月刊GCJ
GCJパーソンズ
(200) 長谷部 太
印刷関連業界に特化した人材紹介で人と会社を支援する
全産業で人手不足感が広がっている。中小企業の中には黒字経営を続けているにも関わらず、人材が確保できずに倒産する“求人難型倒産”も出てきており、企業は生き残るためにいかに人材を確保するかが最大のテーマになっている。株式会社インフィニットHRは、独自のネットワークを活かして、印刷関連業界に特化した転職支援・人材紹介事業で、人材と印刷会社をマッチングさせている会社である。印刷業界を熟知し親身になって転職を支援することをモットーに、これまで1,000人以上の人材を印刷会社に紹介してきた実績がある。同社の常務取締役で人材紹介統括責任者の長谷部太氏に、今日の印刷会社の転職・中途採用状況、経営の考え方について話を伺った。
長谷部 太 HASEBE FUTOSHI
- PROFILE
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1967年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手証券会社に入社。営業職を経て、ラベルやパッケージ印刷・システム機器関連で、製造から生産管理、営業など幅広い業務を経験。97年会社が経営破綻。2000年印刷関連業界に特化した人材紹介会社ヒューネット(旧社名)の創立から参画し、業界経験・知見、人脈を活かして人材紹介とコンサルティングの業務を展開。05年から新卒の紹介も開始。株式会社インフィニットHR常務取締役兼COO、人材紹介統括責任者。
仕事に対する考え方を聞いてなるべく希望に沿う会社を紹介する
Q 最初に貴社について教えてください。
弊社は一言で言えば、印刷関連業界に特化した人材紹介会社です。基本的に派遣業務はやっていません。特長はスタッフ全員が印刷関連業界の出身ということで、転職を希望する人や受け入れる印刷会社の気持ちを汲むことができる点です。それを踏まえて親身になって支援していくことをモットーにしています。2000 年に会社設立以来、20年弱にわたり弊社は人材紹介に携わってきましたが、これまでに中途採用と新卒採用で1,000人以上を支援してきた実績があります。また、顧客企業には人材紹介を通じた経営コンサルティングとして、最近ではM&Aや資本業務提携のアドバイスを求められるケースも出てきています。
Q 長谷部さんは、なぜ、人材紹介の仕事をされるようになったのでしょうか?
大学を卒業して大手証券会社に入社し、縁あって包装パッケージやバーコードシステム関連の特殊印刷分野の製造と営業双方の経験をしたことが下地になっています。もともと、サラリーマンではなく自分の裁量と権限にて責任を持って主体的な仕事をしたいと思っていたのですが、頭も体も心も納得できるまで使えると言いますか、人材紹介という仕事のやりがいや難しさが自分に合っていると感じたことがきっかけです。また当時は、平成になって10年、慢性的な不況感デフレが蔓延し失業者も増え、多くの人の心も疲弊し、新たにどうやって生きていくかということが問われはじめた時だと思い、その最前線に立つことに心が動きました。当時は人材紹介会社というのも黎明期に近く、まだまだこれからという印象もあり将来性もあるのではないかと感じたことも動機の1つです。
Q 貴社では紹介の仕方はどうされていらっしゃるのでしょうか?
求職と求人を受け付けて、転職を希望する人と紹介先の会社の同意を得て、面接の場を作るマッチングを行っています。転職を希望する人も依頼企業も弊社のホームページ上から登録していただきますが、登録に限らず、人伝えの紹介や口コミも増えています。いずれにしましても直接お会いしてから話を聞いた上で進めます。登録される人は中途採用の転職に該当する全ての年齢の方になりますが、弊社では新卒者にも対応していて就職先を紹介しています。新卒の場合は、大学に直接訪問しセミナー講演を通じて印刷業界に就職したい人を探していく方法を採っています。
学生は印刷物がどのように作られるかほとんど知りませんから、印刷会社がどのような仕事をしているのか印刷工程を解説した物語風のマンガを作って、それを見せながら説明を行い、関心を持ってもらうこともしています。
Q 印刷会社側はどのような職種を求めているのでしょうか?
やはり今の時代は印刷機のオペレーターが多く、次に営業です。オペレーターはオフセット印刷機から製本関連機械までさまざまです。印刷・製本機のオペレーターで正社員の人材紹介を行っている会社は、弊社以外にはないのではないでしょうか。新卒から熟練経験者まで紹介しています。他には、生産管理、DTP、事務など、全職種にわたっていますし、役職も一般社員から管理職、経営者までさまざまです。
新卒者は年間120日以上休日のある会社でないと応募しない
Q よろしければ、貴社の報酬について教えていただけますか?
弊社では、基本的に成約した場合に依頼企業から転職者の年収の35%を手数料としていただくことにしています。ただし、転職して1ヵ月から3カ月で退職した場合は、手数料の半額や1/3を返金するという決まりも設けていますので、ケースバイケースで対応させていただいています。また、新卒者の場合の手数料は60万円という設定にしています。中には年収が800万円になる人を紹介する場合もあって、それだと手数料は200万円以上になります。
そんな多額の手数料を払ってでも人材を紹介してほしいというわけですから、その金額に見合うような相応しい人材を紹介するために、人材探しは入念に行いますし、話し合いを重ねて確実なプロセスを経て最適な人材を紹介できるよう努めています。他の人材紹介会社にありがちな経歴書だけを送って面談して即採用という方法ではありません。転職したい人にじっくりと話を聞き、経営者にはどんな人材をもとめているのか、また職場の状況を詳細に聞き出して、最適なマッチングを行っていくようにしています。両者に納得してもらうことが大切だと考えています。
ただし、相場以上の給料をもらっている社員が転職を考えている場合には、待遇よりも仕事に対しての不満があるため、もっと自分がしたい仕事を現職の上司や社長に話すことを勧めています。それで意見が通って意向に沿う仕事ができるようになれば、転職する必要もなくなるわけですからね。変えられるのであれば内部から変えたほうがよいとアドバイスをしています。転職を希望している人には悩みごとの相談に乗ってあげることからスタートするようにしています。
Q 昨今の転職·求職状況はどのようになっているのでしょうか?
