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(169) シゲタサヤカ
見て読んで笑ってもらえる楽しい絵本を創っていきたい
昨今はゲームや映像などデジタルコンテンツで活躍しているクリエイターが、脚光を浴びることが多いが、今回登場いただいたのは絵本作家のシゲタサヤカさんである。印刷会社での勤務を経て2009年にデビューし、以後、コンスタントに作品を出版している人気作家である。今日、絵本業界は少子化、出版不況なども影響し、作家としてデビューできる人は一握りという狭き門であるが、シゲタさんは、絵本作家の登竜門とも言える講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞した経緯を持っている。独特の感性で創作するシュールな絵とストーリーに、子供だけでなく大人にも人気を博し一定のファンがついている。最近は絵本に関連して4コマ絵本の連載の仕事やかるたタ制作にも携わった。デビューまでの苦労、創作の仕方など、多角的観点から話を伺った。
シゲタサヤカ SHIGETA SAYAKA
- PROFILE
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1979年神奈川県生まれ、群馬県育ち。短大卒業後、印刷会社での勤務を経て、「パレットクラブスクール」で絵本制作を学ぶ。第28~30回講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞。2009年第30回佳作受賞作品『まないたにりょうりをあげないこと』で絵本作家デビュー。他に『りょうりをしてはいけないなべ』『カッパもやっぱりキュウリでしょ?』(講談社)、『キャベツがたべたいのです』『おいしいぼうし』(教育画劇)、『オニじゃないよおにぎりだよ』(えほんの社)、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)、かるた『遊んで学べる神奈川県民ジモトかるた』(講談社)など。
レイアウトのカットを描く楽しさから絵の仕事に興味を持つ
——印刷会社に勤務した経歴をお持ちですが……。
シゲタ短大を卒業し印刷会社にDTPオペレータとして就職しました。でも、Mаcの操作すら判らない初心者でしたので、一からDTPの基礎を教えてもらいました。当時、会社で使っていた組版ソフトは「QuarkXPress」で、「InDesign」はほとんど出回っていなかったと思います。頁物のレイアウトに文字を流し込んで版下データを作る仕事がメインでした。その印刷会社には結局3年間勤めて辞めたのですが、いろいろな経験をさせていただき本当に勉強になりました。
——辞められた理由というのは……
シゲタとにかく忙しい時期は大変で…。主に学校関連の印刷物を手がけている会社だったので、特に年度末になると文集や卒業アルバム等の仕事がたくさん入って来て超繁忙期になるわけです。それで毎日帰宅が深夜になり、終電に乗れないことも多く、自分で会社の車を運転して帰ったりしていました。そんな日々に疲れてしまいまして……。
——そうですか。ところで絵本に興味を持つようになったのはいつ頃ですか?
シゲタもともと子供の頃は絵本が好きでした。絵を描くこともずっと好きだったのですが、だからと言って美大に進むとか、専門学校で絵を学ぶことはしていません。ただ、印刷会社に勤めたことは一つのきっかけになったと思います。頁物を組んでいる時などに、誌面のスペースができたところにカットを挿入することがありますが、その際に市販のカット集は使わず、Illustratorで勝手に絵を描いて入れてみたところ、社内で面白い絵だねと採用され、嬉しかったのを覚えています。作風は今と変わらず、目は当時から白目で描いていたので、クライアントさんによっては「誌面にそぐわないのでこの絵は消してください」と、却下されることもありました(笑)。
印刷会社時代は、そのような機会でたまにイラストを描くのが楽しかったです。それで辞めてから本格的に絵の仕事をしてみたいなあと思い、「パレットクラブスクール」という絵の学校に通うことにしました。はじめはイラストコースに通いイラストレーターを目指すつもりでしたが、学校案内を見ていたら絵本のコースの講師陣に、子供の頃に大好きだった絵本作家さんたちのお名前を見つけ、その方々に会ってみたいという理由で絵本コースに変更してしまいました。
毎回の授業では色々な絵本作家さんや編集者さんの話を聴けるのが楽しみでした。絵本の面白さや、絵本作りの現場のことをたくさん教えていただき、本気で絵本作家になりたいと思うようになりました。特に役に立ったのは、ある編集者の方からのアドバイスです。デビューを目指すなら「出版社に売り込みに行く」「展覧会を開く」「コンペに作品を郵送する」の3つの道があることを教えていただきました。でも、先の2つはすぐに人見知りをしてしまう私には難しそうなので、誰でも応募ができるコンペに作品を送る道から絵本作家を目指そうと決めました。卒業後5年位の間、何度も繰り返しコンペに応募しましたが、落選が続き現実の厳しさを味わいました。
講談社絵本新人賞の佳作を3回連続受賞し、念願のデビューを果たす
——苦労されたわけですね。絵本と言っても絵とストーリーの両方を作られるので一層大変かと思います。PDFデータにして応募されるのでしょうか?
シゲタいえ、データではなく、紙に絵の具で描いた原画を、コンペを主催する出版社やギャラリーなどに郵送するケースがほとんどです。1作品で平均15枚描いて応募します。私は、描いているという実感が得られるので絵の具で描くのが好きです。仕事によってはデジタルで着色をすることもありますが、やはり当時も今も、筆でちまちまと描くアナログな手法の方が面白いと感じています。
——1枚1枚手描きというのは大変ですね。講談社絵本新人賞の佳作を3年連続で受賞されて、デビューが決まった時の気持ちはどうでしたか?
