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GCJパーソンズ
(153) 米山 和雄
「標準化」で培った専門性を活かしてモノ作りを支援
ソニー株式会社で「ソニー技術標準化委員会」の委員長として、同社の製品の設計、部品・部材、製造に関する要素技術の標準化を、先頭に立って推進してきた米山和雄さん。ソニー製品での環境調達基準に取り組み多大な実績を残した。退職後は BLUE WAVE FRONT を設立し、「標準化」の専門知識を活かして、メーカーの技術標準に関するコンサルティングや、ベンチャー企業の製品開発の支援を行っている。「標準化は、設計・技術開発の効率化や製造に関するコストダウンに繋がる重要なものです。メーカーだけでなく、一般企業でも部品・材料を調達する上で、是非、標準化を進めるべきです」という米山さん。印刷業界にも通じるテーマと言えるだろう。「標準化」を中心に、現在、注力している事業などについて話を伺った。
米山 和雄 YONEYAMA KAZUO
- PROFILE
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1948年岐阜県生まれ。1964年株式会社郷鉄工所に入社。1968年ソニー稲沢株式会社入社。1978年ソニー一宮株式会社に転勤。実装技術の指導者として国内外の実装ラインを立ち上げる。1995年ソニー株式会社に転勤し、ソニー技術標準化委員会の委員長として設計、製造に関する要素技術の標準化を推進。2008年ソニー定年退職後、BLUE WAVE FRONTを設立しモノづくりを支援。SONY CEO Special Recognition Award を2回受賞。2007年度JEITA三次元CAD情報標準化専門委員会監理。
リーダーとしてソニーの設計・製造に関する要素技術の「標準化」を策定
——ソニーで、設計改革のプロジェクトリーダーとして、要素技術の「標準化」に携わってこられたそうですが?
米山ソニーでは「標準化」を非常に重要視していて、早くから取り組み、それが脈々と受け継がれてきました。そんな「標準化」に対する企業文化を持っている会社なのです。1995年にソニーの製造会社から、本社に転勤になり、その後ソニー技術標準化委員会の委員長に就任、設計、製造に関する要素技術の標準化を進めたのですが、特に、グローバルスタンダードとして使用されている「部品・材料における環境関連物質 管理規程」の制定と普及に携わりました。それが、今日まで改善を重ねて脈々と受け継がれています。
ソニーでは部品を仕入れる際に、事業部ごとに仕入れるのではなく、なるべく会社全体で、しかも同じ部品を仕入れるようにしています。ある製品で調達したネジは、他の製品のネジとして使えるようにしたのです。これによって、1カ所から大量に部品を仕入れることができ、コストダウンに繋がります。
——なるほど。そもそも「標準化」とは何でしょうか?
米山「標準化」とは、簡潔に言えば、「ルール」であるとか、「規則」だと思ってもらえれば良いでしょう。例えば、ゴルフであれば、世界各国ルールは共通ですよね。プレーヤーはルールを知り、自分でルールを守ってプレーするわけです。そのゴルフのルールは英国のセントアンドリュースにある英国ゴルフ協会(R&A)が決めていて、そこで決まったことが世界各国共通のグローバルスタンダードになるわけです。紙でもA4判、あるいはB4判にしても、メーカーが違ってもそれぞれ縦横のサイズが同じですよね。紙の種類によってサイズが異なることはありません。それが「標準化」なのです。
——つまり「標準化」で、企業がビジネスしやすくするということですね…。
米山今から10年ほど前に、私が「標準化」で関わった事案ですが、三次元CADの図面が「標準化」していなかったために、メーカーごとに仕様がバラバラに進められ、三次元CADでの基準点、公差、簡略化などで混乱が生じていました。それで早期に三次元CAD情報に関する業界標準を設ける必要があるので、「標準化」するのに力を貸してほしいと、複数のコピー機メーカーから依頼がありました。そこで私が一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のほうへ相談に行って「標準化」の話をさせていただいたところ、米山さんが陣頭指揮を執られるのであれば、協会の中で進めてもらって良いですよ。という返事をいただいたのです。その後2007年に、三次元CAD情報標準化専門委員会の立ち上げに携わり、監理として協力させていただきました。各メーカーのツールに依存しないで、三次元CAD情報の「標準化」に取り組んで業界標準の制定をしたわけです。
コストダウンを図るには部品を「標準化」することが重要
——CADのどの部分を「標準化」するのでしょうか?
