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(132) 高橋 茂一

企業の成長にクリエイターの創造力は不可欠である

1984年に会社を設立し、今年で30周年を迎えた株式会社優クリエイト(東京都渋谷区笹塚1−55−7)の代表取締役・高橋茂一さん。クリエイターに特化した人材派遣・人材紹介事業で、広告から出版・印刷、Web業界等のさまざまな企業に、多くの人材を輩出してきた。 会社を設立したのは、前職で就職情報誌の編集をしていた頃、多くの経営者を取材する機会があり、経営の最大の課題が人材であることを再認識したからだという高橋社長。今では経営者の思いに応えるために、人材コンサルティングビジネスとして多角的な観点からサポートし、数多ある人材会社の中でも充実したスキルアップ・教育制度、企業と人材の出会い創出で、確固たる地位を築いている。 これまでの事業経緯と昨今の人材派遣事情、さらには来年4月施行予定の労働者派遣法改正などについて話を伺った。

高橋 茂一 TAKAHASHI SHIGEKAZU

PROFILE

1958年東京都生まれ。1980年明治大学卒業。大手就職情報誌会社を経て1984年5月、株式会社優クリエイトを設立。就職情報誌の出版および各種採用ツールの制作、業界イベントを行う。1996年クリエイター専門の人材派遣、人材紹介事業を本格的にスタート。業界に先駆けてITを活用した人材登録および管理システムを導入、独自のスキルチェックによりマッチングの信頼度を飛躍的に向上させた。3000社を超える派遣実績を誇る業界のパイオニア。

ニッチな人材採用ツールや就職情報誌の制作で市場開拓

——設立当初はどのような仕事をされたのでしょうか?

高橋大手就職情報誌会社の下請けの編集プロダクションとしてスタートしました。しかし、下請けは安定して仕事が入ってきても、どんなに頑張っても売上の上限は見えていましたから、会社を大きくするには新たなビジネスを創出していくしかないと考えました。そこで顧客から直接受注し、顧客の会社事情に合った採用方法のコンサルタント的な業務を始めたのです。具体的には個別企業向け業界イベント、入社案内の制作、映像制作などを中小企業に持ち掛けたのですが、当時、膨大な予算を組んで制作している会社が多かったものですから、低コスト化してもっと効果的な制作にしましょうと、提案したところ、それが功を奏して仕事をいただけるようになりました。つまり、大手企業にはできないニッチで新しい人材採用に関するビジネスを展開していったわけです。

——当時はバブル時代ですから、仕事はかなりあったのでしょうか?

高橋そうですね。小さな会社でしたが、次から次へと発注はありました。しかも、会社の人事部には大体、大手就職斡旋会社からしか営業マンが来ませんでしたから、当社が営業しますと、すぐに話を聞いてくれる状況でした。フォローの風が吹いていたのは事実です。ただし、当社でも受注が増えてきますと、社員の仕事も忙しくなってきますから、デザイナーたちの離職が絶えませんでした。辞めては次を入れるという繰り返しでした。デザイナーというのは職に対しての思いは強くても会社に対しての帰属意識は低いですから、続けられないと思ったら簡単に辞めていくわけです。同業他社でも同じように離職が多かったですね。当時、航空宇宙業工業会に働き掛けて、業界向けの就職情報誌も発刊していて、大手会社が扱わない分野の仕事を受注し、同業界からは高い評価を得ていました。

——大手会社が参入してこないニッチな市場に目を向けられたわけですね。

高橋そうなのですが、さらに事業を拡大しようと、自動車工業会にも働きかけて同様の情報誌の発刊を準備していたのですが、発刊直前にバブルが崩壊して大手企業が一斉に新卒採用を見送ることになったわけです。当社は発刊に向けて準備していたので、なんとか出版させようと頑張ったのですが、市場自体が存在しない状態となり、やむなく出版を中止することになり、膨大な経費が無駄になって結局経営が行き詰まりました。それが一因でリストラせざるを得なくなり、社員一人ひとりと話し合いをして、半分ほどの社員が退社することになりました。当時、終身雇用で社員を最後まで面倒みていくのが経営者であるという風潮があった時代でした。リストラする経営者は失格とみなされるほど、リストラに関しては厳しい見方が世間にはありましたね。

——それは大変な痛手でしたね。

高橋ええ。どこの人材会社も同様の事態に陥っていて、倒産が相次ぎました。当社は、これをきっかけに業態を変化させることになりました。

業界に先駆けてITを活用した人材派遣のビジネスモデルを

——その頃に人材派遣事業を始められたのでしょうか?

