月刊GCJ
GCJパーソンズ
(192) 渡辺 開史
撮影の「職人」として顧客に高付加価値を提案する
フォトスタジオは、スマートフォンの普及に伴う個人撮影の拡大で、プリント出力が減少し苦境に立たされている。ターゲットやマーケティングによって明暗が分かれつつあるようだが、東京・新宿にある株式会社スタジオ・フォトアルチザンの代表取締役である渡辺開史さんは、高品質な写真撮影を安価で提供することをモットーにしているカメラマンである。若い時に独立し早くから自社スタジオを持ち、法人顧客の商品撮影を主体にしているが、メイク・レンタル事業も行うなど幅広い業務展開が特徴だ。また同業者でいち早くWebサイトを開設したり、画像処理を施すようになったりと、新しい技術にも積極的に取り組んできた。そんな渡辺さんのスタジオ経営に対する考え方について話を伺った。
渡辺 開史 WATANABE HARUCHIKA
- PROFILE
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1975年東京生まれ。1993年東京都立新宿高等学校卒業。同年ナショナルレンタル原宿スタジオ入社。スタジオアシスタントを務める。1996年退社後フリーアシスタント。1998年渡辺写真事務所設立。2005年11月業務拡大のため新宿区大久保にスタジオを構える。2007年5月、株式会社スタジオ・フォトアルチザン設立。商品撮影、ポートレート、ファッション写真など多数撮影に携わり現在に至る。
レンタルスタジオに入社し、アシスタントからカメラマンの道へ
Q カメラに興味を持ち撮影するようになったのはいつ頃でしょうか?
小学生の時に写真に興味を持ち、父親が使っていた古いカメラをもらって撮影するようになったのが、カメラとの出会いになります。次第に撮影することの楽しさにはまっていった感じです。趣味が高じてカメラマンになりたいと考えるようになり、高校卒業後、原宿にあった写真機材総合商社の経営するレンタルスタフォトスタジオは、スマートフォンの普及に伴う個人撮影の拡大で、プリント出力が減少し苦境に立たされている。ターゲットやマーケティングによって明暗が分かれつつあるようだが、東京・新宿にある株式会社スタジオ・フォトアルチザンの代表取締役である渡辺開史さんは、高品質な写真撮影を安価で提供することをモットーにしているカメラマンである。若い時に独立し早くから自社スタジオを持ち、法人顧客の商品撮影を主体にしているが、メイク・レンタル事業も行うなど幅広い業務展開が特徴だ。また同業者でいち早くWebサイトを開設したり、画像処理を施すようになったりと、新しい技術にも積極的に取り組んできた。そんな渡辺さんのスタジオ経営に対する考え方について話を伺った。ジオに入社しました。アシスタントとして撮影の仕事全般に携わり、とにかく経験を積んでいきました。プロのカメラマンの仕事を間近に見ながらスタジオ撮影の段取りや撮影技術を見て学んだり、その場で直接教えてもらったりしながら、実技を通じて少しずつ撮影の技術を覚えていきました。
Q 3年ほど勤めて退社され、フリーのアシスタントになられたのですね。
スタジオ勤務の頃から懇意にしていただいていたカメラマンの方々を中心に、複数のカメラマンのアシスタントをしていました。その後、カメラマンや仕事を通じて知り合った方々から撮影の仕事をいただくようになり、カメラマンとして独立しました。
Q それで写真事務所を設立されたのでしょうか。
当初は写真事務所といってもスタジオはなく、フリーカメラマンとして雑誌などの取材撮影や出版社のスタジオでの撮影、レンタルスタジオを借りて広告撮影などを行っていました。2004 年頃、西新宿で借りて住んでいた家が再開発で取り壊しが決まった際に、空いていた1階部分を安く借りて、そこをスタジオにリフォームしました。その時にWebサイトを立ち上げて、対外的に集客を図っていくことにしました。
同業者ではいち早くWebサイトを開設し詳細な料金を表示
Q 当時ですと、カメラマンでWeb サイトを開設されるのは珍しかったのではないでしょうか。
はい。同業者では3、4社といったところで、しかも撮影料金まで細かく表示したのは私が最初だったかと思います。撮影料金というものは、とかく曖昧なところがあります。お客様に安心感を与えるためにも、料金を明瞭に表示することは大切だと考えていましたから、Webサイトを開設した時に撮影料金を掲載することにしました。
それでWebサイトを見て問い合わせしてくるお客様が増え、それによって、実際に撮影依頼されるお客様に繋がっていったのもありました。
Q 料金表一覧を見ますと、実に細かく料金設定されていますね。
ええ。写真撮影にはカメラマンの撮影技術料、カメラ機材費、スタジオ使用料、照明機材費、アシスタントやモデル、ヘアメイクなどの人件費、さらには打ち合わせに伴う交通費、納品コストなど、さまざまな要素がありますが、撮影する内容、カメラマンがスタジオを所有しているかどうかもあって、明確な相場がないのが実態です。しかし、料金が曖昧なままではお客様の納得が得られない場合がありますから、当社としては明瞭な料金を設けて、しかもなるべくお安く提供できる料金システムを設定することに注力しました。大まかにはスタジオに来られて撮影に立ち会っていただく時間制料金と、撮影する商品を送ってもらって、撮影カット数で計算するカット制料金に分けました。また、コスト重視のお客様には格安商品撮影サービスを設けています。これは撮影カット数と撮影希望箇所を指定してもらい、後はこちらで最適な撮影を行うというサービスになります。
お客様のあらゆるニーズに応えていきたいという気持ちがありますから、料金設定も多種多様にしてご希望に沿えればと思っています。それと当社としても料金を明示しておけば、後で料金のことでトラブルになるのを避けられますからね。
Q その後、法人にされて株式会社スタジオ・フォトアルチザンを設立されましたが、名称の由来について教えてください。
アルチザン(artisan)は英語で「職人」という意味になります。撮影の技術を磨いて、より高品質なものをお客様に提供するという点では、カメラマンも「職人」と言えると思うのです。それで社名をフォトアルチザンにしました。モットーはさまざまな撮影ニーズに応えると共に、高品質な写真撮影を安価で提供することです。
Q 撮影の仕事はどのようなものが多いのでしょうか?
