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(201) 齋藤 正秋
オンラインコミュニケーションツールが働き方を変える
インターネットを通じて遠隔拠点と映像・音声のやり取りを行うWeb会議システム。インターネット環境とパソコンやスマートフォンなどの端末があれば、安価で簡単に利用できるオンラインコミュニケーションツールとして需要が増えている。メリットはなんといっても長距離移動の不要による時間の節約と、交通費・宿泊費など営業・出張に伴うコストが削減できることだ。会議だけでなく、さまざまなビジネスシーンで利用できることから普及しつつある。今回は、URLを共有するだけで接続できる「meet in」を提供している株式会社meet inの代表取締役 齋藤正秋氏に、オンラインコミュニケーションツールが伸展している背景や今後の働き方について話を伺った。印刷業界にとっても導入価値の高いシステムと言えるだろう。
齋藤 正秋 SAITO MASAAKI
- PROFILE
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1982年埼玉県生まれ。大学卒業後、完全成果主義の会社に入社。24歳で教育会社を起業するが、リーマンショックの影響で解散。企業の営業兼人事責任者、執行役員などで活躍。また、人事コンサルタントとして採用・教育面からは企業の変革指導を行う。株式会社アイドマ・ホールディングスが運営する「ママワークスペース与野本町」の責任者を経て、株式会社meet inの代表取締役に就任。2019年1月から1年足らずの間に1,000社以上の企業に「meet in」を納入。
URLを共有するだけで接続できる「meet in」を開発する
Q 御社は株式会社アイドマ・ホールディングスのグループ企業とのことですが、事業内容について教えてください。
弊社は2017年1月に設立し、オンラインコミュニケーションツールの開発、教育研修が事業内容になりますが、親会社のアイドマ・ホールディングスが開発したオンラインコミュニケーションツール「meet in」の販売が主な事業になります。実質的に営業活動を始めたのは2019年1月からになります。一般的にはWeb会議システムになりますが、最近は会議だけでなく、商談、面接、打ち合わせなどさまざまなビジネスシーンで利用できるようになり、オンライン化で需要が伸びています。そこで「オンラインコミュニケーションツール」と呼ばせていただいています。
Q 「meet in」を開発された経緯についてお聞かせください。
アイドマ・ホールディングスでは在宅ワーカーを2,000人以上抱えていて、在宅ワーカーの人たちの働き方を促進しているのですが、きっかけとなったのは、アルバイトで働いていた有能な女性が産休で出社できなくなった際に、本人の希望もあって在宅で仕事ができるようにしたのです。出社して働くのとほとんど変わらない質で働いてくれましたので、それで在宅ワーカーを増やすことになりました。しかし、やり取りがメールや電話だけでは、ニュアンスが伝わりづらい、お互いの反応が分かりづらいということで、最初は海外製のSkypeなど無料のWeb会議ツールを使っていたのですが、それだとセッティングしたり、使える環境にするまでに時間を擁し、使い勝手が悪かったわけです。簡単に接続できるツールもあったのですが、それは海外製の英字表記で、有料版に切り替えを要求する広告が常に画面に表示されるため、実情が分からない在宅ワーカーのお母さんは登録して使用料金を自ら払っていたりすることもありました。それでそれは使えないということになり、Webリテラシーのないお母さんでも簡単に使えるオンラインコミュニケーションツールが必要だということで、アイドマ・ホールディングスが自社用に開発したのが「meet in」でした。
Q なるほど。最初は自社専用のシステムとして開発されたのですね。
はい。自社開発ですから、「meet in」を実際に使っているお母さんから率直な意見が聞けるので、すぐに機能の向上を図れます。改良を重ねて、より使いやすいシステムに改善していきました。「meet in」の最大の特長は、いつでも、どこでもURLを共有するだけで接続でき、アプリのダウンロードやログイン・固定回線が一切不要という点です。
Q 製品化し販売していくことになったのはどうしてでしょうか?
開発した「meet in」が他社製品と比べても遜色がないばかりか、実際に弊社の在宅ワーカーのお母さんが使っている状況からも簡単で使いやすいこと、オンラインツールの市場が拡大している状況もあって、アイドマ・ホールディングスとしても自社製品を世の中に普及させていくことにしたわけです。それで「meet in」を販売するために、2018年の秋に製品化し収益化を図っていく事業に着手し、2019年1月から本格的に営業を開始しました。現在、弊社は私と正社員2人の3人だけですが、これまでに1,025社(2019年11月末現在)の企業に「meet in」を導入していただきました。
なぜ、3人でこれだけの実績を上げることができたかと言いますと、在宅ワーカーのお母さんとさいたま市与野本町のオフィスで働くお母さんたちに「meet in」の営業を全てお任せしているからです。一部の人たちは具体的な商談も行ってもらっています。その商談も「meet in」を通じて行いますから、お客様の企業に赴く必要がありません。さらに、問い合わせや困ったことがあれば電話やメールによるサポートもしています。このように潜在労働力を最大限に活かした組織体制を構築、固定費を抑えた営業を展開して、開発費に投資できたことで業績を急激に上げることができました。また、「meet in」の営業は、まさに「meet in」を使った営業になりますから、その場でお客様にデモンストレーションで見せることができて利便性をその場で感じてもらうことができます。お客様と繋がったところで資料を見せて、メモ書きをしてもらうとか、機能の利便性を即座に分かってもらえるメリットがあります。つまり、“実演販売”ができる点が他の製品にないところです。
働き方改革、東京オリンピック、インフラの整備などで普及は必至
Q Web会議システム自体は以前からあったわけですが、思いのほか、普及してこなかったのはどうしてだと思われますか?
