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(160) 岡崎 充

アドマンガの全国展開でフランチャイズを開始

広告から宣伝物、企業・自治体の各種ツールなどあらゆる分野で、漫画の企画制作を展開している株式会社トレンド・プロの岡崎充社長は、業界で逸早く、広告漫画発注のための情報サイト「アドマンガ®ドットコム」を立ち上げ、インターネットによる企業や自治体の漫画ビジネスを拡大してきた。制作実績件数 1,400社 5,000件以上を誇る同社では、近年、出版社のビジネス書の漫画化が急増しているという。また「漫画市場の拡大に伴い、漫画受注のフランチャイズ展開を全国で推進し、地域密着型の受注体制を目指しています」と言う岡崎社長。印刷会社には漫画ビジネスで営業代行してもらうことを促す。既に印刷会社とフランチャイズ契約を交わして実績を上げており、印刷会社にとっても有益なビジネスと言えるだろう。現在の漫画ビジネスの方向性、フランチャイズ展開などについて話を伺った。

岡崎 充 OKAZAKI MITSURU

PROFILE

1955年福岡県生まれ。80年中央大学理工学部卒業。ヤマハ発動機株式会社に入社。83年東京支店でトップセールスになる。88年株式会社トレンド・プロを設立し、代表取締役に就任。日本初の広告漫画制作事業を始める。2000年イラスト・マンガ・アニメ等の受発注サイト「アドマンガドットコム」を立ち上げる。以後、サイトからの受注が急増。05年大学生を対象にした就職・人生指導塾「岡崎塾」を運営。無借金経営。14年アドマンガの全国フランチャイズ展開開始。

ビジネス書のコミック版が一昨年を契機に急増している

——アドマンガのリーディングカンパニーとして、着実に業績を伸ばされていますが……。

岡崎お陰様で、制作実績は 1,400社 5,195件、登録漫画家数 1,733名(7月12日現在)と、順調に実績を伸ばしています。広告分野の裾野が広がっている状況で、同業者も次々と市場に参入してきています。近年の特徴は、ビジネス書のコミック版の成長が著しいことです。出版社からの仕事と一般企業のアドマンガ制作の両輪ですが、とにかくシナリオ制作を中心に大変忙しい日々を送っています。

——ビジネス書のコミック版ですか?

岡崎ええ。出版業界はこの20年近くずっと右肩下がりできました。そんな状況下、ビジネス書のコミック版だけは伸びていて、出版社からコンスタントに企画の話をいただき、当社はこの分野で最も多く制作に携わっています。「アドラー心理学」や「マッキンゼー式ロジカルシンキング」、「ザ・ゴール」など、世界的ベストセラーの著書をコミカライズして発行することで、新たなターゲットの読者を獲得することができ、コミック版もベストセラーになっています。当社は編集プロダクションですので、ビジネス書を出版している大手出版社が、コミック版の企画を持ち込まれて、当社で制作していくことになります。

—— 広がりつつある理由は、何だとお考えですか?

岡崎ビジネス書は、基本的には文字ばかりですから、若い人に敬遠されていたところがありました。それをストーリー仕立ての漫画にすれば、内容が分かりやすくなるのではないかということで、コミック版が企画されたわけです。漫画市場が拡大していくなかで、出版社がマンガの読者層を取り込もうとしているのだと思います。それが見事に成功したものですから、出版社は右にならえと、相次いでコミック版を出版しています。3万部から多いもので5万部売れています。出版社では、ビジネス書としてはかなり売れるということで、いま最も力を入れている分野じゃないでしょうか。

——そもそもビジネス書のコミック版が、こんなに作られるようになった契機は?

岡崎当社が制作したものではないのですが、スティーブン・R・コヴィー氏の著書に、『7つの習慣』という、全世界で 3,000万部も売れたベストセラーがあるのですが、それを基にしたコミック版『まんがでわかる7つの習慣』が、2013年10月に発売されました。何とそのコミック版が、2014年のビジネス書の全体の中で一番売れた本となったのです。それが契機となり、コミック版の一大ブームが訪れ、現在、次々と出版されています。

本の売上が落ちている中で、マンガの人気は根強く、市場は堅調に推移していますので、ビジネス書もコミックにすれば売れるだろうという、出版社の思惑が成功したわけです。実際、ビジネス書のコミック版は売れており、当社では、売上構成比が既に25%近くになっており、事業の大きな柱になりつつあります。

マンガ制作は分業化が進んでおり、アシスタントになる漫画家も

——御社の『アドマンガドットコム』に登録されている漫画家さんの数も 1,700名を超えていますが、それだけ市場が成長しているということでしょうか?

岡崎漫画家の仕事は増えていますね。人気作家になりますと、来年まで仕事が埋まっている状態です。一方で、これだけの多くの漫画家に登録していただきますと、作風や力量によって、皆さんに均等に仕事が回っていかなくなります。当然、クライアントさんから声が掛からない漫画家も出てきます。そこで最近は、仕事をたくさん抱えている漫画家のアシスタントとなるケースが増えつつあります。とくにコミック本のようにページ数の多いマンガを作るのに、1人の漫画家が全ての作業をこなしていては、多くの仕事を請け負うことはできません。それで、分業化が進んでいるのです。