法人のお客様の商品撮影が主体です。基本的にはWebサイトを見て撮影依頼されるお客様が中心になります。多種多様な業界のメーカー様やデザイン会社などから撮影依頼をいただいています。
撮影した商品を郵送する立会いなしのプランもご用意していますが、極力立ち会っていただく時間制プランをお勧めしています。お客様とお話ししながら撮影することにより、ご要望も汲み取りやすく、リアルタイムにモニターでご確認いただきながら撮影するようにしていますから、効率よく撮影できます。そのため、コストも抑えることができます。画像処理を伴わない場合は、当日に撮影データをお持ち帰りいただくことができます。
顧客のニーズに応えるために撮影に関するさまざまなサービスを提供
Q なるほど。お客様にも見ていただき納得した上で撮影できるということですね。
はい。お客様とモニターを見ながら撮影できますので、構図などご相談しながら撮影でき、納得される写真を短時間で撮影することができます。10 年ほど前にライブビュー機能が搭載されてからは、特に撮影前に構図やライティングをリアルタイムにPC 上で確認できるようになったため、さらに効率よく撮影できるようになりました。
以前は、カメラのファインダーを覗きながら、アシスタントに商品や照明の位置などを指示していたものが、カメラマン自身がPCのモニターを見ながら動かせるようになったため、アシスタントを必要としなくなりました。これは人件費の削減という点からも画期的なことと言えます。
Q 7年程前にメイク・レンタル事業を始められましたが…。
もともと協業していたメイクアップアーティストが当社で着物レンタル事業を始めることになり、メイク・レンタル事業部を設けました。それに伴い、七五三や成人式などの個人のお客様の撮影も承るようになったわけです。広告撮影でのモデル手配、ヘアメイク、スタイリスト、着付師など、一貫して承ることができます。そして、なるべく低コストでお客様のご希望にお応えすることをモットーにしています。
Q 業務内容には画像処理も明記されていますが、どのような仕事をされるのでしょうか?
画像処理に関しては、かなり前から取り組んでいまして、Photoshop3.0の時代ですから、もう20 数年前だと思います。フリーのアシスタントをしていた時に、当時はまだほとんどなかったレタッチャーの方のお仕事を手伝わせていただく機会があり、画像処理に興味を持ったのがきっかけです。時間があればその方の事務所に行ってレタッチ作業を見せていただき、次第に作業の仕方を教えてもらうようになりました。
その後、Photoshop5.0 がリリースされた時にパワーマックと共に購入し、撮影した写真をレタッチするようになりました。ただ、最初の頃はスキャニングやフィルム出力が必要だったこともあり、仕事で請け負うというのはほとんどありませんでした。本格的に画像処理を業務として行うようになったのは、2001年にNiKon D1X を導入し、デジタル撮影を行うようになってからです。現在は切り抜き・ゴミ取りなどの基本的な画像修正から製品制作が間に合わない場合に、無地のモックアップを撮影し、デザインデータと合成するなどの高度な画像処理まで請け負っています。
切り抜きなどの単純作業は、海外で作業を行う専門業者さんには価格面で太刀打ちできませんが、当社は全て自社内で作業していますので、機密保持やクオリティの面で安心できるということで、撮影から画像処理まで一貫して発注いただいているクライアント様も多くいらっしゃいます。また、当社で画像処理を行わない場合も、合成などが前提の撮影の場合には、後処理のしやすさも考慮して撮影するように心がけています。
Q 最後に、フォトスタジオの経営で大切にされていることは何でしょうか?
あくまでも広告写真を撮影していますから、お客様がどういうものを望まれているのかを察知して、どのように撮影すれば、商品価値がより高まって見えるかを考えながら撮影するということです。そして、“ 撮影の職人”として技術的なことでお客様にプラスアルファのご提案ができればと思っています。

撮影した商品の一部
———— 渡辺 開史
