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(214) 大山 敬義

ネットを利用したM&Aサービスで中小企業を救う

コロナウイルスの感染拡大で売上が激減し廃業・倒産する企業が増えている。市場や顧客の動向で影響を受ける印刷業界も然りである。また、印刷業界に突きつけられている問題に後継者不足がある。事業承継する後継者がいないとなると、廃業の道を考えてしまいがちだが、しかし、中小企業でもさほど資金を要さずにM&Aで事業を継承できるようになってきた。インターネットを利用したM&A総合支援サービス事業を展開している株式会社バトンズは、国内最大級の成約実績を誇っており、中小企業のために低価格の手数料で専門家のサポートを提供し、安心で安全なM&A支援を行っている企業である。同サービスを構築した代表取締役兼CEOの大山敬義氏に登場していただき、同社の事業内容、印刷会社のM&A並びに事業承継について話を伺った。

大山 敬義 OHYAMA TAKAYOSHI

PROFILE

1967年神奈川県生まれ。立教大学社会学部卒業。91年株式会社日本M&Aセンターの設立に参画。同社初のM&Aコンサルタントになる。2012年常務取締役に就任。15年常務取締役兼総合企画本部長に就任。18年アンドビス株式会社(現株式会社バトンズ)の代表取締役に就任。19年日本M&Aセンター常務取締役兼総合企画本部長を退任。あらゆる業界のM&Aはじめ企業再生に伴うコンサルティングを手掛ける。著書に『社長!あなたの会社、じつは高く売れるんです!!』(すばる舎)など。

印刷会社のM&Aでも多数の実績を持つ

Q 今日までのお仕事の経緯を教えてください。

大学卒業後、間もなくしてM&A・事業承継で日本一の実績を誇る株式会社日本M&Aセンターの創業に参画し、以後28年間で100 件以上のM&A 案件の成約をさせていただきました。主に後継者難で困っている中小企業のM&Aによる事業承継の仲介、コンサルティングなどを手掛けてきました。2018年4月に日本M&Aセンターを辞めて、アンドビス株式会社を設立、翌年に株式会社バトンズに商号変更し、中小企業向けのM&Aサービスを展開しているところです。

前職でコンサルタントをしていた時代に、かなり手掛けた仕事が印刷会社さんのM&Aでした。お客様の中には株式会社日本創発グループさんがいますが、前の東京リスマチック株式会社さんの時からM&Aの支援に携わり、鈴木社長(現日本創発グループ取締役)とは長い間お付き合いをさせていただきました。また、三重県の株式会社アサプリホールディングスさんもお客様で、松岡社長とはM&Aでいろいろなお仕事をさせていただきました。その他にも印刷会社さん数社とお仕事をし、当時の業界再編成に立ち会ってきました。

Q そうなんですか。業界で有数の印刷会社のM&A の仲介やコンサルティングをされていたのですね。

はい。2012年に2冊目の本を出版した時に、実際にM&Aの仕事に携わった経験に基づいたものが良いと考え、印刷会社を舞台にした M&Aの物語本を出しました。ストーリーを通じてM&Aの考え方や方法を提示し、M&Aで事業承継していくことのポイントを伝える内容になっています。今日のM&Aでも十分通用しますし、印刷会社さんには興味を持って読んでいただけるのではないでしょうか。

Q これまで M&A は規模の大きい企業にしかできないというイメージを持っていました。

そうでしょうね。M&Aはフィーが高い印象がありハードルが高いと思われている経営者が多いのではないでしょうか。しかし、中小企業でもM&Aを実現して事業承継で救いたいという考えから、弊社ではインターネットを利用したM&Aマッチングサービスを開始したわけです。

