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(178) 関根 潔

営業はコンテンツを駆使したタブレットの活用を

株式会社インタラクティブソリューションズ代表取締役の関根潔さんは、製薬業界でイントラネットの構築など、会社の情報を有効活用するITの仕組みづくりに携わってきたパーソンである。転機が訪れたのはiPadが日本で発売された2010年であった。その機能に着目して同社を設立し、対面営業をサポートするITツール「インタラクティブプロ」を開発した。同製品はタブレット端末(以下、タブレット)に必要なコンテンツを登録していれば、営業担当者は顧客にタブレットを見せながら営業トークが可能となり、画期的な対面営業が行えるものだ。2016年12月にはタブレットによる営業手法を解説した著書『最強の営業部隊をつくる タブレットPC活用戦略』(幻冬舎)を発刊し好評を博した。関根社長に開発までの経緯、またタブレットによる対面営業のあり方について話を伺った。

関根 潔 SEKINE KIYOSHI

PROFILE

1965年岡山県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師免許取得。1990年日本ロシュ(現・中外製薬)入社。2001年ノバルティスファーマ入社。製薬業界初の製品情報サイト、4,000人超社員向けイントラネット構築に携わる。ITを使った営業効率化の仕組みを最前線で作り上げる。2010年株式会社インタラクティブソリューションズを設立し「インタラクティブ プロ」を開発提供。2010年厚生労働大臣賞、2014年MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)優秀プロダクト、2017年MCPC特別賞を受賞。著書に『最強の営業部隊をつくるタブレットPC活用戦略』(幻冬舎)。

有効に活用できるITの仕組みづくりに長年携わってきた

——御社の業務内容と「インタラクティブ プロ」について説明していただけますか?

関根弊社では「インタラクティブ プロ」が唯一の製品になります。タブレット、スマートフォン、PCのどれでもOSに関係なく稼働するプラットフォームをベースにしており、コンテンツの制作、登録を含めた総合的なサービスを事業にしています。コンテンツは、パワーポイントやPDFファイルがほとんどですから、お客様のほうで用意していただくことになりますが、当社でもコンテンツの制作は請け負っています。作ったコンテンツを簡便に登録することができますから、パワーポイントを作ることができるお客様であれば、自ら登録してすぐに操作することができるようになっています。もちろん、印刷業界の方々でもお客様からコンテンツ登録を簡単に請け負うことができます。

——御社を設立されるまでは、製薬業界で仕事をされてきたとのことですが……。

関根はい。以前、大手製薬会社に勤めていました。製薬会社の営業は基本的には病院や薬局などへのルートセールスになります。私は営業(マーケティング)を経験した後、別の会社に移って、4,000人を超えるイントラネットの構築、自社製品のWebサイトの制作、お薬相談やコールセンターの導入、ネット広告業務などに携わってきました。社内が保有している情報を、社員が有効に活用できるようなITの仕組みづくりの仕事をしてきたわけです。

「インタラクティブ プロ」は、1998年頃からスタートしたMR(医薬情報担当者)向けのイントラネットの仕組みを発展させて、持ち運べ、対面の中で活用できるようにした製品になります。1998年頃から2010年まで続けてきた仕事は、会社の中にあるコンテンツをいつでもすぐに取り出せるイントラネットを構築することでしたが、どうしてもできなかったことは、営業担当者がお客様と対面した時に、すぐに最適な情報を提供できるITツールの開発でした。それがタブレットが出現したことで、実現できると即座に思ったわけです。

製薬業界の垣根を越えて使いやすく高い評価を得るITツールに

——「インタラクティブ プロ」を開発されて製薬会社の反応はいかがでしたか?

関根やはり、その機能に着目していただき、導入していただいたお客様からは、営業効率が高まったと言われ好評を博しました。対話型ツールですから、営業担当者がドクターやMRの人たちと話し込む時間が増えたことで、お客様の満足度が高まったと聞いています。「インタラクティブプロ」は、製薬会社の営業が求めるITツールとして開発しましたから、市場(ニーズ)は元々ありますし、しかも誰も手を付けてこなかったブルーオーシャンの市場ですから、受け入れてもらえたわけです。今では製薬業界から伸展し、金融・製造業の各企業まで広がっており、40を超える大企業に導入されています。

——そうですか。業種によってタブレットの見せ方は違ってくるのでしょうか?