米山ありとあらゆる部分になりますが、例えば、図面を描く時に許容の範囲を示す最大値と最小値との差を「公差」と言いますが、何を基準に「公差」とするのか。また、どこから測って「公差」と言うのか。それらを決める必要があるのです。そこを「標準化」していかないと、メーカーによって読み取り方がまちまちになってしまい、加工会社が違ったメーカーのCAD情報から製品加工を行う際に、戸惑ってしまうからです。
——そうですか。非常に細かな部分まで詰めていく必要があるわけですね。退職後、独立されてからは…。
米山モノづくり全体を支援していこうと考え、私が培った標準化のノウハウを伝えていく活動を始めました。メーカーだけでなく一般企業が社内規格を作りたいという時に、その作り方であるとか、品質基準を設けたいという時に、支援するコンサルタント業を始めることにしたのです。ところが、企業の皆さんからモノづくりでくる相談のほとんどがコストダウンだということが分かったのです。ソニー時代に部品・材料の調達の仕事にも携わっていましたから、製造に関するコストダウンについては明るかったので、それでどうすれば部品を安く仕入れることができるのか。ということを考えてコンサルティングを展開したところ、そのコストダウンについても重要なのが、部品の「標準化」だったわけです。
——先ほどおっしゃった社内全体でまとめて仕入れることが重要だということですね。
米山ええ。他社さんはソニーのように、部品を1カ所から集中して購入しコストダウンを図っているところがほとんどなく、事業部や工場や製品ごとにバラバラに仕入れているのが実態で、それで部品1つとっても結構高コストになっていたのが分かったのです。モノの価値を考えた場合、例えば、ボールペンがなぜ100円で買えるのかというと、部品のスペックを同じにして、1カ所から大量に部品を仕入れて、コストダウンを図って製造しているからです。そうしないと、1本100円では売れません。しかし、部品調達の価格交渉では、部品のスペックとは関係なく進められ、全体でいくらという交渉に終始していたのです。「部品を1億円買っているので、4%値引きして9,600万円にしよう」という大まかな価格交渉になっていたのが実態だったのです。そこをもっと部品の内容を具体的にして、この部品を1個いくらで仕入れるから、全体でいくらになる。という計算をして、1個1個丁寧に価格交渉をしていけば、コストダウンする余地は大いにあると思っています。
——これまでは部品もどんぶり勘定のようなところがあって、コスト交渉ができていなかったわけですね。
米山はい。印刷業界の皆さんは既にやっているかもしれませんが、特定のインクを購入するとか、決まった印刷用紙を買うというように、メーカー・種類を決めて1カ所からまとめて購入すれば、もっと安く仕入れることができるかもしれません。大量に安定した量を購入することをメーカーに約束すれば、メーカーとしても計画的に製造販売できて経営が安定します。印刷会社の営業マンも材料に関する営業努力は必要なくなるでしょう。それだけでも営業コストが軽減され、他の営業活動に時間を回すことができます。また、仕入れ価格が安くなれば、印刷物も安く提供できるようになり、顧客にも喜ばれると思います。
——なるほど。組合による共同購入ということなら、検討する価値はありそうですね。
米山是非、チャレンジしてみてください。材料を見直して「標準化」することで、コストダウンになると思います。それを社内だけでなく、同業者が集まって「標準化」すれば、一層コストダウンが図られるはずです。
スマホで電子キーを開閉するレンタルサイクルビジネスを始める
——最近はどのようなコンサルティングをされているのでしょうか?
米山社長と社員の2人からなるベンチャー企業が進めるレンタルサイクルビジネスをサポートしています。現在はボランティアのような立場で、その会社の支援をしています。スマートフォンを使った電子キーのシェアサイクルサービス『COGICOGI』という、新しいレンタルサイクルビジネスです。スマートフォン上のアプリを作動させて、キーを開閉して自転車を利用するシステムです。私は電子キーのハード部分の仕様をどうするのか。このような機能にするのであれば、設計はこうしたほうが良いとか。この部品にすればコストがこれだけ安くできるというように、商品開発に携わっています。
仕組みは、まず App Store または Google Play で「COGICOGI」と検索し、アプリをダウンロードします。ユーザー情報とクレジットカード情報を登録しますと、後は、アプリ側で操作すれば、ナビゲートされて自転車が借りられる場所が示され、利用できる自転車の有無が表示されて、1日1,500円で利用できるというものです(毎回1時間以内の利用であれば24時間以内は何回でも利用可能。時間を超過した場合は1時間ごとに100円加算)。現在は、都内十数カ所のホテルやカフェ、マンション、施設などに自転車を複数台から数十台置いて、登録したユーザーであれば、いつでも利用できるようになっています。また、月額会員には会費2,000円で1時間以内なら乗り放題のプランを用意しています。
——現在、スマートフォンを利用する人が増えていますから、利用料金が見合えば、需要が伸びるのではないでしょうか?
米山はい。スマートフォンを使った電子キーによる無人サービスですから、自転車に電子キーを取り付けるだけで済むので、運営者は人件費のコストが掛かりませんし、運用自体も簡単です。どこに駐輪しているかアプリ上で位置が分かりますから、盗難などの不正行為が出来ないのもメリットです。これからの課題は、貸自転車を置いてくれるお店や施設をいかに増やしていくかがポイントになります。
インバウンドビジネスの拡大で、旅行に来られた外国人の方には最適ですし、実際、利用する外国人が増えつつあります。また、日本人でも近くにこのレンタルサイクルがあれば、近場への買い物やビジネスで出向く時に、電車を利用するより便利だと思います。今後の需要拡大に期待しています。
このレンタルサイクルビジネスに関わったのは、考案した社長がビジネスの可能性や将来の夢について語ってくれたことに感銘を受けたのがきっかけです。それで私の人脈を使って事業化するために力を貸しました。ハードの開発は3名で200歳を超えていますが、事業を軌道に乗せて夢を実現するために頑張っています。
アプリを作動させたスマホの画面
自転車に取り付けられた電子キーのハード部分
