月刊GCJ
GCJパーソンズ

(172) 茂木 里江子

中小企業が真に輝くために全力で経営をサポート

「第61回日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会東京大会」で司会をしていただいた、株式会社アザヤカコンサルティング代表取締役の茂木(もてぎ)里江子さん。本業は税務、会計、各種経営を支援するコンサルティング会社を営んでいる。これまでベンチャー企業から中小企業、大手企業まで多くの企業の経営状況を見てきた。また、事業承継・相続、事業再編などの支援や、相続プランの立て方に関する著書の出版やセミナーの講師など、マルチに活躍している経営者である。「会社の大切な財産である社員をいかに活用していくかが、経営者にとって最重要課題です」と言う茂木社長。プロのコンサルタントと女性経営者の目線で、経営者はどうあるべきか、また、職場のあり方、社員への接し方などについて話を伺った。

茂木 里江子 MOTEGI RIEKO

PROFILE

東京都出身。大学卒業後フリーアナウンサーとなり、TBSの中小企業を紹介する番組(スポンサー:中小企業庁)を9年にわたり担当。番組上で企業の取材を通じて企業支援に目覚め、2004年、企業経営を支援する株式会社アザヤカコンサルティングを設立。2010年には、グループ会社として税理士法人アザヤカが設立され、顧客と専門家との橋渡し役として活躍。株式会社アザヤカコンサルティング代表取締役。著書に『誰でもできる 「らくらく相続」シミュレーション』他。

中小企業の役に立ちたい一心でコンサルティング会社を設立

——経営コンサルティング会社を設立するまでの経緯について教えてください。

茂木大学卒業後はフリーアナウンサーとして、テレビやラジオの仕事に携わっておりました。その中で、一番長くレギュラーとして出演させていただいたのが、TBSの「ビジネスズームアップ」という番組でした。中小企業庁がスポンサーで、全国の中小企業を訪問し、その成功の秘訣をリポートするという内容の番組です。ただ、当時はバブル崩壊後で中小企業にとっては厳しい時代でしたので、会社の明るい側面を探して番組に仕上げるという作業はなかなか大変でした。収録前に取材企業の社長のお話をとことんお聴きして、企業にとってポジティブな題材を引き出し、そこにフォーカスして前向きな番組を作り上げていく…リポーターの私に求められた重要な要素でした。10年近くこの番組に関わっていく過程で、私の中に「中小企業のサポートをしたい!」という強い気持ちが芽生えました。幸い、番組を通じてさまざまな中小企業の経営者と出会う機会もございましたので、一念発起して、経営コンサルティングの会社を立ち上げることにしたのです。

——なるほど。経営者から直接悩みや困りごとを聞くうちに、それを解決したいという気持ちになったのですね。

茂木はい。そこで2004年に株式会社アザヤカコンサルティングを設立しました。主に、企業の成長支援、上場支援、また、企業再生・事業再編、事業承継等に関するご相談をお受けしています。事務所メンバーは公認会計士や税理士の資格を持っている者がほとんどですが、私自身は宅地建物取引士や産業カウンセラーの資格を取得し、クライアントと事務所内専門家の橋渡し的な役割を主としております。また、2010年にはグループ会社として税理士法人アザヤカが設立され、そこでは法人税や相続税など税務全般にわたる相談・プランニングなど、税務関係の仕事をさせていただいております。2011年には現行の相続税法に対応した『誰でもできる 「らくらく相続」シミュレーション』(中央法規出版)も出版しました。この本は、一般書としては初めて、読者の皆様が相続税額を簡単に計算できるようにいたしました。また、相続のために準備しておくべき事柄などもわかりやすく記載し、おかげ様でご好評をいただいております。

——職場のメンタルヘルス対策の仕事もされていらっしゃるようですが……。

茂木はい。まだ案件は少ないのですが、産業カウンセラーの資格を取得した関係もあって、企業における社員のメンタルヘルスケアについて興味を持っています。現在は、職場内でメンタルヘルス不全者を出さないための研修や、経営者が知っておくべきメンタルヘルス対策についての講習、管理職に対するセミナー等を行っております。

いかにメンタルヘルス不全者を出さないかが大切である

——職場のメンタルヘルス対策についてはどのような考えをお持ちですか? 印刷業界においても徐々に重要な課題になりつつあります。

茂木どんな職場でも、社員の精神面の健康を保つことは体の健康管理と同様に重要な課題ですから、経営者はこれらの問題に積極的に取り組んでいただきたいです。メンタルヘルスが不調になりますと、その方の仕事のモチベーションも下がりますし、その社員だけでなく同僚や上司にも通常以上の負担が掛かり、組織全体に負の影響が及んでしまいます。ですから、経営者は社員一人ひとりのメンタルヘルス保持に丁寧に対応していくことが必要かと思います。社員数十名程度の企業の場合でしたら、経営者が社員一人ひとりの日々の状態を把握し、変化に気付くことも可能ではないでしょうか。職場のメンタルヘルス対策で大事なことは、メンタルヘルス不全者を出した後に何らかの対応をすることではなくて、職場内でメンタル不全者を出さないためにどのような対策をとるかということです。そのためには、社員に負担を掛け過ぎないことも重要になります。上司としては常にその点を念頭に置いて、部下に指示・命令を出さなければなりません。また、指示を受ける部下のほうも、これ以上負担が増えるとキツイなという状況であれば、それを早めに上司に告げてチームとして動けるようにしなければなりません。無理だと告げることは恥ずかしいことではないのです。組織としても、大事にならないうちにアラームを鳴らしてもらって対処できる方がありがたいのです。社員の方がギリギリまで我慢をした結果メンタルヘルス不全になってしまうことは、その方にとっても組織にとっても不幸なことですので避けなければなりません。

