしてほしいですね。そうすることによって、「どこの印刷会社に頼んでも同じ」というクライアントの見方から脱することができるはずです。最終的なアウトプットは印刷物であっても、そこに加わる価値が大きいものがあれば、お客様は必ずリピーターや得意先になってくれるはずです。

——なるほど。印刷会社がクリエイティブ事業を展開する上で心掛けるべきことは何でしょうか?

田村お客様と同じ立場になって、お客様の気持ちを理解できるようになることが一番大切ですね。印刷会社に是非とも止めてほしいことは「予算はおいくらですか」と尋ねることです。お客様は「予算に見合う印刷物」ではなく「成果」を求めているのですから。最初に予算ありきの考えをやめて、成果保証くらいの気概でお客様にアプローチして、クリエイティブな仕事で収益がでる経営に転換してほしいと思います。

クライアント企業のROIを最大化させることが一番のテーマです

———— 田村 雅樹

ダイレクトマーケティングゼロ
http://www.dmzero.co.jp

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