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GCJパーソンズ

(183) 萩部 健次

顧客の売上を支援するマルチプロデューサー

東京都墨田区で印刷業を営む株式会社アダチファクトリーの萩部健次社長は、本業である印刷物の受注に拘らない経営方針でビジネスを展開している。経営理念は顧客の売上をアップさせることを目的に、顧客のビジネスを総合的に支援していくというものだ。さまざまな資格と要職に就き、マルチプロデューサーとして活躍する萩部社長。収益を上げられるのであれば、印刷ビジネスに固執する必要はないというスタンスだ。印刷物の受注が減少し業態変革が求められている印刷業界にとって、萩部社長の考え方は参考になるだろう。ラストレーション業界への貢献度は非常に大きい。そんな唐仁原さんに現在の仕事の内容やイラストレーターの現状について話を伺った。

萩部 健次 HAGIBE KENJI

PROFILE

1967年東京都生まれ。1987年〜1995年服飾資材の営業で8年連続売上No.1となる。2000年コスモプリンツ株式会社に入社し、広告事業に携わる。2001年有限会社安達印刷所に入社。2008年株式会社アダチファクトリーに組織変更し代表取締役に就任、現在に至る。内閣府の食の6次産業化プロデューサー、経済産業省のふるさとプロデューサー、その他多数の資格・要職に就いている。

商品の企画、製造販売、マーケティングなど総合的に対応

——顧客の相談に応じるコンサルティングを前面に打ち出されていらっしゃるようですが……。

萩部そうなのですが、本業はあくまでも印刷業です。印刷物や広告の制作のお話があれば、当然、請け負っています。ただし、印刷物や広告は、お客様にとっては売上アップに結び付けていく媒体に過ぎません。売っていく商品やサービスのあり方などが重要になりますし、いかに売上を上げていくかが問われます。そのためにどうすればよいのかを考えていく必要があるわけです。お客様は業界やビジネスの事情がそれぞれ異なりますから、当社ではお客様のご相談に応じ、ヒアリングを行って、問題や課題を解決していくことに重きを置き、売れるための支援をしていくコンサルティングに注力しています。お客様の目線で考えて、商品の企画・製造、販売支援・マーケティングまで総合的に対応させていただいています。

——なるほど。事業内容についてお聞かせください。

萩部当社の事業は広告印刷業が軸となっていますが、その他に農業を支援しながら商品開発のお手伝いをする事業、そして、地方創生と言いましょうか、地域活性化・町づくりのビジネスにも携わっています。この3つの事業が大きな柱になっています。

——農業支援に携わるようになった経緯について教えてください。

萩部以前、子供たちの自立支援の活動を行っていたことがありましたが、その時に自治体から食育の事業を始めてみないかと声を掛けられたわけです。それで食育事業を始めるようになりました。その後、(公財)東京都農林水産振興財団の専門家に推薦していただいたのを契機に、農業に従事している人たちの商品・販路開発の支援をし、“儲かる農業”にするためのお手伝いをするようになったわけです。そして、4年前には内閣府が進める「食の6次産業化プロデューサー」の資格を取得し、農業などの生産者の生産性や売上の向上、付加価値のある商品づくりなど、農業に関する課題を解決する仕事も始めました。また、経済産業省主管の「ふるさとプロデューサー」育成事業にも参画し、まちづくり全般を学んできました。そこで、地域の産物や商品の開発、販売支援、ブランド化などにも取り組んでいます。いまでは(公財)東京都中小企業振興公社、(公財)埼玉県産業振興公社、(公財)千葉県産業振興センターの専門家にもなって活動しています。結局、他の印刷会社さんと同じ印刷業だけを続けていたのでは価格競争で勝てませんから、独自の事業を見出して差別化を図っていく必要があったわけです。

——仕事はどのような方法で受注されるのでしょうか?

萩部いろいろな役職に就いていますから、その関係で紹介があったり、既存のお客様を通じて紹介があったりと、人を介して受注するケースが多いですね。ホームページを見て印刷物の制作で問い合わせがある場合は、ほとんどが相見積もりになりますから、結局、価格競争となってしまいます。ですから、ホームページだけで集客することはしていません。専門分野に特化することで、その分野にマッチすれば成約に結び付きやすいですし、また紹介をいただく場合も専門家として見ていただけるので、受注に繫がりやすいわけです。極端なことを言えば、印刷を捨てて違うビジネスで収益を上げてもいいじゃないかという考えを持っています。当社をコンサルティングの会社だと思っていただき、コンサルティングをしていく中で印刷物の受注に繋がっていければよいと考えています。

自社と顧客の“棚卸”を行うことで新しい提案が可能になる

——既存の顧客をもっとよく見ると言うことでしょうか? コンサルティングの仕方やコツについて教えてください。

萩部コンサルティングでは、お客様は何で困っているのかを知ることですから、じっくりとヒアリングを行い、お客様の言葉の中から困っていることを拾い出して、改善点をお客様に提示していくことが重要です。会社の強みはどこにあるのか、地域商圏がどのような状況にあるのか、最終的には会社が収益を生むためにはどうすれば良いのか、どのようにすれば同業他社に勝てるようになるのか、それらを提案していくわけです。経営者がやっていきたいことと現実を突き合わせて、経営者と共に考えていくようにしています。そして、収益を上げられる体制を支援していくことになるのですが、その手段が広告や印刷物という媒体になっているわけです。広告や印刷物を受注することを目的にしているわけではありません。要は経営者が自らそうしたいと思って動いていただくことが重要ですから、そのように促していくことがポイントになります。

——伺っていますと、柔軟な考えと発想でお客様に接することが大切なのかと……。

萩部そうですね。当社は「多能工」で仕事に臨んでいて、いろいろな角度からお客様に接するようにしていますし、また「多能工」であることをアピールしています。お客様にとってもアダチファクトリーが使い勝手の良い会社として認識していただければと思っています。ですから、広告印刷の印刷会社として見ているお客様、コンサルティング会社として見ているお客様、あるいは商品開発の会社として見ているお客様というように、お客様にはどのように見てもらっても構わないと思っています。お客様自身に決めてもらえればというスタンスですね。当社としてはマルチタスクにこなせるようにしていくというだけです。私自身はマルチプロデューサーとしてお客様に接し、とにかくお客様に収益を上げていただくためにはどのような支援が行えるのか、それに特化してお客様と向き合っています。

——印刷会社が従来の印刷業の枠を越えて新規開拓をしていくためには、どうするのがよいと思われますか?

萩部社長はじめ幹部、社員全員が、まず自分自身の“棚卸”をされることをお薦めします。どんな趣味を持っているのか、好きなことは何なのか、得意なことは何かなど、それぞれ公私にわたって全社的に“棚卸”をしてみることです。また、自社のお客様はどういうお客様が多いのか、お客様の会社とその社員さんの棚卸をしていくこともポイントになります。そうしますと、実際にもっと提案できる商品が見つかるはずです。各社にとって何が強みになるのかと言えば、お客様との信頼関係です。信頼関係があればこそ、今のお客様に掘り下げた提案ができるわけです。たとえ印刷の仕事がなくなっても、お客様との信頼関係が築けていれば、別の提案をして印刷とは違う分野で収益を上げることも可能になります。そのような考え方を持っていれば、自ずと業態変革に繋がっていくのではないでしょうか。

とにかくお客様に収益を上げていただくためには
どのような支援が行えるのか、それに特化します。

———— 萩部 健次