——そうですね。無理をして心身を壊してしまっては元も子もないですからね。また、印刷業界でも女性の雇用や、女性が職場でもっと活躍してもらうための方策が望まれているのですが、実態は難しいものがあります。

茂木女性を雇用し長く勤めてもらうために、女性が働きやすい職場環境を構築することは大事だと思いますね。でも一方で、男性だから、女性だからと、必要以上に性別に拘って受け持つ仕事を決めていくのではなく、性別をあくまでも特徴として捉えて、個々の得手不得手、向き不向きで仕事を受け持っていく、という考えも必要かと思います。男性も女性も分け隔てのない平等な環境の中で、協力しあって良い仕事を行っていけることが理想ですよね。平等である以上、男性が女性を見下すなどの言動は言語道断ですし、同様に女性社員も男性社員と同じ立場であるという意識を持ち、責任感を持つことは大切です。例えば仕事で辛い状況になった時に、女性だから大目に見てもらえるのではとか、女性だからという理由のみで試練を避けるというのは、せっかく外洋に出て広々とした世界で泳げるチャンスを逃し、自ら内海に戻していくことになってしまいます。外洋に出ていくためには、女性もそれなりの覚悟も持たなければいけませんね。経営者は性別という括りを超えて、会社の大切な資産である社員全員にいかに活躍してもらうかを考えることが重要だと考えています。

——はい。ところで、商品の購買についてですが、商品が女性に気に入られることは大切だと思うのですが……。

茂木そうですね。女性の口コミ力はとても 大きいです。女性に気に入られる商品かどうかは、売上に影響する重要な要素です。お財布の紐を握っているのは何より女性ですからね。レストランを例にとってみても、そのお店が女性に気に入られれば、口コミで評判が一気に広がって、人気も出てきます。また、女性が集まるお店には不思議と男性も来るんですよね(笑)。そういう意味では、女性に好かれればお店にとっては鬼に金棒ですね。

著書『誰でもできる「らくらく相続」シミュレーション』(中央法規出版)

著書『誰でもできる「らくらく相続」シミュレーション』(中央法規出版)

新規事業は進捗状況を細かく見てその都度計画は柔軟に対応を

——印刷会社では近年、印刷だけでなく、Webなどデジタルコンテンツの制作が求められ、新規事業を立ち上げる必要が生じています。それに伴いストレスを抱えている社員も少なくないのですが……。

茂木新規事業の立ち上げを任された社員は確かにストレスを抱えるケースが多いかと思います。経営者はそのことを念頭に置くことが大切ですね。これは先ほどのメンタルヘルス対策にも通じます。新規事業の立ち上げでは、経営者にとっても、任された社員にとっても初めてのことが多いですから、手探り状態で進めることになります。進捗状況は常に細かく確認して、必要に応じてその都度計画を見直していく勇気も大切です。もし、プロジェクトに無理な部分が発見されたら、人材を増やす、期限を見直す、内容を修正するなどして、柔軟に対応していくべきでしょう。

——また、社員からトラブルの報告が遅れることは非常にリスクがあると思うのですが……。

茂木おっしゃる通りですね。経営者の立場から言えば、仕事が順調な時、うまく行っている時はタイムリーな報告は必須ではありませんが、逆に仕事で何かトラブルが発生した場合、クレームの種ができてしまった場合の報告は、できるだけ早くしてもらわなければなりません。問題が大きくなってからでは会社にとって大打撃ですし、お客様からクレームを出されてその時点で内容を初めて知るのでは遅すぎます。問題は小さければ小さいほど対処しやすいわけですし、解決の選択肢もたくさんあるので、トラブルはできるだけ小さなうちに報告してもらうように工夫すべきでしょう。そのためには、常日頃から上司と部下の間のコミュニケーションを絶やさず、風通しの良い社風を築いておくことも大切です。経営者も、自ら社員の方に声かけをするなど、会話がしやすい会社にしておくことを心掛けたいものです。

——対処が素早ければ怪我が少ない、というわけですね。

茂木そうです。万一失敗があってもリカバーが早ければ、お客様も、この会社なら安心ということで、取引を続けてくれるのではないでしょうか。問題の対処方法が良かったという口コミをしてくれる場合もあり、逆に新たなお客様がつく可能性だってあります。ですから、クレームの対処の仕方は最も大切だと言っても過言ではありません。 当社は、企業における会計・税務サポートからメンタルヘルス対策まで、さまざまなご支援をさせていただきます。お客様のご要望に応えられるサービスを提供しますので、お気軽にご相談ください。

「㈱アザヤカコンサルティング」のWebサイト

「㈱アザヤカコンサルティング」のWebサイト
http://www.s-shiko.co.jp/

私の中に
「中小企業のサポートをしたい!」
という強い気持ちが
芽生えました。

———— 茂木 里江子

掲載号(2017年8月号)を見る