このインターネットによるM&A 方式を知ったのは、私が 10年ほど前に渡米した時に知人に紹介されたのがきっかけです。当時、アメリカでは既に3万社ほどの売り手の会社が登録されていて、それを買い手が見て買いたい会社があれば手を挙げるというもので、M&Aの手続きは専門のビジネスブローカーが代行するという仕組みになっていました。アメリカでは「売れるか売れないか?売れればいいかな」と、割と気軽な考えで登録しています。しかも、工場だけとか、顧客を抱えている営業部門(ブローカー個人)であったりとか、一部分を売り買いすることが盛んに行われていて、それで成り立っているのです。そんなアメリカの実態を見て、日本でも同じような仕組みのM&Aサービス会社を作ろうと考えたのですが、日本ではM&Aだけでもリスクがあるのに、ネットを使ったサービスなど使えるはずがないという反対意見にさらされ、なかなか実現しませんでした。それでも試行錯誤を繰り返して6年経った2018年4月に、ようやく事業をスタートすることができました。

中小企業のためにできるだけ安価でM&Aの支援を

Q スタートに苦労されたわけですね。では、御社のインターネットを利用した M&A サービスの仕組みについてお聞かせください。

M&Aで事業承継されたい方、あるいは会社の後を継ぎたい(会社を買いたい)方は、まずは「バトンズ」に会員登録をしていただきます。売り手の方は売り案件を入力して掲載し、一方の買い手の方は売り案件を探してもらいます。会員登録しますと、財務情報の閲覧・M&A 交渉の開始・ニーズに合う新着案件の受信が可能になりますから、そこで情報を得て企業の買収を考える方がご自身で探すというシステムです。現在売り手の案件数は3,500 社ほどで、一方の買い手は10万人ほどいます(2021年1月末)。そして、売り手あるいは買い手が決まれば、交渉の仕方や手続きについては全国各地の1,800の専門家から仲介者を探すことも可能で、その場合にはその専門家に仲介手数料を支払っていただきます。弊社には、売り手の手数料は無料で、買い手は成約時に2%(最低報酬25万円)をいただくシステムになっています。できるだけ安価でM&Aが成約できるように支援させていただいています。

Q 後継ぎの現状についてどうお考えでしょうか?

後継ぎは全ての産業、企業に関わってくる問題です。現在日本に約381万の企業があり、このうち約275万社があと5年くらいで経営者の年齢が 70歳になると言われています。70歳はちょうど経営者の気力や体力が落ちてきますから、代替わりが必要になってくるわけですね。今までですと、その年齢くらいでご子息に後を継がせていたのですが、ご子息がいなかったり、後を継ごうとしなかったりということで、275万社のうち少なく見積もっても127万社は後継ぎがいない状況になっています。これは非常に由々しき問題で、あとわずか5年の話なんですね。

しかも、コロナによって深刻さが増しています。事業承継を諦めて、自分の代で廃業を考える経営者が増えていますね。コロナの影響で5年は持たないと判断し、今のうちに事業承継するか、会社を畳んで廃業するかのどちらかを選択するということになりつつあります。また、企業によっては売上が大幅に下落し、倒産に追い込まれたところもあります。このコロナは事業承継を加速させている要因になっています。

Q 印刷会社の事業承継についてはどう思われますか?

印刷機という非常に大きな設備投資をされているのが特徴で、輪転印刷機ともなれば億単位の借入があるでしょうから、億のお金を回収するために10 年、20 年は稼働させなければなりません。これまでは何とかなっていたわけですが、後を継ぐとなると、果たしてご子息にそれを任せられるかということです。ご子息にしてみれば、なぜそんな多額の借金を背負ってまで後を継がなければならないんだとなります。また、社員に後を継がせるにしても、そんな多額の借金を背負う社員などいるはずもありません。印刷会社のようなモノづくりの企業には裏側に多額の借金がくっついているために、後継ぎがほとんどいないのが実態です。

Q 確かに設備投資に伴う多額の借金がネックですね。印刷機を持っていない DTP 中心の印刷会社であれば話は違ってくるのでしょうか?

