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(135) 有田 昇

DMづくりのスキルを身につけて新規開拓を

日本リーダーズダイジェスト社でコピーライターとして活躍し、米国発祥のダイレクトメール(以下DM)のノウハウを身につけた有田昇さん。以後、45年近くにわたってDM制作に携わってきて、日本におけるDMの先駆者と言って過言ではない。1996年に有限会社アリゴーを設立してからは、DMコンサルタントとして多くの企業に制作ノウハウを指南しており、日本でのDM市場の拡大と売れるDMづくりで貢献してきた。「DMは販促として重要ですから、印刷会社もそれを再認識していただき、顧客(クライアント)に提案できるスキルを身につけてほしい」という有田さん。通販カタログだけでなく、あらゆる業種で活用されているDMは、今日、紙媒体だけでなくネットを駆使した複合的な戦略が求められている。販促・集客のレスポンス広告も含め、DMについて多角的に語ってもらった。

有田 昇 ARITA NOBORU

PROFILE

鳥取市出身。1968年大阪外国語大学(現・大阪大学)英語科卒業後、コピーライターとして日本リーダーズダイジェスト社に入社。その後、マッキャンエリクソン博報堂で数々のDMキャンペーンに携わる。1996年(有)アリゴーを設立し、多くの企業のDMを指導・コンサルティングしている。上智大学などでDM講義。全日本DM大賞審査委員などを歴任。日本DM協会理事。 著書に「実践一通のDMでお客様の心をつかむ法」「効果がすごいパワーDMの作り方」など(共に中経出版)。神田昌典氏との対談CD「誰も知らないDMの奥の手」はロングセラーになった。

「AIDAの法則」に則ってベネフィットを表現することがポイント

——通販などダイレクトマーケティング市場は毎年右肩上がりですが、セミナーや講演をされていて、やはりそのように感じますか?

有田テレビの通販CMにしても、インターネットの通販広告であっても、市場は拡大・普及しています。また、セミナーや講演会を開催しても、企業の担当者の方々が熱心で、いつも高い関心を持っておられるのを感じます。ですから、いまや商品やサービスを広報宣伝し販売促進していくためには、DMなどダイレクトマーケティングの手法なしでは考えらなくなっていると言えるでしょう。それだけ日本の市場においてもダイレクトマーケティングが浸透してきたということです。

—— では、紙とネットでは方法に違いはあるのでしょうか?

有田今日のDMは、ネット通販が盛んになっていることもあって、インターネットを使った複合的なDM戦略が求められています。「AIDA(アイーダ)の法則」に則ったレスポンス広告をつくる点では、紙もネットも違いはありません。注目(Attention)してもらい、興味(Interest)を持ってもらい、欲しい(Desire)と思ってもらい、そして実際に購買という行動(Action)を起こしてもらう必要があるわけです。チラシをただ郵送するだけではお客様からレスポンスは期待できません。ありません。この商品のどこが良いのか。そして、どんなベネフィット(消費者利益)をお客様にもたらすのかを表現しなければなりません。ベネフィットを具体的にわかりやすく伝えることが大事なのです。集客や販売促進が目的のレスポンス広告であれば、媒体が違ってもDMのノウハウはどれも同じように使えます。たとえネット上であっても、お客様をいかに説得し納得させて、商品を買っていただく気持ちにさせるか、それは紙と同じノウハウが使えるということです。ただし、マスメディアのTVやラジオなどのCMはレスポンスを求めていないものが依然としてあります。広告の中には企業や商品のブランドを消費者に認知させて、良いイメージを持ってもらって、いつか街中や店頭で見つけた時に買っていただければいいというものもあります。そんなブランド認知のためのマス広告はこれからも作り続けられていくでしょう。

——レスポンス広告の作り方には決まった手法があるようですが…。

有田ええ。レスポンス広告は、売上や集客などの結果を得ることが目的ですから、それを達成するためのダイレクトマーケティング戦略がポイントになります。まず、ターゲットをセグメント(絞り込み)し、ターゲットの特性に合ったメディア(媒体)を選定しなければなりません。ハガキ、封書、新聞広告・雑誌広告、折り込みチラシ、インターネット広告(電子メール、メルマガ等)、電話・FAX、テイクワン(持ち帰り用)広告、などの媒体を組み合わせて効果的にターゲットにリリースしていく必要があります。そして、媒体のリリース時期とタイミングも重要になります。それを間違えますと、レスポンス率がほとんどない状況となるので気を付けなければなりません。

レスポンス率を高めるために「オファー」の訴求も大事

——なるほど。計画を立てて作っていかなければならないわけですね。

有田はい。それと、DMの中にもレスポンスのことを理解しないで、目的を忘れてしまっているイメージ広告やブランド広告を作っているケースが目立ちます。それではお金をかけて作ったのに、レスポンスがないままで終わってしまうので広告が無駄になってしまいます。大事なことは前述しましたように、AIDAの法則に従い、ベネフィットを魅力的に表現していかなければならないということ。次にオファー(特典)も大事です。まず、オファーを明示し、そのオファーに注目してもらってDMの中身を見てもらう必要があります。そして、内容を読んでもらって、気に入ってもらい、最後に申し込みをしてもらう必要があるわけです。

これら一連の行為をしてもらうための手順で最後まで落とし込まなければ、お金を払って買っていただくことは期待できません。DMにはそのノウハウが戦略として立てられていなければならないのです。

