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(179) 寺上 美智代

個の力を活かしてこそ、会社は発展していく

印刷業界でいち早くダイバーシティを推進しているトッパン・フォームズ株式会社は、先進的な経営方針の下で、働きがいに満ちた職場環境を作っている。そのダイバーシティのけん引役として活躍しているのが寺上美智代さんで、2017年4月、同社の女性として初めて執行役員に就任した生え抜きの社員である。組織改善のためにさまざまな施策に取り組み、その実績が認められて執行役員に抜てきされた。職務は総務本部長兼ダイバーシティ推進部長として、経営と現場をつなぐ基幹部門の管理職を担っている。その仕事ぶりは女性に限らず男性にもロールモデルとなっている。「男性女性に関係なく人を育てていきたい」と、人づくりの大切さを力説する。入社からのキャリアの過程、ダイバーシティや従業員を活躍させるためのマネジメントなど、多角的に話を伺った。

寺上 美智代 TERAKAMI MICHIYO

PROFILE

千葉県出身。1989年トッパン・フォームズ株式会社に入社。営業アシスタントとして15年間勤務した後、営業支援グループに配属され主任となる。キャリアカウンセラーの資格を取得。2004年能力開発部に異動。女性の活躍を支援する教育に携わる。2007年ES推進部長に就任。2017年4月執行役員・総務本部長兼ダイバーシティ推進部長に就任。産業カウンセラー。国家資格キャリアコンサルタント。

資格を取得し積極的にキャリアアップを図る

——まず入社からこれまでの経歴についてお聞かせください。

寺上新卒で入社し、営業部門のアシスタントに配属されました。途中、営業と工場をつなぐ部署で納期や在庫の管理をする仕事に就いたこともありますが、約15年間営業のアシスタントをしてきました。その後、営業アシスタントをまとめる営業支援グループに配属され、そこで主任という肩書となり、初めてチームをまとめる職に就きました。次に総務本部の下に位置付けられる能力開発部に異動し、社員の教育を担当することになりました。

——能力開発部に移られるまでの経緯は。

寺上当時はまだ女性社員の能力が十分に仕事に活かされている感じがありませんでした。もちろん弊社だけでなく世の中全体がそういう感じでしたが…。とにかく女性社員を活かしたほうが会社にとっては良いと思い、人材育成に関する部署に移りたかったのです。そこでキャリアカウンセラーの資格(現在は国家資格)を取得し、次のステップの準備をしたわけです。人がキャリアを積んでいくためにどのようにサポートしていけばよいのかという、人材育成に関心を持っていましたので、それにふさわしい資格を取得しました。2004年に能力開発部へ異動したのは、まさに希望していた仕事ということになります。

——人材育成に関心を持たれたその時期が、現在の仕事や役職につながっている感じでしょうか?

寺上そうですね。転機だったと思います。その能力開発部では主に新人や営業の研修、管理職向けの研修に携わっていましたが、ずっと気になっていたのが女性の活躍推進でした。最初に手掛けたことは当時全員女性が担っていた営業アシスタント向けの研修です。当時の女性の仕事の中心は事務処理が中心でした。会社の売上げに直結する営業部門において、営業アシスタントは営業の右腕となる存在です。ここの力を最大限発揮してもらうことが「女性を活かす」ことになるのではないかと思いました。私の女性活躍推進はここからスタートしました。

——順調にキャリアアップされて、執行役員までなられたその原動力は何だと思われますか?

寺上トッパン・フォームズが「魅力ある会社」であることを社内外に認められる会社にしたいという強い思いです。従業員が活き活きと働き、お客さまに選んでいただける製品やサービスを生み出すことで会社が成長していく、そんな会社でありたいと考えています。

順調だったかと言えば、ここまでの道のりには立ち止まる時期もありました。しかし、振り返ってみますと、そう思っていた時期は、知識や視野を広げる絶好の機会だったと感謝しています。キャリアには選択肢を広げる時期と、専門性を追求し自己を確立する時期があります。今の仕事から何か得てやろうという姿勢が自分の可能性を広げているんだ、と楽しんでほしいです。

多様な価値観を活かすことで、イノベーションが生まれる

——執行役員となって仕事への考え方は変わられましたか?