高橋はい。社内で就職関連の雑誌を制作していて、DTPオペレーターやデザイナーを抱えて、MacでDTPをするようになった頃です。これからはDTPが使えるデザイナーが求められることを実感したわけです。ちょうどインターネットの黎明期で、ワークフローがデジタル化に移行しつつありました。それでクリエイティブ分野の専門派遣会社として登録し、ホームページを作ってデザイナーの募集と求人企業を集めることにしたのです。ネット上で人材が登録できるような仕組みを作って、登録したデザイナーが次のデザイナーを紹介し、登録者が連鎖的に広がっていきました。それに並行して人材を求める会社も口伝えで増えていったわけです。 また、ホームページ上にマイページを作って、登録者一人一人と直接やり取りができるシステムを作りました。他の派遣会社はほとんどが電話連絡だった時代ですから、業界に先駆けてインターネット環境を整備し、メールでコミュニケーションできるようにしたことはエポックメーキングなことだったと思っています。募集コストが掛かる業種ですから、インターネットでかなりコストダウンが図れたのではないでしょうか。

——大手派遣会社にできないことに積極的に取り組まれわけですね。

高橋そうです。例えば、実技試験も行うようにしました。当時は業界では登録人材のスキルの状況が分らないまま派遣していたのが普通でしたので、採用して仕事をさせてみて使えない人材だったということが結構あったわけです。そんな顧客企業からの苦情に対処するためにも実技を把握してお客さまの会社に自信を持って派遣できるようにしたのです。社内でDTPを使って実際に作業をしてもらい、実技レベルを知って、人材ごとにどのパソコンを使っていて、どんなソフトウェアが使いこなせて、どの程度のレベルの制作ができるのかを明示したわけです。それによってお客様からの信頼度が非常に高まりましたね。

——クリエイターの重要性が高まってきていると思うのですが…。

高橋私どもはクリエイターが社会を元気にするという理念を持っていて、会社の成長にはクリエイターの創造力は不可欠だと考えています。ですから、クリエイターが社会に出る第一歩から自立支援まで事業を行い、どのような時代になっても、またどのような環境の変化が起きようとも、常に求められる人材を育てています。

——派遣クリエイターも優クリエイトの一員ですから、それなりの対応が求められるのでしょうね。

高橋クリエイターは主体性を持ち、自ら人生を歩むための経営視点を持つことが大切です。プロフェッショナルクリエイターとは、「ユーザーの視点に立って、独自の発想で最適なソリューションを提供できる人」というのが当社の定義です。そうなれば結果的に名指しで仕事が入ってくるようになります。私たちはそのようなクリエイターになるための支援を多角的に行っています。

——具体的にはどのような支援を…。

高橋テクニカルスキルを向上させるために、セミナー、座学、eラーニングを活用してスキルアップを図っています。セミナーでは自立に必要な知識や仕事への取り組み方、ロジカルシンキング、コミュニケーション力・プレゼンテーション力の向上などのスキルアップを支援しています。また、自立のために、新規取引先開拓や受賞歴促進のためのサイト運営、税務や法務などの実務的知識の習得方法セミナー、クリエイター同士の交流促進、また、将来はクリエイターのための共同オフィスの提供など、幅広い分野から支援したいと考えています。

クリエイターには派遣システムを上手に利用してほしい

——ところで来年4月から労働者派遣法改正が施行される見通しですが、御社への影響は…。

高橋率直に言いまして、当社にはとくに影響はないと思います。今回の改正のポイントは、規制緩和で人材派遣免許が届け出制となり、派遣会社が非常に増えたことが背景にあります。いかがわしい会社や実態のない経営を続けている会社を排除していく狙いがあるわけです。派遣が自由化されますと、2008年暮れに日比谷公園に職を失った派遣労働者たちが集まって「年越し派遣村」が設けられたことがありましたが、あれは派遣が自由化したことによる弊害だったわけです。会社は人件費削減のために派遣労働者を雇うようになり、経営が思わしくなくなると、使い捨てるように派遣労働者を解雇したわけです。元々、派遣というのは特殊なスキルを持った人材を沢山の会社でシェアしていこうというのが発想です。専門職だからこそ成り立っていたものです。本来、派遣した人はその仕事のプロフェッショナルであるはずなのに、派遣労働者が一色たんになってしまいプロとしてプライドもないがしろにされました。しかし、審議が進むにつれ、派遣という就業形態の必要性が再確認され、今回の改正にも反映されています。今回の改正は、一定の財務力も求められますので、適正に活動している人材派遣会社しか経営ができなくなります。その点で、登録する派遣労働者や顧客会社にとっても良いことだと考えています。

——御社の求める人材像は?

高橋一人一人か当事者として主体性を持って行動できて、自らチャンスを掴むことができる人になってもらいたいですね。これからは、自らが先頭に立って変化を起こせる人材が必要になります。そのような資質のある人材を採用して育てるようにしています。それには、新卒採用ですね。

◆印刷関連会社の皆さん。クリエイティブ業界限定新卒採用イベント「キャリフェス2015」に参加しませんか。ポテンシャルの高い学生と出会うチャンスです。制作・印刷・出版業界向けは4月22日(火)・5月22日(木)、新宿で開催。

クリエイターは主体性を持ち、
自ら人生を歩むための経営視点を持つことが大切です。

———— 高橋 茂一

株式会社優クリエイトのホームページ
http://www.y-create.co.jp/

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