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GCJパーソンズ

(197) 猪子 進

地域のグラフィックデザインを牽引し社会に貢献

香川県のデザイン業界を牽引している有限会社猪子デザイン研究室代表取締役の猪子進氏。1978年に同社を設立して以来、グラフィックデザイナーとしてさまざまな媒体制作に携わってきた。同時にデザインの普及とデザイナーの地位向上に寄与してきたパーソンである。近年はCI(コーポレート・アイデンティティ)の価値や理念を可視化するVI(ビジュアル・アイデンティティ)の仕事が主体になりつつあり、顧客のブランディングを支援するようになってきた。「クリエイティブの現場では、時間や予算、情報などが限られた条件の中でいかに精度の高いクリエイティブ表現を行うかが問われている」と話す猪子氏。地方のデザイン市場、デザインに対する考え方など幅広い観点から話を伺った。

猪子 進 INOKO SUSUMU

PROFILE

1952年香川県生まれ。71年第1回個展「幻想展」開催。72年二科展入選。78年有限会社猪子デザイン研究室を設立。四国で最初のタウン誌を発行。各種グラフィックデザイン、CI・VI制作、キャラクター制作などを事業展開。瀬戸大橋博シンボルキャラクター審査及び補佐デザインはじめ県内や全国の各種シンボルマークデザインに携わる。98年発起人として香川県デザイン協会を設立。81年並びに83年のラハチポスタービエンナーレ展をはじめ海外ビエンナーレ展に出品。

デザインは視覚に訴えるものであるためVIに注力する

Q 長年デザイン業界に携わってこられて、デザインへの取り組み方は変わってきましたか?

イラストレーターの山口はるみさんのエアブラシを用いたイラスト制作に影響を受けて、グラフィックデザインを本格的に始めたのですが、19歳で個展を開かせていただいたり、20歳で二科展に入選したりと、当初はアート志向が強く、ポスター制作などで個性を出していました。1978年に会社を設立してからは、四国初のタウン誌を発行するなど、グラフィックデザインを中心にさまざまなクリエイティブな仕事に携わってきましたが、時代と共にトレンドというのはあったように思います。CI制作であったり、Webサイト制作であったりと、その時代時代のトレンドや技術を取り入れて、会社案内、ポスター、カレンダー、パンフレット、パッケージ、CI、キャラクターなど、グラフィックデザインだけでなく、デジタル分野も制作し、幅広いデザイン業務を展開しています。

Q 最近はどのような視点を重視されていらっしゃいますか?

デザインは視覚に訴えるもので、中でも見えない力をデザイン化するVIの仕事は、分散したイメージを整理・統合し、新しい個性に集約するものだと考えています。そんな観点から、私たちはVIの仕事にも積極的に取り組んでいるところです。

Q 顧客や市場に向けてアピールされることもありますか?

昨年、会社を設立して40周年を迎えたのを機に、5月から6月の1ヵ月間、高松市内で「INOKOデザインの仕事展」を開催しました。これまで携わったポスター、ロゴマーク、VI計画、パッケージデサインなどから102点を選んで展示・紹介しました。お客様への感謝の気持ちと一般の人たちに私たちのクリエイティブな表現を見てもらいたいという考えで開催しました。自社のデザインをアピールしたり、ブランディングしたりすることも大切だと思っています。

この前、栃木県の建築会社がデザイン年鑑に載っている当社のデザイナーの作品を見られて、新会社の設立に当たってロゴであるとか、一連の媒体のデザインの発注をされてこられたことがありました。メールでラフデザインを見てもらってOKをいただき、スムーズに仕事に取り掛かることができました。ですから、デザイン年鑑やWebサイトを見て連絡をいただくこともありますから、いろいろな媒体を使ってPRしていくことは大切だと思います。

Q デザインに対する価値観は昔と比べて変わりつつあるのでしょうか?

かつては、デザインの価値を認めてもらえず、デザインは無料という認識が市場にはありましたが、近年はそういうことはなくなりつつあります。とは言いましても、印刷会社が入札しますと、デザイン料を低く見積もられる傾向がありますから、受注した場合のデザイン料の予算はかなり厳しいものがあります。クリエイティブ制作では時間や予算、情報などの限られた条件の中でいかに精度の高い表現を行っていくかが問われています。

香川県に限らず、地方ではデザイン料金はまたまだ低く見られていますから、薄利多売の感は否めません。ですから、雑誌などページ物のデザインレイアウトをレギュラーで安定受注できるようにしておくことは、事業を維持していく上で重要です。当社では長年、銀行の社内報のデザインワークに携わってきていますが、そんなお得意様は不可欠ですね。

媒体とWebでデザインをトータルで考える時代に

Q では、デザインの重要性は認識されつつあるのでしょうか?

