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(194) 堀田 孝治

経験から考案した「7つの行動原則」で自己変革を促す

自らの経験を基に「7つの行動原則」を考案して、20代の若いビジネスパーソンを中心に企業研修を行っているのが、クリエイトJ株式会社 代表取締役の堀田孝治氏である。これまで1万人以上の受講者に「7つの行動原則」研修を行い、若手社員を“本気”にさせてきた。そのことが多くの企業から高く評価されている。堀田氏は「入社3年目くらいが、真に“独り立ち”できるかのターニングポイントです。その時にやるべきことをやっておかないといけません」と、若手時代の仕事への考え方、取り組み方が重要だと話す。また「7つの行動原則」を紐解くと、ベテラン社員にも必要なものだと分かる。「7つの行動原則」とはどういうものなのか、話を伺った。

堀田 孝治 HOTTA KOJI

PROFILE

1966年東京都生まれ。1989年中央大学法学部卒業後、味の素株式会社に入社。営業、マーケティング、総務、人事を担当後、広告部マネージャーに就く。2007年プロの企業研修講師として独立。「7つの行動原則」を考案し、大手企業を中心にさまざまな業種、職種の企業で、若手ビジネスパーソンを中心に研修を行っている。著書に『生まれ変わっても、この「仕事」がしたい』(ファーストプレス)、『自分を仕事のプロフェッショナルに磨き上げる7つの行動原則』『入社3年目の心得』(総合法令出版)。

大事なことは、仕事ができる自分を作り上げること

Q 若手社員を中心に研修を行っていらっしゃいますが、プロの講師になられた経緯について教えてください。

味の素㈱に入社して営業職で頑張り、成果を上げ、「仕事ができる」と思って本社に異動したのですが、壁にぶつかり、30歳の時に心身の調子を崩して9 カ月休職しました。復職後、自分の仕事を振り返りますと、いかに“しなくていい努力”をしていたかが分かりました。そして、失敗の本質を発見し、自己変革に着手し、人事部ではその持論をより専門的に磨きました。その後、広告部のマネージャーを経て、2007年にプロの企業研修講師として独立することにしたわけです。簡潔に言いますと、そのような流れになります。

Q 入社3年目くらいがターニングポイントであるとのことですが、その理由は何でしょうか?

3年くらい経つと、ひと通り業務を経験したことになります。私はこのタイミングで、「仕事とは何か」という本質を理解し、ビジネスパーソンとしての基礎、土台をしっかり構築することが大事だと考えます。実は多くの企業は、新入社員にビジネスの「マナー」や「知識」は教えますが、「仕事は何か」といった本質的なことは教えません。ですから一見同じ3年目社員でも、仕事の本質を身に着けている人と、そうでない人とに、大きく分かれてしまっているのです。3年目くらいのタイミングでそのズレに気づければ、修正はそれほど難しくはありませんが、私のように10年近く経ってからだとズレを修正するのは大変なのです。また、3年くらい経つと、異動などの外的変化も訪れるようになります。ですから、このタイミングで真の独り立ちをすること、つまり、「どこで何をやっても仕事ができる自分」を創り上げておくことが大事なのです。実際に「7つの行動原則」研修は、「私自身が3年目に受けるべきだった研修」を1つのコンセプトとして創っています。

Q なるほど。3年目には仕事の本質を理解しておかないと、方向性がズレて失敗するということですね。

ええ。「仕事の本質」ということをもう少し噛みくだいて言うと、「仕事という種目を、ちゃんと理解しているのか」ということです。例えば、今まで野球しかやってこなかった人が、サッカーをやることになった場合に、「サッカーとはどういう種目か」をきちんと理解していないと、野球のようにボールを手で扱ったり、一球ごとに監督の指示を求めたりしてしまうかもしれません。

同じように、「仕事とはどういう種目か」が分かっていない人は、いままで学校の勉強でやってきたように、例えば問題が配られるまでじっと待っていたり、上司に学校の先生のように正解を尋ねたりしてしまいます。このような方法をいくら重ねていっても、成果は出ませんし、周囲も自分にもダメージを与えてしまいます。これが、「しなくていい努力」なのです。

Q 「勉強」と「仕事」は違う種目であることを知ることが大事だと。

「勉強と仕事の違いくらい分かっている」と言う人も多いですが、研修の場で、「『勉強と仕事の違い』を具体的にたくさん書いてください」と言いますと、実際にはペンが動かないわけです。また、仕事での「思考と行動と感情」は、その「種目の捉え方」で全部決まってしまうのです。

例えば上司に相談をした時に、「君はどうしたいのか?」と逆に質問された場面で考えてみましょう。上司の役割を、「自分より知識も能力も高く」「分からないことを質問すれば、的確に教えてくれる」と、まるで学校の先生のように捉えている人は、「自分に聞くなんておかしい!」と考え、ストレスを感じ、上司に反発する行動をします。一方で「上司よりも部下のほうが各論の専門性は高い」「上司が判断できるよう、適切に導くのが部下」と捉えている人は、自分に質問して当たり前と考え、ストレスなど感じず上司に適切な提案をするのです。知識やスキルや能力が全く同じでも、このように「仕事という種目をどう捉えるか」によって、成果やレベルやストレスに至るまで、全てが大きく変わってしまうのです。

まずは「仕事のOS」を鍛え上げることに集中すべきである

Q では、仕事ができる人になるためには、何をすれば良いとお考えですか?

