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(193) 川田 修平
スマホで利用する電子地域通貨で地域活性化を担う
特定の地域内で流通する地域通貨が地域活性化の役割を担うということで、全国各地で導入が進んでいる。発行形態は紙幣形式やカード形式がほとんどであるが、まだ数少ないスマートフォン(以下、スマホ)のアプリ上で利用できる電子地域通貨を提供しているのが、株式会社フィノバレーである。現在、岐阜県飛騨高山地域の「さるぼぼコイン」と千葉県木更津市の「アクアコイン」で利用され、地域活性化に一役買っている。地域通貨が普及するためには、いかに地元の住民や店舗、企業に受け入れられるかに懸かってくるが、スマホの普及、キャッシュレス化が後押しとなれば、電子地域通貨が全国各地で拡がっていく可能性がある。低コストで導入できて利便性が高い同社の電子地域通貨プラットフォームについて、代表取締役社長の川田修平氏にその仕組みやビジョンなど、多角的に話を伺った。
川田 修平 KAWATA SHUHEI
- PROFILE
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1975年広島県生まれ。1999年慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、PwCコンサルティングでERPシステムのコンサルタント、ボストンコンサルティンググループで戦略コンサルタントとしてプロジェクトを推進。2015年株式会社アイリッジにて、営業と新規事業開発を担当。FinTech事業推進チームを立ち上げ、「さるぼぼコイン」「アクアコイン」などの電子地域通貨のプロジェクトを推進。2018年8月より株式会社フィノバレーの代表取締役社長に就任。
金融業界初の「さるぼぼコイン」を契機に電子地域通貨を推進
Q まずは貴社の電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」について教えてください。
「MoneyEasy」は、親会社の株式会社アイリッジに在籍していた頃に、電子地域通貨サービスを短期間で安価にスタートできるプラットフォームとして開発したものです。スマホのアプリとQRコードをベースにし、スマホでチャージから決済まで可能にしました。加盟店は初期投資や手間がほとんどかからないのがメリットです。特定の地域内で流通する地域通貨が地域活性化の役割を担うということで、全国各地で導入が進んでいる。発行形態は紙幣形式やカード形式がほとんどであるが、まだ数少ないスマートフォン(以下、スマホ)のアプリ上で利用できる電子地域通貨を提供しているのが、株式会社フィノバレーである。現在、岐阜県飛騨高山地域の「さるぼぼコイン」と千葉県木更津市の「アクアコイン」で利用され、地域活性化に一役買っている。地域通貨が普及するためには、いかに地元の住民や店舗、企業に受け入れられるかに懸かってくるが、スマホの普及、キャッシュレス化が後押しとなれば、電子地域通貨が全国各地で拡がっていく可能性がある。低コストで導入できて利便性が高い同社の電子地域通貨プラットフォームについて、代表取締役社長の川田修平氏にその仕組みやビジョンなど、多角的に話を伺った。
最初に消費者はスマホにアプリをダウンロードします。加盟店で支払いする時はアプリを起動し、支払いをタップし、お店のQRコードを読み取ります。商品の金額を入力すれば操作が完了し、お店側に支払いの通知メールが届くようになっています。
また「さるぼぼコイン」では、飛騨信用さんの窓口に来店する必要がなく、オンラインで決済できます。加盟店は飛騨信用組合で法人口座を開設する必要があります。加盟店同士では手数料を除いた金額を払い戻すことも可能ですが、直接コインで送金するほうが手数料も安いため、加盟店同士でのBtoBビジネスでは利便性があり、メリットがあると言えるでしょう。地域経済を活性化する仕組みと言えます。
Q 最初に導入されたのは飛騨高山地域だったそうですが。
2017 年に、岐阜県の飛騨信用組合さんから電子地域通貨導入のお話をいただいたのがきっかけです。飛騨高山地域に合ったシステムを共に開発し、「さるぼぼコイン」としてスタートしました。この「さるぼぼコイン」の案件を進めていくうちに、多くの方が電子地域通貨に関心を持たれていることが分かり、これは大きな事業になると思い、アイリッジの電子地域通貨事業の拡大、成長の加速を図ることを目的に子会社の株式会社フィノバレーを設立し、代表取締役社長に就いて「MoneyEasy」を拡大していくことにしたのです。
Q 「さるぼぼコイン」は金融業界初の電子地域通貨ということですが、信用組合が運用されることになった理由は何でしょうか?
飛騨信用組合さん自体が株式会社ではありませんから、利益のみを追求しているわけではなく、CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営で、地域としっかり共生していくことを経営理念にされている点が大きいと思います。地元の金融機関として地域の活性化を図っていかれたいという考えがあったからでしょう。それに加盟店となる店舗や企業は融資先のお客様になるわけですから、しっかりとコミュニケーションを図って地元の地域通貨として成長させていくことは、大いにメリットがあります。また、金融機関が電子地域通貨の運営を担えば、地域住民の方々からの信用が得られますからね。それも導入理由の1つだと思います。
因みに、交換単位は1円=1コインになります。現在、利用可能な店舗数は約1,000店舗まで拡大しています(高山市、飛騨市、白川村)。また4月からは、飛騨市の市税等の支払いにも対応していきます。有効期限は最終利用日から1年後の当月末日になります。
なお、昨年10月1日から木更津市、君津信用組合さん、木更津商工会議所さんが連携されて「アクアコイン」として導入されました。こちらも加盟店が順調に増えているそうです。
導入コストはわずかで、加盟料がかからないのが最大のメリット
Q 電子地域通貨のメリットはどんな点が挙げられるでしょうか?
