月刊GCJ
GCJパーソンズ
(195) 鈴木 潤
時間と場所にとらわれない新しい働き方で成長する
シェアオフィスに会社を構えて独自の経営方針でデザイン業務を展開しているのが、インクデザイン合同会社の代表社員 鈴木潤氏である。同社は東京都墨田区にある印刷会社 株式会社サンコーが上階で運営するクリエイター専用のシェアオフィス「co-lab 墨田亀沢 : re-printing」内にある。「クリエイターたちと共同スペースで仕事するのはコラボレーションしやすい。望んでいたことである」と話す鈴木代表。設備や事務コストの削減などメリットが多いシェアオフィス。合理的な考え方でフレキシブルな勤務形態を進め、会社を成長させている。マンパワー主体の小規模会社にはシェアオフィスは適しているのかもしれない。鈴木代表にシェアオフィスのメリットを中心に、経営に対する考え方を伺った。
鈴木 潤 SUZUKI JUN
- PROFILE
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1974年茨城県生まれ。印刷会社のデザイナーとして、上場企業を中心にコーポレートツールやIRツールのデザイン、ディレクションに15年間携わる。2013年「会社をデザインする会社」として、インクデザイン合同会社を設立。コーポレートツールのプロフェッショナルとして、上場企業からベンチャーまで、紙からWebまでビジネスに必要なデザインをワンストップで提供している。
HP:http://www.incdesign.jp
シェアオフィスは本業に専念できてコラボしやすい環境
Q 最初に貴社の事業内容について教えてください。
当社は会社案内、リーフレット、プレゼンテーション資料などの紙媒体のグラフィックデザインだけでなく、Web サイト制作、CI(ロゴマーク)、IRサイトなどのデザイン業務を多岐にわたって行っています。特にIR 分野、株主通信、アニュアルレポートなどを強みにしており、コーポレートツールのプロフェッショナルとして、「会社をデザインする会社」を掲げています。お客様は上場企業からベンチャー企業まで幅広く、ビジネスに必要なデザインをワンストップで提供しています。
Q こちらのシェアオフィスに来られる前は、どちらにいらっしゃったのですか?
足立区の北千住にある創業支援施設にいました。ただ、そこは入居期限が決まっていたので、移転先を探さなければならず、それでWebメディアで探していたところ、こちらの「colab墨田亀沢 : re-printing」が紹介されていたのを見つけました。クリエイター専用のシェアオフィスということで、ここしかないと思いました。移転したのは2016 年5月ですから、もう3 年になりますね。
Q 普通は自社専用のオフィスを借りると思いますが…。
マンションやオフィスビルなどで部屋を借りるのもいいのですが、それだと限られた空間になってしまうため、そこから他社と繋がって事業を広げるのが難しくなります。下手をすれば、社長が独善的に物事を進めてしまうようになりますから、それだけは避けたいと思っていました。それがシェアオフィスですと、同業他社やフリーランスの人たちがいますから、いろいろな価値観を見ながらコラボレーすることができ、また、常に新鮮な感覚で仕事に臨めるという環境を持てます。ですから、自分たちだけの空間のオフィスを構えるという考えは全くありませんでした。
もう1つは、デザイン業務に専念したいという考えもありました。部屋を単独で借りますと、受付業務、室内のメンテナンスや清掃など、他の業務も生じてきますから、仕事の効率が悪くなります。それがシェアオフィスですと、それらを全て運営者の方にやっていただけるので、自社の仕事だけに集中できると考えました。
Q シェアオフィス内の設備も使えるのもメリットでしょうか。
はい。ここには紙見本帳やコピー機もありますから、自由に利用することができます。設備を自社で所有していますと、リース代などいろいろと経費が掛かって、当社のような小規模会社にとってはかなりの負担になります。ここでは設備は使用した分だけの料金を払えばよいので、経費削減ができます。
何より、階下が運営されている印刷会社の株式会社サンコーさんですので、印刷を要する場合はすぐに相談できるので助かります。また、さまざまな設備を持っていらっしゃるので、制作で必要とする場合には便利です。
Q なるほど。「co-lab 墨田亀沢 :re-printing」では特にメリットが多いわけですね。では、あえてデメリットはありますか?