関根タブレットでの表示方法やデザイン、情報構造は、最初に開発したままの仕組みで、それを現在でも続けており、標準仕様になっています。一部のお客様を除いて基本的にどのお客様でも同じです。コンテンツのアップロードの仕組みも最初から用意しています。商品の説明をする際に、その商品に関連するより詳しい資料を予め作っていれば、タップしただけでその資料を開いてお客様に見せることができます。制作したコンテンツはリンクを組めば次々と表示することができるようになっていますから、非常に使いやすいという評判を得ています。

——今日では動画など付加価値の高いコンテンツが求められていると思われますが……。

関根はい。タッチパネルで動くようなコンテンツは、お客様にも分かりやすくて興味をもたれます。しかもインタラクティブな関係を築くのに有効であるということで増えていますね。動画コンテンツについても「Youtube」にアップされている動画をオフラインでも活用できるようにし、電波が届かなくても瞬時に表示できます。もちろん新規に制作してアップすることもできます。

また弊社では、高度なデータベースを使った業務アプリも開発していますから、コンテンツの1つとして業務アプリを導入することもできます。社内業務の効率化だけでなく、顧客管理も行えるようになっています。

「インタラクティブ プロ」を導入していただいているお客様は大企業が多いのですが、それらの企業では大量のPDFやパワーポイントのデータを登録している点が特徴です。「インタラクティブ プロ」の強みの1つは、企業が保有している大量のコンテンツをタブレット上で検索し表示したり、データの更新を素早くできる仕組みになっているところです。

コンテンツの制作で印刷会社は大いにサポートできる

——これからの営業は、タブレットを使ったITによる対話営業が重要になると思いますが……。

関根ええ。これまで営業は営業部門に任せきりで、営業担当者の能力に掛かっていたところがありました。でも、お客様の心を掴むには、会社の中にあるコンテンツという資産を、営業現場で即座に選んで見せることができるかどうかが鍵になります。その時に他の部門と連携して情報資産を用意できるかどうかが鍵になります。営業担当者が何もかも説明するのは困難ですし、限られます。頭の中の情報は断片的ですし、思い出せなかったり、不正確な情報であったりすることも少なくありません。しかし、お客様に求められた情報や有益な資料を登録していれば、それを引き出して即座に答えることができます。また、社内の専門部署の社員が営業担当に代わって説明するトーク映像を見せることも有効です。お客様にはより分かりやすいですし納得してもらいやすくなるでしょう。営業の現場では、もっと社内のさまざまな部門のナレッジを有効に活用すべきだと考えています。

要はコンテンツを社外に持ち出せて、お客様にその場で見せて説明し、情報を共有することができる点に、タブレットを使った営業の優位性があります。弊社ではお客様専用のサーバを用意していますので、サーバにコンテンツを蓄積していれば、ネットを介して引き出してくることも可能です。これからはITで営業を支援していく発想が必要ですし、これは全ての企業の営業に当てはまると思います。もちろん、印刷業界に携わっておられる営業担当者も同様です。

——さまざまな用途が考えられそうですね。

関根はい。弊社では製薬系の出版社のWebサイトの運用をサポートしていますが、出版物の二次利用であるとか、教育用途へ転用する時に、弊社の「インタラクティブ プロ」を導入して低コストで制作している出版社もあります。このようにデータを転用する際に利用しやすいのが弊社の製品の特長でもありますから、他の出版社でも活用していただけるのではないでしょうか。

——印刷会社はまさにコンテンツを作る側ですから、お客様をサポートできるのではないかと思います。

関根実は最も重要なのが、どのようなコンテンツを作るかということになります。より詳細な資料を作ってお客様に読み込んでもらいたい時は、DTPで作成する必要があるでしょう。それは印刷会社の得意とする仕事かと思います。デザイン性の高いコンテンツを求められた時も印刷会社の出番と言えるでしょう。コンテンツを作る場合は、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェースを重視したコンテンツを作成することが肝要です。会社の知的財産であるコンテンツを活かせるITツールを、いかにお客様に提供していくかが、コンテンツを制作する会社に求められる要素になるはずです。印刷会社の中にはそれを担えるノウハウを持っている会社がありますし、印刷会社が最有力候補になると思っています。それに、印刷会社自身の営業も、タブレットによるITツールを駆使した対面営業で行うことができれば、厳しい市場競争の中で活路を見出していけるのではないでしょうか。

いずれにしても、今後はタブレットを使った営業が普及していくでしょうし、それに関係するデジタルコンテンツを活用するビジネスも拡大していくと考えており、弊社も印刷業界の方々と協業していきたいと思っています。

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売れ行き好調の著書『最強の営業部隊をつくるタブレットPC活用戦略』(幻冬舎)

「インタラクティブ プロ」の製薬会社向けのトップ画面

「インタラクティブ プロ」の製薬会社向けのトップ画面

「カディンチェ株式会社」のWebサイト

㈱インタラクティブソリューションズのWebサイト
https://www.interactive-solutions.co.jp/

会社の中にある
コンテンツという資産を、
営業現場で即座に選んで見せることが
できるかどうかが鍵になります

———— 関根 潔