働き方改革の流れで、「残業をさせられない」「社員に有給休暇をとらせなければならない」「適正な給料を払わなくてはいけない」ということで、会社側の対応が迫られています。それに伴い、社員は少しでもいまよりも良い条件の会社を求めて、転職を考えるようになってきた印象を受けます。ですから、工場とかの印刷現場からの引き合いが非常に増えています。
弊社では新卒の採用にも対応していますが、大学生に話を聞きますと、年間で120日以上の休日がなければ応募の対象にならないとのことです。土日祝祭日が休日になれば120日にはなりますが、現状では105日から115日程度がほとんどです。いまの若い人はとにかく休日の日数を重視していますから、その点を考慮して、例えば土曜出勤は月に1日にするなどして、なるべく休日を確保することを会社側にはお勧めしています。
Q 社員が会社を辞めようとしている場合、社長はどうあるべきだと思われますか?
社長が社員のことを悪く言ったり、あるいは「印刷業はもうダメだ」とか、否定的な言葉を言うことがあると思いますが、それだと社員のモチベーションはどんどん下がってしまいます。社長は普段から「印刷の仕事は社会に役立つ良い仕事なのだから、お客様のために良い仕事を一所懸命にして皆で喜ぼう」と、前向きな態度を示していくことが大切だと思います。大事なことは、現在の仕事をきっちりとやっていくという強い意志を示すことです。軸がぶれない経営をしていれば社員の信頼も得られるのではないかと思います。
それと、社員に仕事に就かせたままほったらかしにするのはよくありません。向上心を持たせるためや技術を高めるための勉強会やセミナーに参加させるようにしてほしいです。社員をスキルアップさせていく環境を整えていくことで社員は成長しますし、それだけ自分のことを考えてくれているのだなと思ってくれますからね。スキルアップやキャリアアップのための施策は是非行っていただきたいです。社員に学習する機会を設けて、「この会社で頑張っていこう」と思ってもらうようにすることが大事ではないでしょうか。
職人気質で付加価値の高い仕事は今後も求められる
Q この仕事で最も大切に思っていることは何でしょうか?
転職希望者については、転職してハッピーになってもらいたいというのが前提としてあります。新しい職場で希望していた職種に就いて仕事にやりがいを持ってくれれば嬉しいですね。若い人には新天地でいままで以上に前向きに仕事に取り組めて、成長してもらえたらと思っています。
転職希望者と求人会社の面談では、本人たちの希望を何でもいいから言ってもらって、本音で意見を交わしてもらうようにしています。お互いが考え方を述べて、納得した上で入社してもらうことが大事ですからね。
Q デジタルコンテンツ制作への対応が求められていますが、求人面でその動きはどうでしょうか?
確かにデジタルコンテンツの制作が求められていることを聞くようになりました。例えば、アプリ開発やデジタル教科書の開発の話があり、それらができる人材を欲しがっている印刷会社が増えています。それは印刷会社のお客さんからの要望があるから増えているのですが、しかし、仕事のハンドリングやアプリのプログラミングができて技術がある人材となりますと、多額の給料になり、とても中小の印刷会社では出すことはできません。自社だけでコンテンツ制作の体制を構築するのが難しいのであれば、その分野の仕事が可能な会社と業務提携を考えてみるのもよいかもしれませんね。
Q 将来、印刷会社はどのような経営が求められてくるとお考えですか?
考えられることは欧州の国々のようにクラフトマンシップ、いわゆる職人気質(製造だけでなく営業も)が重要になってくるかと思っています。パッケージ印刷や高精細印刷などデジタルコンテンツに置き換えられない印刷物の需要はまだまだありますし、手間暇かけた高品質で付加価値のある印刷技術は、デジタルとアナログの融合する現場においても求められてくるはずです。そんな状況の中で、付加価値のある仕事をしてお客さんに喜ばれているのだから、自分たちも仕事を楽しもう、場合によっては自分たちで商品を開発し、世の中に認めてもらおうと、そのような人を大事にするような考え方になれば、皆も納得して仕事を続けられるのではないでしょうか。
どんな会社にも良いところはあるはずですし、それは得意な分野でもあるわけですから、その部分をきちっとお客さんに訴えて、なるべく料金を安くしないで売っていくべきです。そうすることが会社の求心力になりますから、その部分は決して無くしてはならないと思います。小規模な会社であっても、面白い発想ができる社員がいて、皆が同じ方向で一丸となって仕事をしているほうが、持続可能な経営を続けていけるのではないかと考えています。もう大会社のように、会社の規模を大きくして、管理体制を求める「人が没個性化」する時代は、終わりを迎えているのではないでしょうか。
————長谷部 太
