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(209) 垣内 勇威

デジタルマーケティングのコンサルティングを自動化する

いまやAI(人工知能)は人の仕事を自動化・効率化するものとして、さまざまな分野で取り入れられているが、中でもデジタルマーケティング分野では、Webサイトのアクセス解析でなくてはならない存在になっている。そのけん引役となるツールが株式会社WACUL(ワカル)の「AIアナリスト」である。「Googleアナリティクス」のアクセス解析データなどのデジタルデータを元に、自動でWebサイトを分析し、誰にも分かりやすい改善点を示すものである。現在3万3,000サイト以上に導入されており、多くの企業から高い評価を得ている。その「AIアナリスト」を立ち上げたのがCIOの垣内勇威氏である。垣内氏に「AIアナリスト」をはじめ現在進めている事業、そしてマーケティングにおける紙媒体に対する見解などを伺った。

垣内 勇威 KAKIUCHI YUI

PROFILE

1984年兵庫県生まれ。2007年東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービットに入社。大手企業のWeb改善コンサルティングの仕事に就く。日本初の「アイトラッキングシステム」を活用したユーザー行動観察調査プロジェクトや、担当。広告効果測定ツール「Web Antenna」のマーケティングと営業を担当。13年にビービットの同僚が立ち上げた株式会社WACULに入社。取締役COOに就任。人工知能を使ったWebサイト分析サービス「AIアナリスト」を開発し運営責任者に就く。19年取締役CIOに就任。「WACULテクノロジー&マーケティングラボ」を設立し所長に就任。

データ分析を自動化する「AIアナリスト」を開発する

Q 御社の事業について教えてください。

弊社は、「テクノロジーでビジネスの相棒を一人一人に」というビジョンを掲げて、あらゆるビジネスデータを高度なテクノロジーによって整理・分析し、ビジネスの課題を特定し解決することで、セールス&マーケティングのDXを中心に、お客様の生産性を高めることを支援しています。そのために、データ分析を自動的に行い、改善提案から実行施策の成果測定までマーケティングを支援する、AIによるマーケティングのPDCAツール「AIアナリスト」を提供しています。さらにAIアナリストの分析・改善機能で、CV(コンバージョン)獲得に特化した記事コンテンツを提供する「AIアナリストSEO」、WebサイトとWeb広告の一体運用によって、広告効率を最大化する運用ノウハウをサービスとして提供する「AIアナリストAD」など、データとノウハウを活かして、セールス&マーケティングを改善するソリューションを開発し、提供しています。

Q 「AIアナリスト」を開発された経緯を教えてください。

大手クライアントのWebコンサルティングに携わり、ユーザー行動を解析し、成果の出るWebサイトを提案しているのですが、「Google アナリティクス」でWebサイトの分析をするためには、大量のデータを整理する必要があるわけです。当初、私一人でそのデータ分析をしていたのですが、それだと非常に時間が掛かり非効率的でした。そこで、データの集計作業を自動化することができればもっと多くの方にサービスを提供できるはずだと感じていました。それが「AIアナリスト」の開発のきっかけになります。弊社では毎月新たに登録される数百サイトの解析を行っていますが、その分析をAIに自動化させたことで効率的な業務を行うことができています。「AIアナリスト」でできるだけ安価に、多くのお客様のWebサイトを改善したいと考えています。 

Q 「AI アナリスト」の特長についてお聞かせください。

まず Webサイトの改善方針を発見し、根拠となるデータを合わせて提案できる点です。分かりやすく解説し、実装後にCVがどの程度増加するかの予測値が見られます。次に「広告からの購入数の減少」「検索からの訪問客の増加」など、Webサイトに関わる重要な変化を報告します。AIでCVに影響のある異常値だけをピックアップして知らせます。また、変化だけでなく、その原因となったページを影響が大きい順に表示し、適切な対策をタイムリーに示します。

最後に、あらかじめ分析対象を登録しておけば、自動で重要なレポートを全て作成することができます。集計に膨大な時間を要する分析も工数ゼロで受け取ることができて、Webサイトの特性に合わせた軸で、さまざまな分析対象を定義することが可能です。また、実施した改善施策の成果の測定も行います。これらのPDCAをサポートするさまざまな自動化機能が備わっている点が特長と言えます。

費用対効果の高い顧客に適したWebサイトにするための改善点を提案

Q 「AIアナリスト」の利用状況と御社の営業方法について教えてください。

2020年7月末時点で、登録していただいているサイトは3万3,000以上あります。お客様はまず無料版を利用をされたり、弊社の事例集やホワイトペーパーなどを見られたりしています。弊社としてはセミナーやイベントを開催したりしてリードを有料化できるよう働きかけます。予算を組んでサイトの改善を図ろうとしているお客様に、有料版の機能を紹介しながら、具体的にアプローチしていくことになります。

しかし、「AIアナリスト」が提案したことを信じていただかないと、問い合わせ数は伸びません。そのためにデータに基づいた知見を基に、弊社のソリューションを活用していただければ効果があることを、より一層周知していくことが必要であると考えています。

Q コンサルティングはどのようにされるのでしょうか?