——ビジネス書のマンガ制作の流れは……。

岡崎出版社から依頼のあったコミカライズの企画を基に、担当編集者と打ち合わせを行い、その後、著者を交えて再度打ち合わせを行います。その打ち合わせの内容を踏まえた上でシナリオを作成し、シナリオ段階で大きな間違いがなければ、ネームを描きおこします。打ち合わせからシナリオ、ネームという物語の根幹となってくる全ての工程で関わらせていただいています。そこから先は、出版社と打ち合わせの下で、ストーリーやセリフの変更・修正を繰り返して、作品をブラッシュアップしていきます。出版社からOKが出れば、本原稿の作成に取り掛かり、ネームを基に絵を描いて仕上げていきます。その際に絵の背景やベタ塗り、トーン貼りなどで、アシスタントの力が必要になってくるわけです。当社では仕事の指名がない漫画家に、絵の背景作業、仕上げや着色の仕事などを依頼しています。アシスタントの仕事ではありますが、できるだけマンガの仕事が行きわたるように働きかけています。今ではマンガ制作はアシスタントの力による分業態勢が不可欠で、効率的な作業で進めているのが実態です。

——なるほど。分業化が進んでいるわけですね。

岡崎このように、企業や自治体のさまざまな広告やツールとしてのマンガだけでなく、出版社のビジネス書分野にも広がっており、あらゆる分野でマンガ制作のニーズが出てきています。

——一方のアドマンガ(広告漫画)のほうの需要はいかがでしょうか?

岡崎アドマンガも順調に市場が拡大しており、案件がコンスタントに入ってきている状況です。しかし、当社だけでは対応しきれない状況なので、全国の企業や自治体、団体さんのマンガニーズに応えるために、フランチャイズ展開を始めました。それで地方で加盟店になってもらえるところを募集しています。2年前に静岡県浜松市の印刷会社で、広告代理店や情報誌の発行をされている株式会社アプライズさんに、最初のフランチャイズ契約を結び、地元のマンガの需要に応えていただいています。

印刷会社にフランチャイズ加盟店として地元のマンガの需要喚起を

——そのフランチャイズの中身について、もう少しお話ししていただけますか?

岡崎アドマンガを地場産業として成長させたいという考えがあるのですが、地方のマンガ需要を担ってもらうためには、やはりその地域で営業活動している印刷会社さんや広告代理店さんに、フランチャイズ契約を結んで加盟店になってもらって、アドマンガを受注してもらうのが最適だと考えたわけです。それで道府県に1店舗ずつを目指してフランチャイズ展開しています。

そのエリアのお客様からマンガの需要があれば、全てフランチャイズの加盟店に担当していただきます。例えば、千葉県銚子市から特産品に関するパンフレット制作の中身を漫画にしたいという話が本社に来ましたら、その千葉県のフランチャイズ加盟店に担当していただき、出向いて取材をしてもらって、正式に受注してもらいます。決まったマンガの内容について報告してもらえば、当社のほうでマンガを制作するという仕組みです。

——全国市場のさらなる拡大が図られ、制作の時短やコストダウンが可能になるのが、メリットでしょうか?

岡崎そうですね。やはり、地場で担当していただくほうがフットワークが良いですし、案件がスムーズに進みます。当社だけですと、地方のお客様全てに対応できるかと言えば物理的に難しいです。印刷会社さんのような地場でビジネス展開されている企業に、動いてもらったほうが良いわけです。印刷産業は地場産業ですし、お客様もしっかりと掴んでいらっしゃると思いますので、有効かなと考えています。当社はそんな地場に根ざした企業さんと組んで仕事がしたいわけです。印刷会社さんにとっても、新たにアドマンガという営業品目が加わり、ビジネスの幅が広がりますし、漫画の仕事を受注すれば、そこから新たな印刷受注に繋がる可能性も出てくるメリットがあるかもしれません。地域のお客様のところに「アドマンガドットコムのフランチャイズ加盟店となりました。漫画に関するご要望は全てお引き受けします」という文面のチラシを持って、営業していただければと思っています。当社は豊富な実績がありますから、お客様は安心してお任せいただけるはずです。

——印刷会社にとって有益なお話だと思いますが……。

岡崎当社は「企業の課題や悩みを漫画で解決します」を、1つのミッションにしています。過去に 5,000を超える案件を漫画にしてきましたから、どんな会社の課題や悩みでも、それぞれに解決策を提案できるノウハウを持っていますので、その点をフランチャイズ加盟店が強調されて受注していただければ良いのです。後は当社が制作します。つまり、営業代行をしていただくということです。受注した案件の20%をマージンとしてお支払いしますし、営業されて取材し、企画からシナリオまで制作した場合は、40%のマージンをお支払いします。これはあくまでも漫画制作に関する売上のマージンであり、これに伴う印刷代や後加工費は含まれていません。この2通りの価格を設定しています。

——フランチャイズに加盟するとなると、相当の費用が掛かるのではないでしょうか?

岡崎現在、加盟金は無料にしています。ですから、非常にお得ではないでしょうか。当社のフランチャイズ加盟店になっていただき、全国の各地域でアドマンガ市場を当社と共に拡大していきましょう。印刷会社さんにとって、マンガ制作で需要を喚起できる、まさにビジネスチャンスではないでしょうか。

「アドマンガ®ドットコム」

「アドマンガ®ドットコム」
http://www.ad-manga.com/

これまで同社で制作したビジネス書のコミック版やマンガ本

これまで同社で制作したビジネス書のコミック版やマンガ本

印刷会社さんにとって、マンガ制作で需要を喚起できる、まさにビジネスチャンスではないでしょうか。

———— 岡崎 充

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