寺上先程の思いは変わりませんが、どの視点から会社を見るか、という点が変わりました。特に強く思っていることは、急速に変化する時代において会社が継続的に発展していくためには、競争力の源泉である「ヒト」の「個の力の強さ」にあるということです。人を育て活かすことが将来に繋がると考えています。

——御社は業界でダイバーシティをいち早く推進してこられましたが、そのきっかけは何でしたか?

寺上2006年、当時の社長がこれからは女性が活躍する時代だと強調されたのを受けて、私自身も常々女性の活躍が不可欠だと考えていましたから、施策を提案したことが1つのきっかけでしょうか。それで翌2007年にダイバーシティ推進をミッションとしたES(Employee Satisfaction)推進部が立ち上がり、同部の部長に就任し、女性活躍をスタートさせ、推進していくことになりました。

——ダイバーシティに取り組む意義について聞かせてください。

寺上世の中が複雑化し高度化していますから、それに対応していくには、会社は多様な人材の価値観や発想を活かし共有したほうが、よりイノベーションが生まれやすいわけです。ダイバーシティではとかく女性社員の活躍だけが取り沙汰されていますが、女性は多様な人材を活かすダイバーシティの1つの要素でしかありません。高齢者、障がい者、外国人と分けて考えるとそれぞれに適した施策が見つかりやすいので個別に取り組みますが、本来は会社の発展のために一人ひとりを活かしていく視点で、施策に取り組むことが肝要ではないでしょうか。これは何も会社の規模の大小に関係ないと思いますね。印刷業界全てにも言えることではないでしょうか。

段階的に経験を積ませてから管理職を目指せるようにする

——では、女性社員に活躍してもらうためには、どのような考え方が求められると思いますか?

寺上「環境づくり」「マネジメント」「女性自身の意識」にあると考えています。

環境については、働き続けられる制度や多様な人材やさまざまな価値観を受け入れる風土づくりです。マネジメントについては、入社した時から女性も男性と同様に育てていくことがポイントになります。女性に対して結婚や出産などのライフイベントを考えて、無意識のうちに男女で担当する仕事に違いをつけていたりします。一人ひとり違うという意識で、「聴く」ということをしていただきたいです。そのように一人ひとりに向き合って育成をしていけば、仕事をしていく中で成長し、やりがいを実感することができます。そうすると、女性たちは結婚し子供を産んだ後でも復帰して働き続けたいと思うようになります。ここは「上司力」が試されますね。

しかし会社側だけの問題ではなく、女性自身も意識して自分のキャリアを高めていく姿勢が求められます。会社が制度を整え、仕事を任せたくても、本人にやる気がないのでは意味がありません。やる気を引き出すためには初期キャリアの時期に、成長する実感を持てる仕事をしているかがポイントになってくるでしょう。仕事が面白くなくて成長が見込めないということになってしまうと、モチベーションは上がっていきません。本人も覚悟を持って仕事に臨み、会社のために貢献できて自分のしたい仕事があれば、それができるように能力を高める努力をして、日々の仕事に取り組んでいくことが大切かと思います。これは男性女性問わず全ての従業員に言えることですね。

——なるほど。では、女性に管理職を目指してもらうためには何が必要でしょうか?

寺上管理職になるための段階を経ることが大切ではないでしょうか。最初は小さいグループのリーダーなどから始めるのがお薦めです。そこでメンバーの力を使って仕事を進める術を掴んでいく経験を積んで、少しずつ責任の大きい仕事に就かせていく体制を作ってみるのがよいかと思います。これは男性も同じです。

ただし、リーダーになるにしても、女性の中には尻込みしてしまうというか、男性の上司になることに抵抗を持つ人もいます。また、完璧にできないと職務を担えないと思いがちの女性もいるでしょう。もし「私には無理です」と言われたら、「あなたならできるから、やってみなさい」と背中を押してあげてください。女性には3K「期待する、鍛える、聴く」が大事だと考えています。鍛えるは愛情のある鍛え方ということです。

——最後に、今後どのような会社にしていきたいとお考えですか?。

寺上印刷業界は厳しい環境下にありますが、それを打開できるような従業員を育てていきたいですね。そのためには人づくり、組織づくりにしっかりと取り組んでいきたいです。従業員が会社や社会の役に立っていると自慢でき、やりがいを持って働ける会社にしたいと考えています。

今の仕事から
何か得てやろうという姿勢が
自分の可能性を広げているんだ、
と楽しんでほしいです。

———— 寺上 美智代