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GCJパーソンズ
(196) 溝畑 雄二
労働問題のトラブルは社会保険労務士に相談を
従業員に関する管理業務を代行する社会保険労務士(以後、社労士)は、働き方改革の実施に伴い、企業の煩雑な人事・労務の業務を支援する役割を担うものとして必要不可欠になりつつある。東京都文京区にある一般社団法人富坂産業協会(併設:社会保険労務士事務所富坂産業協会)で専務理事を務めている溝畑雄二さんは、労使間における労働問題の解決のあっせん手続きを代行できる特定社会保険労務士の資格を持っているパーソンである。また、従業員の健康を守り、健全な経営を目指す取り組みを支援する健康経営アドバイザー(上級)の資格も持っている。そんな溝畑さんに、社労士の立場から助成金申請や健全な労使関係を築く上で取り組むべきことなど、多角的に話を伺った。
溝畑 雄二 MIZOHATA YUJI
- PROFILE
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1952年埼玉県生まれ。1985年社会保険労務士資格取得。中小企業団体事務局において団体運営を行う一方、企業の人事労務問題について相談・提案等コンサルティング業務に従事。一般社団法人富坂産業協会(併設:社会保険労務士事務所富坂産業協会)専務理事。著書に『職場のコミュニケーション改善の処方箋』(日本法令・共著)、『労務トラブルの防ぎ方と「まさか」のときの解決法』(明日香出版社、共著)など多数。
就業規則を見直してきちっと整備することが大事である
Q 社労士の仕事について教えてください。
具体的には労働社会保険に関する書類作成、申請などの事務手続きから、従業員の雇用、賃金、安全衛生、福利厚生等に関する管理業務など、人事・労務全般の書類作成と手続き代行と、それらに関する相談・指導をする仕事になります。また、企業の資金調達となる助成金の申請業務も代行しますから、企業にとって必要不可欠なのが社労士と言えるでしょう。
Q 特定社会保険労務士の資格を持ってらっしゃいますが、社労士との違いは何でしょうか?
特定社会保険労務士は、労使間の労働問題を未然に防止したり、紛争の解決手続きに関与したりします。つまり、不当解雇、パワハラ、セクハラなどの労働問題が発生した場合に、個別労働関係紛争解決促進法に基づいて、都道府県労働局が行うあっせん業務の手続きを代行することが認められているのが、特定社会保険労務士です。一定の講習を受けて試験に合格しなければ、「特定」にはなれません。
労働問題の案件は増えつつあります。昔の事業主は、従業員を使ってやっているという意識が強かったため、問題が生じて、にっちもさっちもいかなくなってから相談に来られていましたが、今日の事業主は、トラブルの未然防止という観点から、会社に内在する問題点やその解決方法を求めて相談に来られることが増えており、事業主の考え方にも変化が出てきています。
Q 長時間労働のトラブルで相談を受けられた場合、どうされるのでしょうか?
まずは就業規則を見させてもらいます。就業規則がきちっと整備されているのかどうかを調べ、おかしい点があれば指摘して変えていくことを促します。しかし、就業規則だけを見てもダメですから、労働実態を見て、長時間労働でトラブルがあるのであれば、どこに問題があるのかを見つけます。特定の従業員だけに労働が集中しているのであれば、その解決方法を探って、事業主に提案させていただきます。
助成金の申請は社労士を通じて正しく行うこと
Q ところで、助成金についてはどう思われますか?
厚生労働省が実施している雇用関係の助成金は種類も多く、実際に多くの企業が受け取っています。助成金はほとんどの場合返済する義務はありません。基本的には事業が終わった後で受け取る後払いになります。ただ事業主の多くは、申請すれば受け取れるはずの助成金を知ってか知らずか、申請しないケースが見受けられます。その点ではもったいないと言えるでしょう。社労士は助成金の種類や、その企業にとって必要な助成金は何か、申請する際のアドバイスから実際の申請代行まで行いますから、助成金について知りたい場合は社労士に相談されるとよいでしょう。
Q 助成金の申請で注意しなければならないことは何でしょうか?
いろいろと不正受給の問題がありますので、申請される場合は、当たり前のことですけど、事業主は厳正に適切に申請しなければなりません。従業員の賃金台帳を改ざんして多くの助成金を得ようとしたり、存在しない従業員をあたかも雇っているように見せかけたりして助成金を得ようとするのは、犯罪行為ですから絶対に行ってはいけません。
審査官は細かく審査しますし、調査が入りますので、不正を働けばいずれ発覚します。通常は社労士が企業に代わって申請を代行しますから、もしも、不正があった場合は、社労士が加担しているのではないかと思われてしまうのです。と言うのは、行政に申請する書類には、社労士が確認したことを示す代行印を押したものを提出するからです。不正受給が発覚しましたら、行政は社労士が不正を指南したのではないかと、当然疑いますよね。ですから、社労士としても不正がないかどうかをしっかりと確認しています。
事業主としても、助成金を申請する際は正しい申請ができるように社労士に相談されることをお勧めします。企業が正当に助成金を得るのであれば、その企業に相応しい助成金は何であるか、いろいろとアドバイスしてくれるはずです。
また社労士は、助成金だけでなくさまざまな手続きや労務管理、あるいは労使関係で相談に応じてくれますから気軽に相談してください。トラブルや悩みごとなどが発生しても、コトが大きくなる前に適切に対処してもらえるでしょう。
コミュニケーションを大切にして従業員の安全と健康を守る
Q 最近、労使間のトラブルで目立つのは何でしょうか?