まず、その地域でしか使えないことで、地域でお金が回るという経済効果が望めます。日本円ですと、どうしても東京などの大都市にお金が流れ込んできます。例えば、コンビニなどでは東京の本部に加盟料やロイヤリティを支払う必要がありますし、また、クレジットカードなども数%の手数料を徴収されます。つまり、地方のお金が東京に吸い取られてしまっているわけです。そこで少しでも地域の中でお金を回していくことができれば、地域の活性化になると考えて、それを効率的に行えるのが電子地域通貨だということで、事業を展開しています。
地域住民の方には加盟店でのキャッシュレス決済、チャージによるポイント付与のサービスがあります。チャージは「さるぼぼBankユーザー」でしたら、オンラインバンキングのように、アプリ上の操作で自分自身の口座からチャージを行えますし、ユーザー間で送金もできます。決済手数料もクレジットカードと比べて大幅に安くなっています。また、企業でも加盟店同士であれば、売上で受け取った「さるぼぼコイン」を、仕入れの時にも使うことができますので、現金化する時もクレジットカード決済よりも早くできるのがメリットと言えるでしょう。
Q 電子地域通貨の市場を拡大していくためには、何が重要だとお考えですか?
同じスマホで決済できるものに「PayPay(ペイペイ)」などがありますが、ポイント還元の高さや全国各地に普及している点で優位性があるのは否めません。ですから、「MoneyEasy」としては地域通貨というコミュニティ性があることを理解していただき、地域でお金を使うことが地域活性化に繋がるという考えを、地域の皆さんに訴えていくことが、成功させるために最も重要なことだと思っています。
飛騨高山地域では外国人の観光客も増えていますから、外国人に電子地域通貨を使っていただける施策も考えていく必要があるでしょう。それと、お金が地域に流通するだけでなく、消費者や加盟店のデータを集積することができますから、データを活用したマーケティング活動が加盟店で行えるようにすることも重要になると思います。
また、当社としては企業にとって地域通貨が、CSVやCSRの観点から意義あるものとして提案し、地域活性化に貢献できる点を強調していければ、理解と協力が得られるのかなと考えています。使用できる範囲が、現在は市区町村に限られていますが、今後、使用地域の拡大についても検討していくことも必要になるかもしれません。地域通貨に関しては、江戸時代の「藩」のような位置づけを何となくイメージしていて、中央とは違った独自の通貨を広げていくという感覚でいます。
キャッシュレス化が追い風印刷会社も媒体制作でビジネスの需要を喚起
Q なるほど。政府ではキャッシュレス化を推進する動きが出ています。追い風になっていくでしょうか?
そうですね。政府がキャッシュレス化を推進していくことで、自治体や企業が電子地域通貨に関心を持っていただくことは歓迎です。実際に、飛騨高山地域、木更津市で導入していただいたわけですから、今後、他の自治体や信用組合さんからお問い合わせやお声がけが増えていくことは予想されます。その点でキャッシュレス化は追い風になっていることは、当社としてはありがたいと思っています。
Q 印刷会社も電子地域通貨の普及にお役に立てると思うのですが…。
加盟店ではQRコードを付加した印刷物の需要が出てくるでしょう。店頭に配布する販促物にQRコードを印刷するだけでなく、イベントを開催した際に、QRコードを付加したチラシやパンフレットの制作も出てくると思います。また、1つの動きとしては、健康マイレージカードを今までは紙ベースで作るケースが多かったのですが、それをプラスチックのポイントカードにして、イベントや健康診断に参加するとポイントが付与される仕組みにするのはいかがでしょう。印刷会社さんがそのようなカードの制作を請け負うことで、受注に繋げていけるのではないでしょうか。電子地域通貨を推進していく上で、自治体や金融機関と連携して新たな提案をされてみるのもよいかもしれません。
Q 電子地域通貨を定着させ成功させていくためには、どのような取り組みが求められてくるとお考えですか?
スマホを持っていても、それで決済する行為に二の足を踏む方が多いですから、安全性を伝えていくことが大事ですし、また、高齢者には使用方法について丁寧に教えていく必要があるかと思います。利用者の裾野を広げていく活動が重要になっていくでしょう。それと、単なる決済ツールとして考えるのではなくて、地域でボランティアをしてくれた人にボランティアポイントを付与したりして、自治体の活動に参加してもらう相互扶助の精神を促していくことも大事だと考えています。その点でまだまだ発展途上ではあります。とにかく電子地域通貨は、大きな可能性を秘めたツールですから、やりがいを感じています。当社としては電子地域通貨の機能の拡張・改善についてさらにチャレンジし、地域の皆様と共に普及に努めていく考えです。

電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」の概略図 提供:株式会社アイリッジ
———— 川田 修平