そうですね。当社はガラス張りの個室を借りていますから、外からいろいろな人たちが入って来た時に見られたりしますので、気が散ってしまうことはあるかもしれません。ただし、私自身は全く気になりません。スタッフもその点を分かって一緒に仕事をしています。
柔軟な勤務形態で人的投資のみに専念していく
Q 「co-lab墨田亀沢 : re-printing」に来られて従業員数が増えたとのことですが…。
現在7名になりました。会社としても移転してから成長することができました。というのは、他のクリエイターの方たちの仕事の仕方・内容をみて、感化されたと言いましょうか、当社としても新しい仕事にチャレンジしようという気持ちが出て、仕事の幅が広がったからです。それに、同じクリエイター同士サポートしやすいですから、お客様の仕事をコラボレートして取り組める点が大きいわけです。そこが「co-lab 墨田亀沢 : re-printing」を選んだ最大の理由であり、私が望んでいたことでもあります。
Q 貴社の勤務形態について教えてください。
従業員の出勤に関しては、本人の気持ちや考えによるところが大きく、かなり自由にしています。毎日出勤する人、週2日程度出てくる人、また地方に住んでテレワーク方式で仕事をされている人など、まちまちです。皆がここに出勤しているわけではありません。かなりゆるやかな勤務形態にしています。
このような勤務形態にしているのは、従業員にはそれぞれ働きやすい環境で仕事をしてもらいたいという気持ちがあるからです。子育てが必要な子どもさんがいるのであれば、通勤するよりも家庭で仕事をしたほうが面倒をみることができますからね。
Q 他社とは一線を画す独自の経営スタイルかと思われますが…。
仕事をする場所への拘りはありません。デザイン業務はどこにいても仕事はできますから、従業員が別の場所で仕事をしたいと言ってくればそうさせますし、同じ部屋、決められた場所で仕事をする必要はないと考えています。往復の通勤時間に何時間も掛けることは、会社としても本人にしても大変な負担ですし、無駄なことだと思っています。経営方針としては、基本的に人的投資に重きを置きたいと考えています。それもあって、オフィスに投資をしないわけです。結局、生産性を高めていくのは人の力以外にありませんから。
特にデザイン業務の場合は、高機能な機械を導入したからと言って、売上が伸びるとか、効率が上がるということはまずありません。人に投資して能力を伸ばしていくことに注力したほうが、会社は成長すると考えています。そのためにどうすれば従業員が能力を存分に発揮できるようになるのかを第一に考え、働きやすい環境を提供していく方針で、今後も経営していくつもりです。
Q 従業員間の伝達やお客様との打ち合わせは、どのようにされているのでしょうか。
従業員間の伝達はメールや電話で十分可能ですし、お客様との打ち合わせではビデオ会議も使っています。データのやり取りもネットを通じたり、メールで行ったり、即座に対応しています。離れていても不便は感じませんし、全く問題はありません。それにここは綺麗で広々としたスペースですから、来訪されるお客様は、良い印象を持たれます。
デザインを通じてより良い世の中にしていきたい
Q ところで、デザインされる従業員さんの仕事に対する評価は、どこに重きを置かれていますか?
基本的には定性的なところで判断して評価しています。特にデザイン業務は定量化しにくい分野ですから、あえて定量化しないようにしています。第一に評価するポイントは、仕事のアウトプットの質を見て判断します。質についてはお客様に認められるかどうか、あるいはデザインがヒットするのかどうかという点を重視します。どんなにセンスがよくても、またどんなに綺麗なデザインであっても、それをお客様が望んでいなければ仕事としては駄目ですから、お客様の要望をキャッチできているかどうかなどを見ています。
Q 独立して事務所を持ちたいと言う人が出てきたら、どうされますか?
もちろん、従業員には退職してほしくはありませんから、そのための施策をいろいろと考えてはいます。独立をしているのと同じような感覚で当社の仕事をしてもらったり、副業的な感覚で仕事をしてもらったりしても一向にかまいません。その辺りはかなり柔軟に対応しています。会社という組織の中で人を縛るようなことは反対です。フレキシブルな体制とゆるやかな繋がりの中で、お客様が求められている要望に沿って的確に仕事をしてもらうことを最も重視しています。仕事に関わる人全員が、ハッピーな気持ちになってもらいたいですからね。
Q 将来ビジョンについてお聞かせください。
デザインをしていますと言っても、「どのようなデザインですか?」と、尋ねられた時に、一言で説明しづらいものがあります。それを誰もが分かるようなサービス内容を作っていきたいと考えています。そうなれば営業するのも効率的になるかと思います。
また、当社の個室には「punk.」という文字を書いたポスターを貼っていますが、あれは「より良い世の中のために、中指を立てろ!」ということを示唆しています。通常、中指を立てる行為は相手を侮蔑する表現なわけですが、もちろんそういう意味で使っているわけではなく、従来の既成概念にとらわれずに、これからはどのようなことをやっていけば、良い世の中になっていくのかという問題意識を持って、いろいろなことにチャレンジしていくことを謳ったものです。そんなハッピーな世の中にしていく意味合いが含まれています。それで、あえて尖がった過激な表現にしてみました。
また、従業員が増えてきましたので、これまでは私が起点となって仕事を進めていましたが、それを分散化と言いましょうか、意思決定から実務までもっと効率的な組織にしていくことを考えています。

「co-lab 墨田亀沢 : re-printing」のフロア
———— 鈴木 潤