いろいろあります。解雇や賃金・退職金の問題等々は今も昔も変わりません。ただ、問題の内容が複雑化しています。それと、労使間というよりも、上司と部下の間でのパワハラでしょうか。相談事例が増えていますね。パワハラやセクハラは結局受け手側の意識によるところが大きいのが問題で、指導・教育とパワハラの分岐点がいつも取り沙汰されます。微妙な問題で判断が難しいところがあるわけです。しかし、パワハラを受けていると本人が言っている以上は、やはりパワハラと判断されるケースが多いと言えます。
特徴は、有能な上司ほどパワハラをしてしまう点です。自分は仕事ができるものですから、部下に対してもそれが当たり前だと思って強要してしまうのです。有能な従業員ほどパワハラの問題を起こす危険性があると言えるでしょう。
同じ言動でも、どの相手に言われたかによってパワハラと感じたり、そうでもなかったりしますので、難しい面があります。相手との日常的な関係性によって、言われた側は受け取り方が違ってくるからです。ですから、いかに人間関係が大切であるかということですね。上司は普段からコミュ二ケーションをしっかりと取っておくことが重要だということははっきりと言えます。パワハラなどのトラブルを未然に防止するには、普段から挨拶を交わすことであるとか、上司が部下の顔色を見て、元気がなさそうであれば「どうした?」とか、声掛けをすることも大切です。別に他愛もないことで構いません。それと、仕事の打ち合わせなどでも、一方的に上司が命令するだけではなく、なぜこの仕事を任せるのかしっかり説明すること、部下の声に聞く耳を持つことも大事なことです。
上司はもはや仕事のことだけを考えていればよいという時代ではありません。もちろん、部下を評価する場合は、仕事の中身を見て評価することは大事ですが、部下への接し方をどうすればよいかということも勉強していかなければなりません。職場全体の雰囲気を向上させて、部下が働きやすい環境を作っていくことが大切です。
Q パワハラをそのまま放置してしまうことがいけないわけですね。
ええ。パワハラが恐いからと言って部下に声を掛けなかったり、あるいは逆にへりくだった言い方をしたりするのはよくありません。普段着のままの接し方で構わないと思います。一方で、指導・育成の必要がある時は自信をもって発言すべきです。
ところで、パワハラは得てして弱い立場の人にしてしまうという点が問題です。パワハラを受ける人は、納得できなくても反論することができず、上司から一方的に繰り返し言われるわけです。部下は反論できないまま内にこもってしまいます。そうなると、パワハラをしている側も、パワハラをしている意識がないままいつまでも執拗に続けます。いろいろなケースを見てきましたが、本人がパワハラをしているという意識を持ってパワハラをしている人はまずいません。指導しているとか、教育の一環として普通に言っていると思っている人がほとんどです。まずはパワハラをしている人にパワハラだと気付かせて、本人の言動を改めさせることが肝心です。
上司のパワハラは個人的な問題と片付けることはできません。それを放置していた事業主も、その責任を負うことから免れることはできないのです。
Q 事業主や上司は、考え方を改めるべきところはしっかりと改めることが大切ということでしょうか?
そうですね。「昔に比べると、いまの若い社員はヤワだよなぁ」という言葉を聞いたことがあると思いますが、でも、それを言っちゃおしまいなんですよね。昔のことを持ち出したところで何にも改善されません。いまのやり方に合わせていくしかないわけです。いまは「働かせてやっている」のではなくて、「働いていただいている」という認識を持つ必要があります。特に中小企業では従業員が辞めてもらったら困るわけですから。
また、今後は外国人雇用の問題も出てくるでしょう。規制が緩和され、どんどん外国人が入ってくると思われますので、外国人従業員に対する雇用対策も重要になってくるでしょう。
Q 障がい者の雇用も重要な施策になるかと思いますが··。
はい。障がい者の雇用についても対応していく必要があります。現在、民間企業の法定雇用率は2.2%で、従業員を45.5人以上雇用している企業では、障がい者を1人以上雇用しなければなりません。障がい者雇用に関しては、一定の条件を満たせば確実に助成金が出ますから、障がい者を雇われる際は助成金の申請手続きをされることをお勧めします。
それから事業主は、従業員が健康で安全に働くことができるように配慮しなければならない「安全配慮義務」があります。印刷会社さんですと、印刷機を扱っていますから、稼働している時の安全配慮義務は当然ありますし、皆さん気を付けてらっしゃると思います。しかし、問題は人間関係における職場環境の改善になります。先ほど申しました、従業員間のパワハラ問題も安全配慮義務の範疇に入ってきますから、予防や解決のための対策を講じないまま放置して、その結果従業員の健康を害した場合は、企業は安全配慮義務違反に問われることがありますので、普段から注意して人間関係を見ていく必要があります。とにかく事業主は普段から従業員を大切にして、働きやすい環境を作っていくよう心がけてください。
いずれにしても、中小企業では社労士に相談するケースが増えており、企業にとって社労士はなくてはならない存在だと言えるでしょう。労使間で何かトラブルがある場合は、社会保険労務士に相談してみてください。
———— 溝畑 雄二