仕事をパソコンやスマホで考えますと、仕事ができない人は「アプリ」に解決を求め、業界の知識、商品知識、資格、コミュニケーションソフトなどを一所懸命搭載しようとします。そして仕事がうまくいかなくなると、さらに他のアプリを搭載しようとしたり、「自分のアプリに合った部署に異動しよう」と考えたりするようになります。しかし、仕事ができる人は、「OS(原則)」を鍛えます。どんなにいいアプリを搭載していても、使いこなせる「OS」が仕事に関係ないものであったりすると、いい仕事をすることができないからです。逆に「仕事用のOS」を創り上げていれば、どこであろうと、どんな仕事であろうと、最初は多少戸惑うことはあっても、すぐにいい仕事ができるようになります。ですから、仕事ができる人は、「あの仕事がしたい」「あの部署に行きたい」などとは言わずに、目の前の仕事を題材にして、20代のうちに「仕事のOS」を鍛え上げることに集中するのです。

Q それで、ビジネスパーソンであるならばインストール(体得) すべき「7つの行動原則」を、考案されたわけですね。

はい。仕事という種目にはどのようなOSが必要になるのかを考え、人が覚えられるのは7つくらいまでなので、試行錯誤しながら突き詰めて、「7つの行動原則」を考案しました。

1つめは「価値創出」で、仕事をする上で最も重要になります。次に、自分だけではなく「相手」から、今だけでなく「ゴール」から、部分からではなく「全体」から、「逆算」する行動が求められます。第3は「守・破・離」のステップで仕事を実践していくことです。根本的な問題への「てこ入れ」が第4になります。そして仕事では「品質もコストも」「自分も相手も」といった「両立」させることも大切になります。続いて、品質、納期、コスト、関係者の利害、他のリスクといったものを、「同時多面的」に考えた行動が求められます。最後が「自己選択」ですが、仕事とは選ぶ種目であり、結果が出た時に、「自分の選択の結果です」と言える人であるということです。

この「7つの行動原則」は、実際に個別に活用されるものではなく、それぞれ体系的で統合的な関わりを持ちながらビジネスの現場で実践されるものです。

Q この「7つの行動原則」に則った研修プログラムを、若手社員に研修されていらっしゃるのですね。

はい。「7つの行動原則」研修は2日間みっちりと行います。研修内容を全てお伝えすることはできませんが、最初の「価値創出」では、「あなたが旅館の下足番になったら、どうしますか?」というテーマを挙げて、価値創出のためにやることを書き出してもらったりします。

また、「7つの行動原則」を使ったビジネスコミュニケーションのトレーニングや、PDCAの回し方、そして具体的な手帳の使い方まで考えます。本研修では「勉強」はNGです。研修中も徹底的に「仕事」をしてもらいます。また抽象的なアウトプットも厳禁で、「自分が具体的に行動する」レベルで考え抜くのが特長です。

研修が終わった後に、参加者にアンケートをとりますと、「目からウロコだった」「しなくていい努力をし続けるところでした」と、答えてくれます。それは私にとっては嬉しい言葉です。

「7つの行動原則」を実践すれば生産性が向上する

Q 新入社員に対して、経営者や上司は最初、どのように接していけばよいのでしょうか?

「勉強という種目を一所懸命やってきたが、仕事という種目が全く分からない人」だと思って接してください。「こんなことも分からないのか」と怒らないでください。実際に分かっていないのですから(笑)。怒るのではなく、「仕事は何か」をわかりやすく伝えるところから始めてください。

例えば、同じ言葉でも、新人は全く違った理解をしている場合があるので要注意です。例えば「主体的」という言葉ですが、学校においては、「与えられた問題を一所懸命に解く」ことが主体的なのです。ですから、「主体的にやってくれ!」と言っても、「自分からやる」という行動はせず、上司が問題を与えてくれるまでひたすら待ってしまうかもしれません。

そのような「共通言語化」をしていくためにも、「7つの行動原則」を知っていただき、活用してもらえたらと思います。

Q 「7つの行動原則」は、入社3年目の社員だけでなく、ベテラン社員にも必要なものだと感じますが…。

ええ。「原則」ですから、誰でも、いくつになっても使えるものです。「7つの行動原則」を実践すれば、個人だけでなく、チームや組織の生産性が向上します。そして何より、仕事が楽しくなってきます。楽しみながら、IT、AIの時代に人がやるべき価値ある仕事をして、自分が望むキャリアを実現している・・・・ベテランの方のそんな後ろ姿が、若手社員にとっても何よりも大きなプレゼントになります。

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「7つの行動原則」について書かれた堀田氏の著書

「入社3年目くらいに、どこで何をやっても仕事が
できる自分」を創り上げておくことが大事なのです。

———— 堀田 孝治