コンサルティングは人間がお手伝いすることが一般的です。しかし、「AIアナリスト」を立ち上げた当初からWeb会議システムを使うことで、オンラインでクロージングまで行い、効率的に営業を展開してきました。現在はコロナ禍でますますオンラインの役割が増している状況ですから、弊社としてはオンラインもしくはクラウドにあるツール内で全てが完結できることに注力しています。そうして、人的に行う業務を自動化・効率化して、人間でないと行えないことに、人のリソースを集中させることを目指しています。

Q 顧客の Web サイトを具体的に改善される際には、どのような点を重要視されるのでしょうか?

「Google アナリティクス」とサーチコンソール(Googleが提供するサイトの状態の良し悪しを診断するツール)のデータを主としてサイトを改善していくのですが、ポイントはCVに繋がる可能性が高いコンテンツを高い費用対効果で提供することです。お客様はそれぞれ業種が違いますし、ターゲットにされているエンドユーザーさんも違います。いかにリードを獲得するということにフォーカスを当てて、お客様の事業に合った最適なWebサイトを中心としたデジタルマーケティングを提案するようにしています。例えば、インターネット広告にお金を使っているお客様に対して、その一部資金をオウンドメディアの立ち上げと運用に回させていただき、広告とメディアの最適なバランスを分析し、これまでより効率のよいCPA(1件当たりに掛かる顧客獲得単価)を実現したりしています。

紙媒体の有効性をしっかりと提案すれば印刷会社は生き残れる

Q 昨年「WACUL テクノロジー& マーケティングラボ」を設立され、所長になられましたが、どのような事業をされているのでしょうか?

弊社では、データドリブンなデジタルマーケティングを広く市場に普及させるには、さらなる情報の提供とメッセージの発信が欠かせないと考えています。そこで当研究所では、研究及びアカデミア・ビジネスを問わない外部顧問とのディスカッションの公開や、「AIアナリスト」などのプロダクト群のさらなる強化・改善、新しいプロダクトの開発に取り組んでいます。

また、研究レポートを随時公開しています。例えば、Webサイトのアクセス解析データからコロナショックの影響を推測するレポートを次々と発信しています。弊社で保有している3万3,000サイト以上と月間48億セッションものデータを使って、デジタルマーケティングの現状をより正確にお見せできるようにしています。

「AIアナリスト」の目的は一般のツールとは違って、コンサルティングそのものを自動化していくことを掲げていますから、上記の活動を通じて、自動化されたコンサルティングが信頼できることを、より多くの皆さんに知っていただくことが重要だと思っています。

Q 印刷会社でもデジタルマーケティングを活用した営業が求められつつありますが、紙媒体についてはどのような考えをお持ちですか?

マーケティングではデジタルが得意なことと、アナログの紙媒体が得意なことがありますから、それを切り分けてその中から紙媒体を提案されることをお勧めします。弊社でもECサイトをサポートしている時に、メルマガと郵送のDMとではどちらのレスポンス率が高いかを調べたことがあるのですが、郵送したDMのほうが高いレスポンス率でした。ただし、紙媒体はデジタルに対してコスト高になりますから、費用対効果の視点で優位性を説明して営業していく必要があります。それが行えた上で価値のある紙媒体を提案できれば、印刷会社は十分生き残っていけるはずです。

しかし、デジタルマーケティングのことを分からないまま紙媒体を提案してしまうと、お客様のほうがデジタルに詳しい場合にはニーズに的確に応えられなかったり、デジタルの有効性を無視した状態で紙媒体をお勧めすることになったりすれば、お客様からよい反応が返ってこないかもしれません。ですから、デジタルの有効性を知りつつ、それ以上にアナログの紙媒体の有効性をしっかりと提案できるようになれば、印刷会社はこれからも価値を創出するビジネスを続けていけるのではないでしょうか。結局、お客様がターゲットにされているエンドユーザーに対して、どのような媒体を使えば費用対効果を最大化して、高いレスポンスが得られるのかが重要なのですから、それを印刷会社でサポートし、最適な媒体を提案できるようにしていけばよいだけだと考えています。

Q ところで、先頃著書を出版されましたが、どのような内容でしょうか?

タイトルは 『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』 です。今日、多くのマーケターが成果の出ない施策を繰り返して、経営資源が無駄遣いされているという悲しい現状があります。そこから一人でも多くの人にその現状を打破していただきたいと考え、これまでのコンサルティングの経験とデジタルマーケティングの知見を活かして、無駄で非効率的な方法から脱却したコスパの高いマーケティング手法を示しました。デジタル化によって事業を速やかに再構築し成長させる「デジタル戦略」「DX戦略」立案の一助になればと思っています。

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先頃出版された垣内氏の著書

人的に行う業務を自動化・効率化して、
人間でないと行えないことに、人のリソースを集中させる

————垣内 勇威