とくに重要な役割を果たすのがオファーという特典提供です。これを付けると、必ずレスポンス率がアップします。通販会社で多いのが、お試し特典です。一定期間無料であるいは一定量を格安で提供する方法が採られます。そのようにオファーで注目を集めることは非常に効果的な要素になります。そして、オファーによって最初に購入した消費者のうちの何%を、定期購入者に引き上げられるかが問われるわけで、それがポイントになります。企業の商品によってその損益分岐点(BEP)は異なりますが、それぞれ一定数値のコンバージョン(引上率)を設定していて、その損益分岐点を越えた目標数値をクリアすることが求められてきます。

企業にとっては安定した定期購入者、いわゆるロイヤルカスタマーをいかに増やしていくかが最大の課題になってくるわけです。ロイヤルカスタマーになれば他社製品を使わないだけでなく、自社製品をホームページやブログ、口コミで勝手に宣伝してくれるようになります。そんなお客様は、企業としてはこれ以上ない上得意様ということになります。そんなロイヤルカスタマーには普通のカスタマー以上のおもてなしとして、特別の特典を与えていくわけです。つまり、お客様が次のお客様を紹介すればプレゼントを差し上げて、さらに紹介した人がお客様としてメンバーとなれば、紹介したお客様にはさらに特別なプレゼントを贈るというシステムを構築していくわけです。これはお客様が友達を紹介するMGM(メンバーゲットメンバー)プログラムと言われています。お客様を放っておくとただ離脱していくだけですから、お客様が次も買ってもらう固定客となるよう、システマチックに囲い込みをしていくことが必要なのです。DMではシリーズ戦略としてそれら一連のノウハウがあって、段階的に行っていく手法がありますから、それに沿って実践していくことがポイントになります。

——インターネットの普及で媒体がそちらへ傾いているように思えますが…。

有田確かにDMの代わりにメールでの訴求が増えていますが、それらは友人や知り合い以外からのものは、まず読まれずに捨てられてしまうケースが多いみたいですね。しかし、紙のDMはオファーが魅力的であればとりあえず開けて見ることはしますから、捨てられない可能性が高くなります。家のポストの中に、自治体や役所、企業から送られてくる納付書・請求書等の封筒に交じって、デザインの良いオファーのあるDMが入っていれば、目に留まりますから、開けて見たくなるでしょう。ですから、今は却って印刷のDMのほうが開封率が高くなっているのが現状です。

印刷会社はレスポンス広告のプロを目指してもらいたい

——制作コストが掛かるということで、紙のDMがかつてほど多くはなくなっているというのもあるのでしょうか?

有田そういうことも考えられますが、ジャンクメールが氾濫している現在に、デザインに優れた紙のDMが送られてきますと、開けて見たくなるものです。人は紙の手触り感を好みますし、デジタルコンテンツ時代の中で、紙には愛着と温もりを感じるものです。「捨てられないDM」「開けたくなるDM」、しかも開けたら読みたくなって欲しくなるDMが、これからも求められてくると思いますね。それは、知恵と工夫が詰まった紙のDMづくりのノウハウがますます必要になっていることを、物語っているのではないでしょうか。

——最近は顧客とコミュニケーションを図る動きが出ているようですが…。

有田はい。インタラクティブ・マーケットと言われて、双方向のコミュニケーションが重要視されていますね。一方通行のDMだけでなくて、メールやネットでお客様の声を募集して、それを誌面に記載する動きが出ています(テスティモニアル)。お客様の声を吸い上げて活用することは、宣伝効果を高める上で非常に重要です。他の人が実際に購入して使っている状況が、信頼感となってレスポンス率を上げて購入率を高めるわけです。

——では、顧客のデータベースが不可欠になってくるのでしょうか?

有田ええ。顧客のデータベース化は通販会社にとっては生命線です。ドラッカーは、企業の目的はモノを売るとか、儲けるとかではなく、「顧客の創造である」と言っています。企業からモノを買ってくれた顧客は少なくともその企業を認めたことになります。大事な点はお金を出して買ってくれて、お客様になってくれたという点です。そのことを忘れてはいけません。お客様を大事にして、次につなげていかなければなりません。一度売ったら売りっぱなしというのは、実にもったいないことです。

——DMにおいて印刷会社に求められるものは何でしょうか?

有田クライアントのDMづくりに対して、このようにすればより効果的であるということが言えるようなノウハウを身につけることではないでしょうか。クライアントの中にはまだまだDMの作り方やその重要性についてご存じない企業が多いですから、DMづくりを提案するスキルがあれば、売上を上げてもらえる印刷会社という意識をもたれて、クライアントからの多大な信頼感を得られることは間違いないでしょう。DMだけでなく他の印刷物や媒体でも制作を依頼してくるようになるはずです。ですから、印刷会社はDMづくりについて勉強して、スキルを身につけて、それをクライアントのDM制作に活かしていくこと大切です。ただクライアントに言われるままのデザインやコピーで作っても、それはDMの体をなさない普通の印刷物でしかありません。DMのノウハウを知って、それをしっかりと提案できる印刷会社は、クライアントを逃すことはなく、固定客になってくれるはずです。今日、DMやレスポンス広告のプロはまだまだ少ないのが現状です。レスポンスの取れるコピーやレターを書けることが大変重要になりますから、デザインも含めライティングのスキルやノウハウを身につけて、是非とも、DMおよびレスポンス広告のスペシャリストを目指していただきたいです。そうすれば新規開拓の道が開けてくると思います。

ジャンクメールが氾濫している現在に、デザインに優れた紙のDMが送られてきますと、開けて見たくなるものです。
DMづくりを提案するスキルがあれば、売上を上げてもらえる印刷会社という意識をもたれて、クライアントからの多大な信頼感を得られることは間違いないでしょう。

———— 有田 昇

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