日本ではお客様と実際に会って話をすることが礼儀であり、美徳として捉えられてきました。それ自体は日本の文化でもあったわけです。しかし、それがWeb会議システムのネックになり、普及の妨げになっていたことが考えられます。それと、以前でしたら声が聞き取れない、映像がモザイク状態になるといった品質の悪さによって導入が進まなかったことが挙げられます。そのような状況が続いていたわけですが、インフラの整備が進み、不具合がかなり解消され品質改善されてきたことが、今日の普及に繋がっていると思います。
Q このツールの市場動向はどうなっているのでしょうか?。
2019年の夏頃から、急速に問い合わせや関心の度合いが高まってきました。その背景には、3つの理由が挙げられます。1つは働き方改革が実施されるようになってきたことです。残業時間を削減しつつも営業成績は維持・向上させるという、短時間で効率的な営業の実現が求められてきています。そこでオンラインツールを使えば、移動時間や交通費を削減できるため、働き方改革のツールとして活用できることが分かってきたわけです。
2番目は、今年は次世代ネットワークの5Gのサービスが開始されますから、そうなりますと今まで以上にネット環境がスムーズになりオンラインツールがより快適に使えるようになります。インフラが整備されれば一層導入に拍車が掛かるようになるでしょう。3つ目としては、今夏は東京オリンピックの開催で、開催期間中は都内の交通網が麻痺することが予想されています。国としても東京オリンピック期間中はなるべく出社しないように推奨していますし、東京都でもテレワークを推進しています。そのため大手企業では在宅でも働けるようにするために導入を進める企業が増えてくるはずです。
さらに、2019年9月に発生した大型台風の際に出社できないという理由から、オンラインコミュニケーションツールの導入を検討する企業が増てきました。これらの理由から普及していくことが予想されます。
状況に応じてケースバイケースで使えばいい
Q 具体的にはどのような業務に使うことができるのでしょうか?
弊社の「meet in」に限らず、最近のオンラインコミュニケーションツールは、オンラインでの商談・面接・打ち合わせができるようになり、さまざまなビジネスシーンで利用できます。今までは遠隔地であったために会えなかった人でも、ネットの接続が可能になれば画面上で会えるようになります。印刷会社さんであれば、本社と工場間、あるいは本社と営業所間での会議・打ち合わせという社内ツールとして使えるだけでなく、得意先回りや新規開拓の営業でも使えるようになります。それによって交通費と移動時間を大幅に削減できます。
弊社では「meet in」の営業で「お客様と会わなくてよい」という話はしていません。要は、会わなくてもよい時に使うことでコストが削減できたり、時間を有効に活用できたりする場合にのみ、使っていただければよいのです。導入したから全て「meet in」で済ませる必要はありません。状況に応じてケースバイケースで使っていただければよいですし、ビジネスの機会を増やすツールとして考えていただければと思います。
また、経営者の中には営業は受けたいが、何度も営業に来られても困るし、押し切られて契約するかもしれないというリスクを考える経営者の方もいるでしょう。その場合に「meet in」を使えば、営業される側の都合で繋げることができて、いつでも遮断することができますから、営業を受けたい時に受けられるメリットもあります。
Q なるほど。受け手側の都合が生かされるわけですね。では、将来の働き方はどうなっていくと思われますか?
ほとんどの業務がオンラインで行う時代になっていくと考えられます。トヨタでは、本社機能においては既に自社のツールを使って、海外のグループ企業や取引企業との会議・打ち合わせをオンライン化しています。やがては他の企業も追随していくでしょうから、オンライン化に進んでいくことは間違いないと思います。
ただし、ビジネスがオンライン化していきますと、雇用面も変化してくるでしょう。仕事ができない人は淘汰されていくかもしれません。なぜかと言いますと、企業はこれまでは通勤できる人を雇っていたわけですが、オンライン化しますと、遠隔地の人を雇うことができるようになります。物理的な障壁で働けなかった人が働けるようになって、地方の有能な人材にテレワークで仕事をしてもらうことが可能になります。それは地方にいても有能な人であれば、オンラインで東京の企業で仕事ができるようになることを意味します。ですから、これまで企業に依存して働いている人たちは淘汰される時代がくるのではないでしょうか。
将来は、企業に仕事を依頼するのではなく、「○○さんにこの仕事をお願いします」というように、仕事ができる個人に依頼する社会になってくることが考えられます。それによって、有能な人に仕事が集まり、副業化が進むと同時に、個人のビジネススキルが重要視される世の中に変わっていくはずです。オンラインコミュニケーションツールは、働き方を変革する重要なツールになっていくでしょう。今後、ますます普及していきますから、是非とも有効に活用していただきたいと思います。
————齋藤 正秋