パッケージ商品のデザインを考えるにしても、店舗や商品、流通など全体を考慮したトータルでデザインをする「ブランディング」が重要視されるようになりました。ですから、私たちデザイナーもブランディングの視点で仕事に取り組むようになりました。店舗などからブランディングに関するアドバイスをしてほしいという要望が多々あります。

Q インターネットの普及が、デザインのあり方に影響をもたらしたと思われますが…。

そうですね。会社案内を作るにしても必ずWebサイトとセットで作るようになりました。以前は、ロゴマークやパッケージの単体のデザインを依頼してくることが主流でしたが、顧客も紙媒体だけでなく、Webなどデジタルとの両面でデザインの必要性が分かってきたようです。ですから、コンテンツ制作でのデザインは広がりつつあります。私たちデザイナーはそれに応える必要が出てきています。

私自身はデザインを全体で見ていくアートディレクターの立場ですから、実際にWebサイトを制作するノウハウは持ち合わせていませんが、社内には制作できるスタッフがいます。さらに高度な知識やノウハウが必要になる時は、外部のWeb専門会社やフリーランスのWebデザイナーとコラボレーションして仕事をするようにしています。そのように普段のネットワークや交流を通じたブレーンがいますから、できない仕事はないです。ネットからの問い合わせは着実に増えていますから、私たちデザイナーもネットを使ってアピールしていく時代になったかと思います。

Q 若いデザイナーたちを見ていて感じることはありますか?

スタッフを募集し面接をしますと、女性のほうが男性より優秀だということを感じます。デザインの技能的な面もそうですが、今は女性のほうが元気があって仕事に対するモチベーションが高いです。男性は草食系と言いましょうか、女性と比べて仕事に対する意気込みや気持ちの面で見劣りしますね。男性にはもっと頑張ってもらいたいです。当社では市内の工芸高校からインターンシップを毎年受け入れているのですが、その高校は1クラス30名前後のうち女子生徒がほとんどで、男子生徒は2名ほどしかいないのが実情です。それを考えますと、男性のデザインへの関心が低いのかもしれません。時代の流れなのでしょうか。

動画などの立体表現が増える中でグラフィックデザインは基礎になる

Q 香川県は昔からデザインへの関心が高い県であったかと思いますが…。

確かにデザインの下地はあると思います。昭和時代に6期24年にわたって知事を務めた金子正則知事の功績が大きいと言えるでしょう。金子知事は芸術に高い関心を持っていて、香川県出身の芸術家である猪熊弦一郎と交流があり、アート面で影響を受けたと言われています。それで香川県内の建築や都市開発のデザインに熱心でした。当時は「デザイン知事」とも言われていて、知事の影響で県民にデザイン意識が備わってきたのではないでしょうか。瀬戸内国際芸術祭が成功を収めている要因の1つには、金子知事時代に育まれたアートやデザインに対する県民の意識が高まり、芽を出したのではないかと思っています。

Q 猪子社長も香川県のデザイン普及に尽力されてきたのではないでしょうか。

大したことはしていませんが、1998年にデザインを通じて広く地域社会に貢献するために発起人となって香川県デザイン協会を設立しました。当初は趣旨に賛同して200名ほどの会員が集まり立ち上がったのを覚えています。県内のデザインを盛り上げ、若い世代にデザインに興味を持ってもらい、デザインに携わってもらおうという趣旨で活動してきました。ただ、最近はリーダーシップを発揮して牽引していく人材が非常に少なくなったのを危惧しています。会員も年々少なくなっているのが気がかりです。

Q クロスメディア時代になり、グラフィックデザインの考え方、仕事の仕方についてはどうあるべきだと思われますか?

デジタルメディアが主流になりつつある中でも、紙媒体のデザインは依然として重要ですし、これからもなくてはならないものだと思っています。Webでは動画コンテンツなど動きがある表現が主体になりつつありますが、基本となるのは平面でのデザインがしっかりとしていることが大切になります。ですから、平面のグラフィックデザインでの経験は欠かせないものであり、これからデザイナーを目指そうとしている人たちには、是非ともグラフィックデザインに立ち返って、効果的で視覚的なデザインを追求していただきたいです。

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高松琴平電気鉄道株式会社 ことでんVI 計画

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うどん県 時間旅行物語ポスター

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SETO NO MEGUMMY『 瀬戸のめぐみ』

是非ともグラフィックデザインに立ち返って、
効果的で視覚的なデザインの追求を。

———— 猪子 進