シゲタついにデビューできる!と、ただただ嬉しかったです。講談社さんの絵本新人賞は、大賞を獲得すると自動的にデビューが決まるという夢のようなコンペです。それで大賞を目指して応募を続けたのですが、私は結局のところ佳作止まりでした。でも3回目の佳作をいただいた年に講談社の編集者さんからこれで佳作も3度目ですので、出版しましょうと言っていただき、デビューすることができたわけです。そのデビュー絵本が第30回の佳作作品『まないたにりょうりをあげないこと』です。
——では、その作品はシゲタさんにとってエポックメイキングになったわけですね。
シゲタはい。長年アルバイトをしながらコンペ生活を送っていたので、両親からも再就職するように常々言われていました。それで早くデビューしたくて仕方なかったのですが、ようやく絵本を出版することができてホッとしました。ただ、絵本作家になってみて分かったのですが、デビューしたからこれで一安心ではなく、今度は絵本をずっと作り続ける苦労が待っていて、それはもっと大変なことでした(笑)
——コンスタントに絵本を出版されているのですね。1作品に要する期間はどのくらいですか?
シゲタ出版するまでに早くても1年以上は掛かります。私の場合はとくにペースが遅く、今制作を進めている作品なんて、かれこれ5年近く前からお話を考えています。そんな調子なので絵本の仕事だけでは成り立たないため、絵本の延長としてWebで4コママンガの連載や、小学生向けの新聞でショートストーリーの連載を描かせていただいたり、たまにイラストレーションの仕事などもしています。また、テレビの子供番組の企画で、地元のことをもっと知ってもらうための『遊んで学べる神奈川県民ジモトかるた』(講談社)というかるたを作りました。神奈川県のジモト愛に満ちたかるたです。1枚ずつ絵本のお話を考えているようで楽しい仕事でした。ちなみに、これまでに出版した絵本は9作。現在、10作品目に取り掛かっているところです。
子育て中の親御さんたちには暮らしに絵本を取り入れてほしい
——かるたも作られたのですか。絵やストーリーは編集者さんと共同で考えられることもあるのでしょうか?
シゲタははい、そうです。最初に私の方で絵と文章をまとめたラフを持っていくのですが、編集者さんがこれは面白くないとか、ここは駄目だとか、結構手厳しいことも言われ、ばっさりと切り捨てられることも少なくありません。自分では十分に考えたつもりでも実際はまだまだ足りていない。そのあたりを何度も打ち合わせを重ねてラフを修正していきます。あちらはやはり多くの絵本を世に送り出しているプロですから、客観的な判断ができますし、より面白く見せるためにはどのような文章、絵にすれば効果的なのか分かっているのだと思います。だから、出版した後で、なるほど、編集者さんの言っていた通りだったなあ、と思うことが多々あります。
それから絵本の装幀はデザイナーさんが、その作品の世界に合った表紙や本文のレイアウト、書体や紙の選択など、隅々まで丁寧にデザインを手がけてくださいます。またその先では、まさに印刷業界のみなさんが原画の色を綺麗に再現するために製版データを調整し、こちらの思っていた通りの色で綺麗に印刷してくださいます。こうして多くの方々の力をお借りして1冊の絵本が完成します。
——白目が個性的なのですが、意図的にすべて白目にされているのでしょうか?
シゲタはい。自然に目を描いたら白目になっていたという感じです。白目にしたほうが私としては表情が出せるんですね。よく、どこを見ているのか分からない。不気味だ(笑)、と言われるのですが、私としてはやっぱり白目のほうが描きやすいので続けています。これからも白目だけは変えずにいきたいです。
——絵本と書籍の違いで感じることはありますか?
シゲタ絵本の場合は作品の知名度が大きくて、有名な作品ですと、50年以上経ってもベストセラーになっていて本屋さんの平積みの席からどいてくれない(笑)、という特殊な世界なのです。小説やマンガでしたらその席はすぐに新刊に入れ替わるじゃないですか。でも絵本の場合は、何十年も席が空かないという特殊な状況があります。その背景には親が幼少期に好きだった絵本を、自分の子供にも読ませてあげたいという気持ちがあります。親から子へというサイクルがずっと続いている世界です。
——なるほど。絵本のアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか?
シゲタ大体は普段の生活の中からです。 自宅で家事をしている時、いつも歩いている道や電車の中、買い物に行ったお店などで、印象に残った情景や出来事をヒントに創作することが多いですね。特に食べ物をモチーフに描くのが好きで、食べ物の絵本ばかり描いています。
——絵本で伝えたいことは何でしょうか?
シゲタ特にメッセージなどはなく、とにかく楽しんでもらいたい!という気持ちが一番です。私の絵本は別にしつけ的な要素があるわけでもなく、感動を与えるストーリーでもありません。大人も子供もちょっぴりクスッと笑いつつ、「これなんか変だね、可笑しいね」などと読んでもらえるだけで嬉しいです。印刷業界でも育児中のお母さんやお父さんがいらっしゃると思います。是非、こんなゆるい感じで毎日の暮らしに絵本を取り入れてほしいですね。
シゲタサヤカさんのWebサイトhttp://akamochi.net/
http://akamochi.net/
デビューとなった作品
『まないたにりょうりをあげないこと』