そうですね。デジタル印刷機1台にPC 数台という設備であれば、それほど設備の借金はないと思います。ですから最近始められた印刷会社は設備や土地の面で大きな問題にはならないでしょう。ただし、M&Aで会社を譲渡するのであれば、赤字経営であっては買ってくれませんから、まずは黒字化しなければなりません。

問題は何十年、二代三代と経営を続けてきた古い印刷会社さんです。今まで土地を所有し、その土地に工場を建てて事業してきましたから、工場や不動産の問題がのし掛かってきます。土地を売って借金を返すとなった場合に、長い間工場が建っていた土地は鉛や油性インキによって汚染されている可能性あります。売る場合はその土壌を改良しないと売れませんし、そのまま売ると法律違反になってしまうため、スティグマ(心理的嫌悪感)による減価を行うか、土地を改良するかのどちらかを行う必要が出てきます。このように、自前の土地に工場を持っている印刷会社さんの後継ぎは非常に厳しいものがあります。

媒体がデジタルに変わっても印刷業は貴重な産業である

Q 後継ぎがいないとなると、M&Aで何とかして事業を続けていくしかありませんね。

はい。中小企業の多くはM&Aで事業承継していくしかないわけです。ウチの会社なんて売れるの?という経営者の方が多いと思われますが、気づいていない価値がまだまだあります。これまで営業してお得意さんを持って経営を続けてこられたわけですから、買い手としては事業を引き継ぎ、さらに経営改善していけば、安定した売上を上げていける可能性があると考えるものです。そのために、まずは黒字経営にしておくことがポイントになります。そして真面目に経営をしていて粉飾決算や不正経理をしていないこと、企業価値を大きく毀損する簿外負債がないことなども条件になります。印刷業界ではDX化やIT化を進めている企業もあるでしょうから、そういったデジタル化、オンライン化に既に着手し業態変革を目指している印刷会社は買い手が見つかる可能性が高いのではないでしょうか。

Q 印刷会社は業態を変えるのが難しい業種で、それが M&Aでネックになっているのでは…。

そうですね。自分たちがこれまで成功してきた経営を変えるということは、実に難しいものがあります。でも、印刷の将来に可能性がないと思っているのであれば、M&Aで別の分野の会社を買えばよいのです。印刷会社同士が一緒になるのは果たしてどうなのか。経営がうまくいかないかもしれません。Web事業を始める場合に自社でできないのであれば、それに長けている会社を買うことも視野に入れてみてはどうでしょうか。印刷会社だからと言って印刷だけに絞った経営をしていくことに拘る必要はないと思います。

しかし、高 齢 の 経 営 者は、今さら新しい事業を始めるモチベーションや気力がありませんから、やはり世代交代をしていくしかありません。M&Aを進める理由の一つとしては、この世代交代が挙げられます。

Q 経営者の決断が求められているわけですね。

はい。経営は経営者自らが決めるものです。M&Aについて社員に相談したりするのは止めてください。最後まで責任を持つのは経営者ですから、相談といってリスクを分散するようなことはしてはいけません。M&A が決定し交渉が終わった段階で、社員に話して一人ひとりを説得していくことが大切です。

Q 印刷会社の経営者に向けて最後にアドバイスをお願いします。

これから印刷業に参入する大手・中堅企業はいないはずですから、その点で経営の仕方によって十分やっていける産業だと思っています。ネットの世界になって活字が減少するということはなく、媒体がデジタルに変わるだけで、むしろいろいろな著作物が増えている状況です。それに、現在では紙の方がむしろ貴重な媒体になっています。媒体が変わるだけですから、形を変えることを恐れてはいけません。M&Aも会社を売るということだけを見てしまうので恐れるわけですが、自社では分からないからという理由で、分かる人材や技術を持っている会社を買って業態変革を目指していく方法はアリだと思っています。こういう時期であるからこそ、経営者には決断してほしいですね。是非、当社のM&Aサービスを使ってみてください。

印刷会社だからと言って印刷だけに絞った経営を
していくことに拘る必要はないと思います。

————大山 敬義